2014年1月:ハーゲンダッツのCMが成功した要因
では実際に、2014年1月度のCM好感度をみていこう。

1年のはじまりということもあり、正月は新しいCMが最も多くオンエアされる時期だ。CM好感度トップ10の顔ぶれには、正月の初売りを訴求する「ダイハツ」「日産」や、新年ということで何か新しいことを始めようと一念発起する人に向けた「ユーキャン」「コナミスポーツ&ライフ」のCMがランクインしている。
このトップ10にはランクインしていないのだが、「商品にひかれた」ランキングで1位になったハーゲンダッツの事例を増崎氏は取り上げた。下図はハーゲンダッツの好感要因を赤いグラフで示したもの。このCMには柴咲コウが出演していたが、出演者の項目よりも、商品にひかれたポイントが非常に高いことがわかる。タレントが目立ちすぎずに、商品の魅力が伝わるCMに仕上がっているということだ。

ハーゲンダッツは1961年にニューヨークで誕生した高級アイスクリームブランド。日本に参入したのは1984年で、日本初のCMは1991年から実施している。下記は直近10年間のCMの推移を示したグラフ。青いグラフは放送回数、赤いグラフがCM好感度を示しており、柴咲コウが起用され始めた2011年から、CM好感度がぐっと伸びている。

「もともと、ハーゲンダッツは外国人タレントを起用してきました。その時代は高級感を前面に押し出していましたが、出演者を柴咲コウさんに変更してからは、ラグジュアリー感は残しつつ、日本人タレントが出演していることからより親しみやすいものになりました。また、『食べるまでの待ち時間を楽しみにする』という消費者側へ気付きを与えたり、身近な場面設定にしたことで消費者は自分のシチュエーションに置き換えて考えやすくなり、試してみたいと思わせたことも、CM好感度が伸長した要因でしょう」(増崎氏)
2014年2月:携帯キャリア3社の学割商戦の模様
続いて、2014年2月度のCM好感度トップ10をみてみると、通信事業者やドリンク類が目立つ。そして同月は、携帯3社が学割商戦を繰り広げていた。

「最も早い時期から、学割訴求のCMを始めたのはドコモでした。それからソフトバンク、auと続いたのですが、放送回数ではソフトバンクのCMが圧勝でした。前年度比226%という力の入れようでしたね。auに関しては前年の約1.5倍、そしてドコモについては実は前年の3割程度しかオンエアしていませんでした。しかしながら、ドコモはオンエア回数では競合2社よりも劣るものの、若い世代に人気のワン・ダイレクションを起用することで大きな話題を呼びました」(増崎氏)

ソーシャルデータから具体的に消費者インサイトを見抜く
ところで、Twitterの全量データから分析したCM好感度ランキングを、過去にMarkeZineのニュースで掲載したことがある。これはつぶやきの量と内容から、CMの好感度を分析したものだ。ソーシャルデータは、消費者がCMの何に心を動かされたのか、より具体的に理解する手助けになる。
【2014年1月】通信キャリア3社の携帯学割商戦、ドコモに軍配あり
【2104年2月】受験シーズンの教育業界テレビCMの勝者はZ会/企業編ではリクルートが1位
企業と消費者のコミュニケーションをより円滑に進めていくために、これらのデータを総合的に分析し、消費者のインサイトを見抜くスキルが今日のマーケターには求められている。以前よりも容易に様々なデータを活用できるようになった今、多くのデータの中からどれを活用すべきか、逆に戸惑う人もいるかもしれない。そんな方は、まず手始めに今回の調査データと自らの実感値を比較し、そのギャップの要因を考えてみることから始めてはどうだろうか。