出演者やスタッフの協力に支えられて
こうした人気を支えているのが、番組のキャスターやスタッフの協力だ。ぺージへの投稿は、基本的にすべて鈴木氏を経由して行われる。「キャスターの森本(智子)や進藤(隆富)は、現場で撮った写真とともに投稿原稿を送ってくれる。その内容を僕が確認して投稿しています。写真がないときは、スタッフが番組の映像からキャプチャーしています。「トレたま」のアナウンサーもみんな記事を書いてくれるし、凝った写真を送ってくれるアナウンサーもいます。」
森本智子さん、進藤隆富さん、小谷真生子さん、豊島晋作さん
ちょっとした作業のように思えるが、忙しい出演者やディレクターにとっては負担である。しかし運営を続けているうちに「大変だけど載せよう」という意識が社内に着実に浸透していった。「みんなの協力がなければページは続けられない」と鈴木氏は断言する。
こうした意識の変革には、鈴木氏自身の運営哲学も大きく影響しているようだ。「フェイスブックの運営は、番組づくりと同じ感覚でやっています。番組をつくっているときは、どういう表現がいいのか、どういうふうに始めたらみんなに見てもらえるのかということを意識している。フェイスブックの投稿でも、どういうふうに投稿したらファンの人たちが興味を持つようになるのかなと考えながらやっています。」
「それはかなりの高等技術ですね」とたずねると、「ぼくにとっては、“表現する”という意味では、映像でもソーシャルメディアでも同じです」と気負うことなく答える鈴木氏。運営しながら身につけた、自分なりのルールを公開してくれた。
- 写真をのせる 「やっぱり写真があったほうがいい。みんなのウォールで埋もれていく可能性がありますから」
- 立て続けに投稿しない 「うるさくっていやじゃないですか? そういう点では、あえて(投稿の)間隔をあけるようにしています」
- 共感できるひとこと 「たとえば「いいね」が5万になったとき、「みなさん、ありがとうございます」と投稿すると、ファンの人から「いいね」やとコメントがつき、一緒に盛り上がることができた。なでしこジャパンが優勝したとき、スティーブ・ジョブズが亡くなったとき、それぞれに思いを投稿することで、ものすごい反響がありました」
みんな思っていたけれど、言う場所がなかった言葉を投げかけることで生まれる共感。この「つながり」も鈴木氏は重視している。
実名だから得られるメリットに、みんな気づき始めている
WBSのページの勢いもさることながら、鈴木氏は「フェイスブックには勢いがある」と感じている。登録するひとが増え、その勢いが衰えていないからだ。
1年前は「フェイスブックで実名で投稿するのはイヤだ」という声も聞かれたが、いまは違う。その理由は「つながるおもしろさ」だと鈴木氏は言う。「実名だから連絡がとれなかった人と会える。そういう面白さにみんな気づいたのではないでしょうか。実名公開する不安よりも、メリットのほうが強いということではないかと思います」
WBSのフェイスブックページの今後についてたずねると、「番組はまだまだ知られていない、伸びる余地があるはずだと考えています。まだ番組を知らない人たちに届くようにしていきたいですね」と意欲的だ。「ソーシャルメディアは短期で結果が出るものではありません。地道に広げていくのがクチコミの強さ。そういうところで広がっていけばものすごい財産になるのではないでしょうか。あとはそのノウハウをどうやって引き継いでいくかが課題です」。
