「ネットでも、やっぱりNHK」という信頼に応える
携帯電話やパソコンなど、新しいデバイスが生活に浸透し、テレビの見方も変わりつつある現在、視聴者像の変化について、NHKはどのように対応しようとしているのだろうか。
「どうやって放送を皆さんのところまで届けるかと考えると、放送だけでは限界がある。平成23年度までの3年間の経営計画では「放送外リーチ」という指標を設けて、それを25%にすることに取り組んできました。インターネット、データ放送などの部分でリーチを増やした結果、最終的には27%に達しています。」(松村氏)
さまざまな取り組みをおこなう中で、松村氏は「東日本大震災によってフェーズが変わったなと感じている」という。
「それまでは、インターネットのコンテンツを見たい、インターネットが好きだという人が、NHKのサイトを利用していました。しかし、東日本大震災後には、『インターネットでも、NHKの情報には信頼を置いている』という声をいただいています。面白さや、目新しさを求めているお客様のほかに、NHKらしい信頼を求めて、NHKのホームページを見に来るお客さんが増えていると感じています。」
受信料値下げ、受信契約の減少…厳しい経営環境の中で
平成24~26年度の経営計画では、防災対策、地域情報の発信に取り組むことを掲げている。そのために、24年度はインターネットの予算も増額された。しかしNHKは、今年の秋に受信料の値下げを控えている。さらには、昨年7月のアナログ放送終了によって、23年度の解約数は16万件を超える見込み。その中で予算を増やすことは経営にとっては大きな負担であるが、それだけインターネットにおける防災関連の情報発信が重要視されている証でもある。
東日本大震災によって、公共放送であるNHK、そして民間のインターネット企業が提供するサービスの公共性に思いがけない連携が生まれた。そのひとつが、NHKに寄せられた安否情報を、グーグルの消息情報サイト「パーソンファインダー」で閲覧可能にする取り組みだ。
「グーグルのパーソンファインダーに情報を提供したことで、インターネット業界が驚いたということもありました。しかし、生命・財産にかかわる情報をNHKだけで囲っていては、情報を活かすことはできない。今後の経営計画でも「公共」「安全・安心情報」のしくみづくりをうたっており、民放、新聞社ともやろうということであれば、一緒にやっていきたいと思っています。」(松村氏)
今後は、さらに地方自治体との連携も進めていくという。地方で信頼される情報発信のインフラとして機能するために、NHKオンラインの役割はこれからさらに重要になるだろう。もちろん、NHKオンラインには、いろんな人がいろんな楽しみ方ができるコンテンツもたくさんある。松村氏は「サイトに入っていろいろ見回っていただくと、思いがけないものにであえるかもしれません。ぜひ散歩してみてください」としめくくった。
