たかがつぶやき、されどつぶやき。つぶやきを時給換算すると…
こうしたボランタリーWebユーザーが参加する場のひとつにTwitterが挙げられる。
世界中のTwitter上での「つぶやき」を集計している、GigaTweetによると、本講演中の
つぶやきの数は約260億3300万件。Twitterのユーザー数は全世界で1.9億人と言われており、このうち約半分の人が1日の間につぶやくという。
その内容は、ソフトバンクの孫正義氏のような著名人の含蓄の富んだつぶやきから、ラーメンなうのようなつぶやきまで千差万別。つぶやき同士が結びついて回っている。このTwitterによって何が一番変わったのか。それは「スピード」であると小林氏は分析している。
また、小林氏は次のような試算も披露した。
「1日の間に全世界で約5,000万件のつぶやきが生まれると言われています。1つのつぶやきに10秒かけるとすれば、5000万件×10秒=5億秒となる、これを時間に換算すると、約14万時間となります。マクドナルドのバイト代が1時間1,000円と換算すると、14万時間を1時間1,000円で働けば14億円。つまり、毎日14億円の人材労働投資が行われていることになる。誰にも命令されず、こんな膨大な労働時間が世界中で起こっている」
たかがつぶやき、されどつぶやき。企業がTwitterをどう活用し、これをチャンスに変えられるのかも、今後の焦点になる。
Webの無償奉仕を支えるものは何か
なぜ、これほどの無償の奉仕が日々行われるのか。小林氏は「強い欲求を与えたり、人に好かれたりすると人は動く」という人道学者デール・カーネギーの名言を持ち出し解説した。
この状況を作り出すためには、1.人に重要感を与える、2.聞き手に回ること、3.相手の関心を見抜いて話題にすることの3つが必要だと説く。

Webは、ウィキペディアやブログなど全世界に対して情報発信できる場を提供することから、まさに1.につながる。また、Webは情報発信する内容に制限がなく、どんなことでも受け入れてくれることで2.を実現する。
また、Web上では不特定多数の人からの閲覧やコメントが日々送られてくるため、3.も可能になる。このように、知らない人とのインタラクティブなコミュニケーションが発生することから、最近ではうつ病患者がTwitterを行うことで心の安定を得る事例も増えているという。
ソーシャルメディアマーケティングの鍵は「動きたくなる場作り」
さて、前述のようなソーシャルメディアを使ってどうマーケティングしていくのか。7,500万人のブロードバンドユーザーにどうアプローチするか、またボランタリーWebユーザーをどう活用するか。
これに対し、小林氏は「与えるという視点ではなく、ソーシャルメディアそのものをどうやってエンパワーしてもらうか。どうやってこの人たちが動きたくなるような場作りをするかが重要」と指標を与える。
ここで、Webの変遷がたどられた。3年前のWeb2.0全盛の時代は、30万人がマスメディアで働いていた。そして、マスメディアが作り出すコンテンツを1億人が見ていた。
しかし、その後、SNSなどがスタートすることでブロガー1,000万人規模が出現。情報の伝達階層は5階層(マスメディア30万人/ブロガー1,000万人/ブログ読者5,000万人/ネットユーザー1,500万人/アナログユーザー5,150万人)と拡大した。
しかし、いまやそれも古いという。今は至るところに中心があり、各中心のフォロワーが線となってつながっていく。最終的には世界中の人たちがつながる絵になっていく。

こういう状況下では、人は何を欲するのか。
「自分を中心とする輪をもっと大きくしたい」「誰かとつながっているこの線をもっと深くできないか」と欲望がわいてくるという。こうしたものをソーシャルメディアが提供できれば、人はそこに動き出す。
「これからのSNSは、人と人がつながると同時に、それぞれの人たちのすごさ、素晴らしさが一目でわかるものでなければならない」と小林氏は指摘する。
小林氏は、2010年7月27日、こんなつぶやきも残している。「mixiもfacebookとかもまだ不十分。その人がどんな素晴らしいことをしてきたのかが一目でわかる。そんなSNSを立ち上げたい。そういうものが孫さんも言う、自立型、共生型に成長する社会やマーケットを作っていく。そんな気がする」