指標を比べパフォーマンスの違いを見つける
左側のグラフをiOSとAndroidで比べてみよう。

青い棒グラフが月間エンゲージユーザー(一度でも起動したユーザー数)、赤い線が使わなくなった率(Churn Rate)を表す。4月に一度エンゲージユーザーが減り、7月以降も下降している。アプリのクラッシュ率が高まっているため、不具合によるユーザー離れが進行している可能性がある。
さらに12の各種指標を比較してみると、Androidのインストール数がiOSよりも4倍、エンゲージメントが2倍あることが分かる。iOS版のアプリが抱えているかもしれない不具合を調査するよりも、Android版の更なるバージョンアップに注力することを検討すべき、というような判断が可能だ。
次に、ダッシュボード右側の2つのグラフでも、OSによって違いがないかを調べてみる。

左上のパイチャートは、過去の延べインストール数における各OSのシェアを表す。その下のパイチャートは、同じデータを前月のみに絞り込んであるため、この二つのチャートを比較することで、過去のトレンドと比べて前月に大きな動きがあるかどうか、が分かる。この事例では、先月はAndroid版アプリのインストール数が急速に増えているようだ。
ところが、ページの深さ(ページビューのようなもの)を表す右側の棒グラフで、絶対値ではなく形(時系列の減り具合)を見てみると、Android版の方が66%と急激に落ち込んでいることが分かる。
深さが「1」ということは、起動したものの、クリックして画面を遷移しなかった、ということだ。これは、通常のサイトにおける「直帰」に相当する。
Android版のアプリは新規ユーザーが急に増えたものの、実はあまり使い込まなかったユーザーが多かった。新規ユーザー獲得の方法に問題があったか、それとも、Android版のアプリはiOS版と比べてデザインやユーザーインターフェイスの完成度が低かったのか。
ここで直ぐに結論が出るわけではなく、更なる分析と対策というアクションを起こすことができるようになるのがポイントだ。
案件に特有の重要指標にも注目を
アプリの標準的な分析だけでなく、このアプリ特有の分析も必要だ。
そこで、地域別で各種の指標を比べてみる。この事例のアプリはデバイスの位置情報を活用するアプリなので、地域ごとの利用状況を把握することが重要だ。
Adobe Data Warehouseで地域別に5つの指標を抽出してユーザー数で並び替えをしたのが下図だ。

多くの指標が前月比で上昇している中、広告クリック率が低く、さらに前月比でも下降している地域が見つかった。この地域にターゲティングしている広告を見直すと、広告収入が増えるかもしれない。
アプリは愛されているか?
今回のテーマ“Get Your APP Users BACK”(どうすればアプリをまた使ってもらえるのか?)を深堀するために紹介されたのが、利用状況を時系列で把握するための2つの指標だ。
- “Days Since First Use”(初回利用時からの経過日数)
- “Days Since Last Use(最終利用時からの日数)
この2つの軸で、起動時のデータをプロットすると、下図のようになる。

縦と横のそれぞれの軸で、アプリの特性に応じた目標値(閾値)を設定すると、4つのセグメントを切ることができる。

- 左上:最近使い始めたばかりだが、その後しばらく使っていない「ベンチを温める人」
- 左下:最近使い始めたばかりで、つい最近も起動した「初心者」
- 右上:インストールしてしばらく経つが、その後しばらく使っていない「削除候補」
- 右下:長い間、愛用している「最高のスター」
これらのセグメントごとに、各種のディメンションや指標、パス(前後フロー)などの行動パターンを比較するのだ。

この比較によって見つかった「違い」は、改善のオポチュニティかもしれない。
その差を埋めるような施策や機能改善を行い、「最高のスター」が増えたかどうかを検証することで、アプリの最適化が可能になる。2つの指標の両方が増えることで、「最高のスター」のセグメントに属するユーザーが増えれば、当初のゴール“Get Your APP Users BACK”を達成できたことになる。