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統括編集長インタビュー

グーグル、アップル、もしくは起業
ニューヨークのビジネスエリートたちも選びはじめた、スタートアップというキャリア


ニューヨーク発の注目スタートアップ企業、Triple Lift(トリプル・リフト)

 では、ニューヨーク発のスタートアップ企業の中で、注目の企業はどのような事業を展開しているのだろうか。ニューヨークのアクセラレーターであるEntrepreneur Roundtable Accelerator(ERA) 第2期 Demo Dayに参加した井上氏は、Triple Liftという企業を挙げてくれた。

Triple Lift
Triple Lift

 「Triple Liftは、『ピンタレスト及びソーシャルコマースサイト、ザ・ファンシー(The Fancy)向けマーケティング・プラットフォーム』を提供する会社です。Tripie Lift CEOのエリック氏は、フェイスブック、ツイッターとピンタレストやザ・ファンシーの大きな違いは「プロダクト」 に焦点を当てたSNSという点だ、と主張しています。一方、Eコマースの市場規模は、世界的に見ても拡大傾向にあるため、自社のEコマースへいかに集客するかという点は、こらからますます重要視されるはずです。

 Eコマースサイトへの集客元として、ピンタレストやザ・ファンシーは存在感を発揮しはじめているため、Triple Liftが提供するようなサービスへのニーズも高まってくるのではないでしょうか。また、同社への期待値が高い理由は、アドテクノロジーのリーディングカンパニーである、appnexus出身の3人によって立ち上げられたという点にもあります。appnexus時代に商品開発、マイクロソフトやeBayなど大型顧客向けのストラテジック構築・エンジニアリング、グローバル・セールス/ビジネス・ディベロップメントを担っていた3人なので、期待値が高いのも当然と言えます」

「リーン・スタートアップ」は、ベンチャー企業だけのものではない

  ビジネス環境があっという間に激変するため、これまでの成功の方程式が通用しない時代になりつつある。スタートアップの世界ではその対応策として、いち早くサービスをテストし、ユーザーからのフィードバックを素早く改善につなげ、それを繰り返し行っていくこと、いわゆる「リーン・スタートアップ」方式のアプローチに注目が集まっている。井上氏は、この手法はスタートアップ企業の経営者以外の人々も参考にできると言う。

 「『大上段に構えて、事業ドメインの選定や立ち上げに向けた市場分析、ビジネスモデルの設計に、いたずらに時間とコストを費やすのはやめよう。早い段階でユーザーにサービスを使ってもらい、その価値を確かめ、不十分な部分や無駄な要素があれば、ユーザーからのフィードバックに基いてどんどん改善していこう』。こういったリーン・スタートアップのコンセプトは、大企業内での新規事業開発においても十分に効果を持ちえます。

  “start small, fail fast”などとよく言われますが、独りよがりなサービスにリソースを注ぎ込むのではなく、ユーザーの声へ真摯に耳を傾けて、求められていないのであれば早期にストップしてしまう。そこで得た知見を活かし、サービスの方向性を修正したり(方向性を修正することを"pivotする"と言う)新たなサービスを開発するなどした方が、迅速に価値のあるサービスを作れるのです」

 また、新たなイノベーションをどんどん創り出している、アメリカのスタートアップ企業経営者たちも、その多くは特別なセンスや天才的な嗅覚を持っている訳ではなく、ユーザーの声や隠されたニーズを汲み取る仕組みを作って、そこに人員やリソースを惜しまずに投入しているからこそ、価値のあるサービスを創出できると井上氏は言う。

 「例えば、多くのスタートアップ企業経営者は、サービス開発初期において自ら電話対応などカスタマーサポートを行うことが多いのですが、彼ら自身それが宝の山だと気づいているんですね。"start small"は、インターネットサービスやベンチャーの立ち上げなどに興味を持つ人にとっても大きな意味を持ちうると思っています。Yコンビネータのようなアクセラレーター・プログラムに参加しているスタートアップ企業の経営者たちと話をしてわかったことですが、彼らの多くも"start small"を実践していたのです」

 スタートアップに挑戦するということは、自らのビジョンのみを信じて、脇目もふらず突っ走るというようなイメージを持つが「決してそんな人たちだけではありません」と井上氏は言う。

 「大企業という輝かしく、リスクも少ないキャリアを横目に、スタートアップの道に進むのは彼らだって怖い。まずは小さく始めて、決断の前に手応えを掴んでいるのです。不確かなアイデアだけで、いきなりベンチャーの世界に飛び込むのはかなりの勇気がいる行動で、当然リスクも伴います。肩ひじ張らずに、まずはターゲット・ユーザーに会いに行って話を聞いてみたり、ベータ版を作ってみて、友人に使ってもらったりすることが大切で、アイデアは海外の先進事例から学んだってよいのです。そして、徐々にサービスに磨きをかけ、ユーザーを確保しサポートしてくれる人を集めていく。その結果、出資してくれる人も出てくるかもしれない。そこまで揃った上で、はじめるという選択肢をとるのでもよいのです」

 最後に井上氏は自分自身の今後の想いについて次のように語ってくれた。

 「企業・個人に関わらず、私はそういった取り組みのサポートをしていきたいと考えてます。それが日本の経済を活性化させ、活力のある社会を実現することに繋がるのではないかと思っています」

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/10/22 10:48 https://markezine.jp/article/detail/16188

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