「ディスプレイ」:間接効果が可視化され、投資額を決めやすくなった
土谷 ディスプレイについては、アドテクノロジーやツールの進化によってパフォーマンス向上や効果測定が可能になってきました。
千歳 ディスプレイはダイレクトなコンバージョンを唯一のKPIとするとやはり非常に効率が悪い。膨大なインプレッションとそこで我々のクリエイティブに対してどのようなリアクションがあったのかを掴む努力が必要になる。その手段として、アトリビューションやビュースルーを活用することで間接効果が見えてきたのは前進を感じます。アドテクの進化に歩調を合わせていかに動的にコミュニケーションしていくかというのがこれから先の課題かなと。
土谷 マリンソフトウェアでもオンライン上のアトリビューションを見られる機能を提供していますが、「アトリビューション」という言葉から皆さんが期待することは非常に幅広いと感じています。
千歳 アトリビューションは時間とお金と人的リソースを費やして取り組んでいます。購買に至るパターンの把握という意味では色々と理解が進み始めた一方で、そこから得られる推定値と実績の乖離を検証したりすることも必要ですので、時間をかけてモノにしていく必要があると感じています。
分析する情報の粒度や、オフライン媒体での接触、競合の露出量との関係などさまざまな変数や因子が存在するので、必勝パターンの特定を進めつつ、常に同じクラスターだけとキャッチボールしているような状態に陥らないように俯瞰する意識も必要だと思っているんです。パターンが見えてきちゃう良し悪しがありますので。
パターンがわかるというのはある程度、相手が特定できている状態じゃないですか。ということは、そのうち刈りつくしてしまう恐れがあるかもしれない。得意なクラスターがあって、その人たちをコンバージョンさせるのは手馴れてきました、という時点で新しいお客様を見つけるような仮説を求めてデータを見直すことが必要なのかもしれません。いい意味でカオスの状態を意図的に作る、と。
土谷 新しいお客様がどこにいるのかは、オーディエンスデータからある程度つかんでいるのでしょうか。
千歳 デルの中心顧客は30-40代の男性ですが、Facebookのファンのプロファイルを見ると、20代、30代の女性が一定の割合で存在する。媒体のプロファイルの違いと言ってしまえばそれまでですが、主要な購買層と、SNSを通じてなんらかの関係を持てている層の間にギャップがあるとも言えます。それをどう埋めるかを考えたときに、そこをファーストタッチにして、外のネットワークや自社サイト内での動きを観察して、改めてデータを見直す、という再検証的な作業も必要になると思っています。
ソーシャルメディアは「メディア」なのか?
土谷 ソーシャルメディアはいつごろから使い始めたのでしょうか。
千歳 Twitterを始めたのが、2009年の3月ころ。その頃は新しい広告媒体という発想でしたので、コンバージョンさせることが第一義でした。パソコンがどのくらい売れるのか1年間コツコツやってみたところ、そこそこの実績が確認できましたのでアリだな、と。今は、社内の各ファンクション、代理店さんも含めたヴァーチャルチームができあがっているので、システマティックに運用していますが、Facebookを始めてからは、運用面は外部のエージェンシーに任せて、我々はコミュニケーション戦略や実際の会話に対するレスポンスなどのポリシーを担当しています。
土谷 ソーシャルメディアを選択する際のポイントは?
千歳 前提にしているのはある程度個人が特定できるかどうか、サービスの特性と利用者の属性が我々の方向性に適しているかどうかを検討します。私の中では、ソーシャルメディアを「メディア」としてはあまり考えていないのです。メディアと考えるとどうしてもリーチがほしくなってしまう。インタラクションを通じて関係作りをしていくことに重きを置いて、その広がりを見ていきたいと思っているので、ある程度のリーチは投資するうえで絶対必要ですが、いたずらに数が多いことはあまりプラスになりません。
土谷 「ターゲットであろう人たちにタッチしているはず」というトラディショナルな広告の時代から、オンラインで「特定の誰かに確実にタッチしている」時代になってきました。タッチできた相手が誰でどんな人かを理解したうえで、そこからさらにコミュニケーションターゲットを広げていくデジタルマーケティングは従来型とは発想がまったく違います。いかにタッチポイントを増やすか、そのために何を使うのかをマーケターが考えなければいけない。
千歳 我々の場合、比較的購買間隔の長い耐久消費財を扱っているので、個人が見えているほうがやりやすい。おそらく業種業態によって期待するものが変わってくると思うのですが、代理店さんにはそういったビジネスの構造も加味したうえで施策をデザインするようなセンスを持っていただきたいと思っています。
土谷 自分たちの枠だけで考えないということですね。Facebookに関して言うと、米国では「いいね!」を追うことが一段落してリターンを重視する段階に入っており、Facebook広告を活用する動きが目立ってきています。それに応じてマリンソフトウェアでも、以前ターゲットしていた人たちの設定を再利用する機能や、ローテーションA/Bテストが簡単にできる機能、入稿をすばやく大量に展開するためのウィザードなどを用意しています。
さまざまな可能性があるメディアなので、まずは小額でもテストして、結果を見てまた考えて、そうやって自社に取っての必要な指標を導きだしておくべきだと思います。
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