結果~ビュースルー効果をアトリビューション分析
データ取得、DB処理、集計/一次分析は問題なく終了。すると、ビューを含めたユーザー全体の行動が見えてきた。今回は、ビュー計測に制限をかけているが、それでもユニークブラウザで数十万件分、接触データとしては数百万件のデータを取得している。
結果としてユニークブラウザベースで6割強がビューから始まっており、7割弱が接触遷移のどこかにビューが絡んでいることがわかった。また、コンバージョンまで至ったユーザーは1%弱で、そのうちビュー絡みのものは2割強観測されている。以下に実験で算出できたこと、明らかになった事象をいくつか紹介しよう。
ビューによる自然検索のトラフィック効果は+9%
通常の広告クリックに加え、ビュー直後の自然検索もクリックと同様のトラフィック効果と考えると、トラフィック効果は9%増し。さらに、他のディスプレイ広告のクリックまで含めると10%増しとなり、合計約2割増しとなった。
ビュー直後の接触に意外な課題
意外にも、ビュー直後の接触はビュー以外のディスプレイ広告のクリック。これはディスプレイ広告のクリエイティブと出稿プランの影響もあるが、ここまで極端に多いとは予想外だったようだ。また、自然検索よりもリスティングが多めで、しかも非指名系(一般ワード)の方が比較的接触が多いのは、今回発見された課題の1つだ。
ビュースルーコンバージョンはクリックスルーと同数
対象ディスプレイ広告のポストクリックコンバージョンに対し、ビュースルー経由のコンバージョンまで算出すると2.1倍。つまりCPAは約半分となった。
この結果に対し鈴木氏は、「それでも、他の施策との比較ではコストバランスに課題があることがわかった。アトリビューション分析によって、課題と改善目標が非常にシンプル且つ明確に示された」と感想を述べた。
最適フリークエンシーは60回
今回、ビューを計測しているディスプレイ広告のフリークエンシー(広告接触頻度)と、その後のクリック(全ての広告、メルマガ等)および自然検索、つまり能動的なアクションを起こした率を調べたところ、60回程度でピークが来ることがわかった。
その間の検索語や閲覧ページも同時に検討する必要もあるが、フリークエンシーキャップ(※2)や時間間隔制御等をコントロールする際に参考になるデータとなるだろう。
ディスプレイ広告の配信制御の一つで、同一ユーザーに対して広告が表示される回数を制限する機能
「今回の実験は条件設定をして取得したデータであり、また実際の施策にフィードバックするための分析視点も整理しないといけない」と、鈴木氏、中川氏は言う。紹介したのはほんの一部の結果であり、全てを可視化するのはまだまだ難しい領域であるという点も、今回の実験を通して明らかになった点の1つだ。
ただ、光明が見えたことも確かだ。鈴木氏は今回の結果に対して次のような感想を述べている。「完全ではないにしろ、良かったこと、課題など、いままでわからなかったことが明確になったのは大きな収穫。View to Searchの際の特徴的なキーワードなど、接触初期でのポテンシャルユーザーのモチベーションが推測できるなどの意外な発見も多くあった」
一方、中川氏は「今回はビューの一部しか測っていないので、解釈に無理があることも否めない。しかし、全てを可視化できれば購買プロセスについても、もう一段階精緻に見えるはず。もちろん実験は続けるが、分析インフラをちゃんと考えておかないとオーバーフローするのが課題だ」と語った。
今回は一般的なPCとデータマイニングソフトウェアを使用し、データはDB化せずにローカルで置いて行っているが、より大規模のデータを分析するとなると、その環境ではカバーできず、分析環境という点においても検討する余地は多いにありそうだ。
また、標準のアドエビスではビュースルー計測ができないが、ロックオンでは今後のために実験を重ねていきたいという。ディスプレイ広告の評価に関して、共同研究パートナーとして募集をしているようなので、同じような問題意識をもっている方は以下のアドレスへ連絡してほしいとのこと。
最後に、鈴木氏にビュースル計測とアトリビューション分析について聞いたところ次のような答えが返ってきた。
「量的な最適化にももちろん興味あるが、マーケターとしてはユーザーを理解するための手段として、ビュースルーからのアトリビューション分析に期待したい。アトリビューション分析の結果をクリエイティブの開発へ活かすフェーズは、すぐそこに見えている」