Q.ユニクロなどの大手企業ではない企業がタオバオで成功するための秘訣を教えてください
タオバオというプラットフォームは非常に大きく、既に250万以上の店舗が出店しています。そのため、ただ単に出店するだけでは誰の目にも止まらず、誰も来てくれません。また、来てくれたとしても、もともと個人は無料で出店できるシステムのため、どこの誰かも分からない、商品が本物かどうかも分からないという状態では信用もなく、とてもすぐに購入には結びつきません。こうした状況を改善し、売れるようにするためには、いくつかの方法が考えられます。
まずは、タオバオに企業として出店することです。これはタオバオモールと呼ばれ、個人の出店するショップとは一線を画しています。モールを出店するためには、企業の営業許可証や品質証明書、商標登録など様々な資料を提出し、初期費用とデポジットを払う必要があります。これがある程度の参入障壁になっているため、モールで出店することが信用を高めることになります。
次に、可能であれば、小さくても良いのでリアルなショップを持つことです。「実店舗もあり、ここで売っています」と写真を見せたり、「何か商品に問題があれば実際に来店してください」と言えることが信用につながります。ネットというバーチャルな世界で、いかにリアル感を持たせられるかということが大切になります。
その他にも、あらゆる面で、お客さん目線で考えることも重要です。例えば、ショップのデザインを中国人の好みに合わせてデザインする、チャットでの問合せに丁寧に対応する、配送期間を短くする(最低でも1週間以内)などです。中国企業でも、結局は顧客のニーズに柔軟、かつ迅速に対応できているところが、タオバオで成功を収めています。ただ、こうしたことは出店するまで分からないことも多いため、まずはやってみて、その後で随時改善していくことが大事だと思います。
Q.中国でのSEMを成功させるためのポイントを教えてください
ターゲット顧客に応じて、“媒体”と“キーワード”を選ぶことです。
現在、中国の検索エンジン市場は、第一位が百度で7割強のシェアを持っています。第二位のGoogleが2割弱という感じです。しかし、この2割弱のGoogleユーザーはIT系、外資系、金融系といった企業で働くホワイトカラー層です。よって、こうした層にリーチしたい場合には、Googleをうまく活用することが大事になります。例えば、ブライダル事業を営む弊社のクライアントの場合、日本式のサービスを提供しているため値段が高いという要因もあり、百度のリスティング広告ではアクセス数は大きくても成約になかなかつながらなかったのですが、Googleはアクセス数がそこまで大きくないけれども、成約にはつながりやすいという状況でした。そのため、現在ではGoogleにだけ広告出稿をしています。もちろん、そうは言っても百度が圧倒的に大きなシェアを占めているため、百度対策も非常に大事にはなります。
キーワードの選択も、月間の検索回数を調べることで、ユーザーのニーズを測ることができます。いくら多くのキーワードでトップページに表示したとしても、ニーズがなくては意味がありません。検索回数の多いビッグキーワードと、ニーズを細かく絞り込んだ複合キーワードやミドルキーワード、スモールキーワードを組合わせて対策を考えていくことで、ターゲット顧客をサイトに呼び込むことが可能です。
あとは、SEMにで来訪したユーザーに対して、どのページを見てもらい、どう移動してもらい、どのボタンを押してもらうのか、といったLPOやナビゲーション調整を行い、コンバージョン率を高めていく施策が欠かせません。せっかくたくさんのユーザーが訪問してくれても、誰も問合せてくれない、購入してくれないのでは、意味がありません。最終的なコンバージョンまで見たプランが大切です。
Q.その他のWebプロモーションについて、中国での市場感を教えてください
もともと弊社が2006年に会社を設立した時は、アフィリエイトの代理店事業からスタートしました。日系のアフィリエイト会社と代理店契約を結び、北京での営業を担当していました。日本や上海の市場と、北京の市場が違っていたということもあり、結果として、あまり営業はスムーズに行きませんでした。
また、アフィリエイト市場がちょうど立ち上がったばかりだったため、市場のルール作りもままならず、過当な価格競争を吹っかけてくる企業や、不正クリックや不正登録を行う企業もいました。
あるクライアントは、他のアフィリエイト業者に「質が欲しいか? 量が欲しいか?」と聞かれ、「例えば、量と言ったらどうなるのか?」と返したところ、「8割位不正登録になる」と言われたこともあったようです。そういうこともあって、弊社では、現在も案件ベースでアフィリエイトのサービスを提供することはありますが、営業自体はあまりしていません。
その後、2007年頃からSEM事業に移行していったのですが、ちょうど、それまで代理店施策を取っていた百度がいきなり代理店を置かないという方向転換を行いました。そこで最初はGoogleのリスティング広告を売ろうとしたのですが、その時点で既に競争がかなり激しく、テレアポをしても、10件に1件が話を聞いてくれるかどうかという状態でした。
そこで、SEO事業を行うことにしました。テレアポをしてみると、当時はまだまだSEOを知っているクライアントが少なく、電話をした10件中3~4件は興味を持ってくれるという状態でした。そこで、SEOに集中して営業を行っていましたが、それも2008年になると、中国企業が急速にSEOに参入してくるようになりました。同じようにテレアポをしてみても、「御社で、今日SEOの営業電話5件目だから」と言われたり、「SEOはよく知ってるから値段だけ教えて」などと言われるようになり、価格競争に陥るようになってきました。中国人は、日本人に比べて人件費も低いため、価格競争だけをしては絶対に勝てません。
そこで現在では、アクセス解析やLPO対策、コンバージョン率を上げるようなサイト全体のナビゲーション改善施策も含めて、一括でソリューションを提供していくようにしています。結局、SEMにしてもアフィリエイトにしても、クライアントの利益につながらなくては継続してもらえないため、長期的な視点に立ってサービスを提供するようにしています。
Q.貴社がクライアントに支持される理由を教えてください
まずは、クライアントの話をきちんと聞くようにしています。しっかりとニーズを把握した上で、最適なプロモーションを提案しています。その際、「自分が相手の立場だったらどうするか?」「自分が経営者だったらどうするか?」ということを真剣に考えています。こちらが売りたくても、本当に役に立つものでなければ、お薦めしません。結局、効果がないものを無理に薦めても、長期的に見ればその契約は長続きしません。人間として当たり前のことなのかもしれませんが、この当たり前のことをしっかり追求して行きたいと思っています。弊社がクライアントから支持して頂けているとすれば、それはこういったことが理由ではないかと考えています。
Q.貴社の支援によって大きな成果を上げた事例を教えてください
まず、サイト制作とSEO/SEMを絡めた事例がいくつかあります。教育関係のクライアントで、そこの展開するサービスに合わせてランディングページを作成、コンバージョンが上がるようにナビゲーションを調整してSEO/SEMを実施し、定期的な集客に繋がっています。
また、同じようにコンサルティング事業を営むクライアントに対しても、企業サイトを制作して、その会社のコアなサービスをキーワードにしてSEOを実施し、コンバージョン率が上がるようにナビゲーション調整を行った結果、長期的な案件につながっています。
このようにWeb制作⇒SEO/SEM⇒コンバージョンアップのためのナビゲーション対策、というのが一連の流れですが、SEO/SEMのみといった施策の一部だけをお手伝いしているクライアントも多数います。
Webプロモーションに関して言えば、中国の祝日に合わせてユーザー参加型のプロモーションを実施して数百万のアクセスを集め、ブランド認知につなげた例や、化粧品ブランドサイトのリニューアルに合わせて会員募集プロモーションを行い、1ヶ月で中国全土から1万人の新規会員を集めた例などもあります。
またECでも、日系の雑貨などを販売している企業のタオバオでのショップオープンをサポートし、Webでの販売だけでなく、実店舗の認知度向上、実店舗への来客などに繋がり、売上が順調に上昇しているという案件もあります。