企業、取引先、消費者の三者のニーズを満たす
小野:カールスバーグのクーポンも面白かったですね。これはGPSを活用したもので、アプリを立ち上げると、その近くでカールスバーグを飲めるお店が出てきます。そこでクーポンが発券されて、ユーザーはそれをお店にもっていくといったものでした。

杉山:サントリーの取引先は町中のお店屋さん。「カールズバーグおいてね」ってサントリーの人が営業にいったときに、「これをお客さんは本当に飲みに来るの?」といったやり取りは容易に想像できますよね。この施策はそれをサポートするものです。
飲みたい人にもこの近くでカールズバーグを飲めるという情報とクーポンを提供し、同時に町のお店のオーナーにもうれしい、双方の問題を解決する面白い施策ですよね。
小野:これがどこにでもある、プレミアムモルツだと面白くないんですね。必ずしもお店にあるとは限らない、カールスバーグだからこそ面白いんです。うまくモバイルの特性を活かした、BtoBtoCの良い事例です。
もはや広告という狭い領域の中で完結する話しではない
小野:今年になって、僕が務める大学のマーケティング学科に入学した大学生にたずねたら、約90%はスマホを持っていました。僕のクラスに関しては、40人中、スマホじゃないのはたった2人だけでした。今の大学生にとって、スマートフォンを持ってLINEをやるのは当たり前だし、彼らはある意味で、かなり情報の選別に長けているのかもしれません。
杉山:スマホ世代は上手に使いますよね。だから下手をすると、逆に企業側が使われてしまいます。企業が思っているようには、彼らは動いてくれない。

杉山:またシニア層に関しては、タブレットの普及に伴い、彼らにリーチできる新しいモバイル広告の施策が出てくると思います。
たとえばテレビを観ながらタブレットのページをめくっていると、テレビと連動した広告が出てくるとかでしょうか。電子書籍という流れの中に、新たに組み込んでいける広告などは、シニアにもなじみやすい広告のカタチでしょう。
やはりスマートフォンは画面が小さいので、40~60代になってくると細かすぎますよね。だけどタブレットのめくるという行為は、中高年でもできるので、様々な新たな手法がこれから出てくるでしょう。タブレットは年をとっても使える、そこがキーだと思いますね。
小野:先にも話しましたが、モバイル「広告」というのは、モバイル広告大賞の審査会をやっていて、いつも引っかかるところです。広告という狭い領域の中で完結する話しではないんですね。マーケティングコミュニケーションとでも言うべきでしょうか。
消費者は、価値があれば広告を受け入れるだろうし、価値がなければ受け入れないでしょうね。消費者は取捨選択していくからこそ、モバイルならではの特徴はどこかで活きてくると思います。