(2)Adobe SiteCatalystやAdobe Test&Targetのタグを自動出力
ページをグラフィカルにプレビューしながら、Adobe Test&Targetで切り替えるエリア(MBox)の指定ができる。CS5のFlashやDreamweaverとAdobe Test&Targetとの統合に近いことを、Webブラウザのみで可能にしたのだ。

Adobe SiteCatalystの自動計測も可能だ。単純に解析用タグを各ページのHTMLに自動挿入するのではない。設定ダイアログで指定した各種設定に基づいて、ユーザーがページを閲覧した時にAPI経由で変数がAdobe SiteCatalystサーバーへ送信されるのだ。つまり、ビーコン型のアクセス解析ではなくなる。
スタッフが編集やレビューの作業中にページビューが無駄に増えてしまったり、ビーコン画像がロードされる前に次のページに遷移してしまい計測漏れが発生する、ということがなくなるため、計測の精度が高まる。

(3) ターゲティングを可能にするContextCloud
前出の図1の「WCM」下部にある「Targeting」部分で重要な役割を果たすのが「ContextCloud」だ。
CMS配下のページ上でのユーザー行動データ(流入元、検索キーワード、ブラウザバージョン、閲覧履歴、フォーム入力内容など)やデモグラフィック属性を統合してセグメントを作成でき、さらにその結果をターゲティングに利用できる。

また、この機能をOmnitureスイートと連携させ、Adobe SiteCatalystのカスタム変数に値をセットしたり、Adobe Test&TargetのターゲティングやA/Bテストの条件として活用できる。
まとめ
このように、CQ5はCMSやECMという領域を超えて、優れた個客体験を提供するためのプラットフォームに進化したのだ。
実は、CMSからWebエクスペリエンス管理への転換は、2009年あたりからのトレンドであり、FatWireとEMCを筆頭にVignetteやOpen Text、Sitecoreなどがこの方向性を打ち出していた。アドビ システムズも少し遅れて、ようやく動き出した。
PhotoshopやDreamweaverなどのデスクトップ分野とOmnitureスイートとの連携というメリットを生かして、どこまで展開できるのか? 日本での発売は未定だが、今後の動向が注目に値するのは間違いない。
なお、CQの意味について質問したところ、コミュニケーションの意味だという。コンテンツを単に管理するのではなく、企業と個客の間のコミュニケーションを促進する、という製品の哲学を反映しているのだろう。
筆者も数年前まではCMSのエバンジェリストとして活動していたのだが、ここ数年間はマーケティング分野におけるWebアナリティクス・最適化の分野を模索・実践している。これらの異なる分野が統合されつつあるのは時代の流れであって、必然性がある。感慨深い思いに浸りつつ、会場を後にした。