アプリ利用者を休眠させない工夫とは?
自動販売機を馴染みの喫茶店のように身近に感じてもらうためには、アプリ利用者をいかにつなぎとめられるかが肝になる。「アプリをダウンロードしたけど、使われないコンテンツっていっぱいあると思います。そうなっては意味がありません。常にアプリをアクティブにしてもらう必要があります」と斎藤氏。 そこで参考にしたのが、恋愛ゲームだという。「話せる自販機 GEORGIA」では、タイプの異なる6人の女性から「“馴染みの店”の店長」を選べるように設定された。選択肢を与えることで押しつけ感がなくなり、自分の選んだ店長と会話をしたいといった、ポジティブなモチベーションを引き出す狙いがあるという。
さらに、自動販売機へのアクセス回数に合わせて店長の口調が変わったり、普段見られない表情が表示されるなど、段階を踏んで親密度が上がっていく工夫がされた。「例えば、しばらくアクセスしていなかったユーザーが、偶然マイ自販機の近くに行ったときに店長から『お久しぶりですね』と声がかる。といった仕組みを用意しました。予期しないアプローチを受けるとびっくりするし、親近感がわくと思います」

結果、狙い通りユーザーからは好意的な反応が多く集まったという。「数度のアンケートを通して、アクセス頻度やブランドリフトを調べたところ、目標以上の数値を得ることができました。また、Twitterでは店長とこんな会話しちゃった、というようなツイートもあって楽しんで頂けていると感じました」と斎藤氏。「話せる自販機 GEORGIA」は3か月間限定のキャンペーンだったが、終了時には継続を望む声もあったという。
TVとリアルの両方で癒しの提供
そもそも、なぜアプリは女性の店長とのコミュニケーションという形になったのだろうか? 斎藤氏に尋ねたところ、「ちょうど、永作博美さんを起用して、癒しをテーマにしたTVCMを制作していました。そこで、TVCMというバーチャルな接点だけでなく、リアルでも癒しを提供しようと考えました。ここから、マイ自販機の店長が呼びかける、というアイディアやスキームが出ました」とのこと。
永作さん以外の店長の選定も、頭を悩ませたポイントだという。「程よい距離感を持ちつつ、声を掛けられると心がくすぐられる。そういう人物像を考えました。いわゆるミス○○のような方はどうかとか、そもそも5人も起用する必要はあるのかなど様々な声がありました。検討を続けた結果、行ってらっしゃいとか、おやすみなさいという相手からの言葉を素直に受け入れられる、『キャスター』に行き着きました」