顧客を知るため、より精緻な分析に取り組むライトオン
マーケティング活動において、消費者の気分や市場のニーズを探るリサーチ業務は重要な役割をもつ。小売店やメーカーなどでは、そこで得られた分析結果が事業活動の大きな指針として活用される。
多くの企業が実施する代表的なリサーチの手法としては、アンケート調査が挙げられる。しかし、パネル数や質問項目が増えれば増えるほど、得られるデータは膨大になる。特にフリーアンサーを利用した場合、選択形式の質問項目よりも濃い消費者の声がつまっているはずであるにも関わらず、その中から有用な情報を抽出して意味を見いだしていくことは困難だ。そのため、少人数の中から目立った声を拾う、結果を眺めるだけ、など十分な分析ができていないことが少なくない。外部の調査会社に依頼する方法もあるが、費用や時間がかかってしまう。
ジーンズやカジュアルウェアの専門店として、全国に487の店舗を展開するライトオンも、長年こうした課題を抱えていた企業の一つだ。同社では、顧客の意見やニーズをつかむため、テキストマイニングツール「見える化エンジン」を導入して、自社でより精緻な分析に取り組み始めている。同社のマーケティング部 梅田祐貴子 氏に話を伺った。
ターゲット別の属性・嗜好性を捉えるために「見える化エンジン」を導入
梅田氏の所属するマーケティング部は、商品の広告宣伝やPRなどの戦略策定から販売促進のためのチラシやカタログ、メールマガジンの発行までを全社を横断して行っている。同社では長年、新商品の打ちだし方などを決定するための指針の1つとして、メンバーズカードの会員データやPOSデータをもとにした分析に加え、一般的な消費者の声を聞くために定期的に外部の企業に依頼してインターネット調査を利用していた。しかし、次のような課題を抱えていたと言う。
「インターネット調査では、ブランドイメージや消費者の嗜好性の変化などを伺っています。直近のパネル数で1200人ほどです。しかし、調査対象数がこれだけの規模になると、例えば『ライトオンの好きなところは?』といったフリーアンサー項目を盛り込んでいると、分析というよりも、なんとなくこんな意見が多いかな、といった感覚的な情報しか掴めていないのが実情でした。
また、施策を打つ上で、誰をターゲットにするのかは重要になってきますが、ユーザー属性ごとの傾向を調べるということができていませんでした。ライトオンを良く使ってくださっているお客様はどういう方なのか、たまに使ってくださるのはどういう方なのか、全く使ったことがない方はどういう方なのかをより正確に把握する必要があると考えていました」
意見の大きな固まりは見えるものの、他の質問との関連性や顧客属性ごとの傾向などを分析するには至らず、最も多い意見を全体の意見として意味付けるほかなかったという。
先に梅田氏が語った課題は、主に次の3つ。
- インターネット調査でのアンケートフリーフォーム欄が形骸化し、感覚的な知見しか得られない
- 顧客属性別の傾向や嗜好性の分析ができない
- 上記の理由から具体的なターゲット別のマーケティング施策に落とし込めない
こうした課題を抱える中、より分析の精度を上げて商品展開や広告宣伝、サービスに活かそうと、ライトオンでは前述の「見える化エンジン」を導入。「自分たちが知りたいこと」を「知りたいタイミング」で分析できる体制を整え、下記のような改善を実現したという。
- 分析の質が向上し、会員ランクや属性別の嗜好性・ブランドイメージを把握
- 分析結果をもとに顧客属性別に合わせた内容のメルマガ配信が可能に
- 積極的にアンケート調査を実施する体制を構築
- ソーシャルメディアにおける評判分析を実現
なかでも属性別の嗜好分析やソーシャルメディアにおける評判分析については、注力して施策に取り組んでいる。