プレスリリースもコンテンツの1つ
今回の施策では、いつ・どこに・どのような情報を出すかも詳細に考えられていた。「まずはプレスリリースで、キャンペーン予告を打ちました。次に、WACOAL BODY BOOKに見本となる小説を3本、順番に掲載しました。最後に、MY LOHASの記事を公開しました。もちろん、小説がアップされるタイミングで都度プレスリリースも出しています」こうすることで出稿先からの流入がない、という状況を防ぐとともに、実施中のキャンペーン紹介という記事広告の性格付けができる。
さらに、プレスリリースにも工夫がされていた。「Twitter用のハッシュタグを付けました。WEBのニュースなどに掲載してもらえれば、興味を持った人が情報を拡散してくれます。シンプルですが、リリース自体もブーストできます」と語る北見氏。プレスリリースもコンテンツマーケティングの一つとして捉えているという。
PV大幅増、広告の自然さがポイント
施策の結果、PVは大幅増。さらにキャンペーン月だった8月を過ぎた9月も増加したPV数を維持できた。MY LOHASからの直接流入数も非常に多かったという。作品の応募も、当初10本程度を予想していたが、10倍の100本が寄せられた。「応募自体は反応を見るためのものだったので、予想以上に反応がもらえた感じです」
一方で、ユーザーからの意外な反応もあった。「パンツになりきって小説を書くのが意外と難しい、という声をよく目にしました。「書けない!」とか、「私は書けないから○○さん書いて」といったツイートやシェアが多かったですね」しかし、それも含めてよい話題提供になったのではないかと北見氏は振り返る。
MY LOHASからの流入については、記事の自然さが良い効果をもたらした。「当初は商品名もストーリーの中に入れて、リンクをつけることも考えました。でも、それだと小説っぽくなくなるので外しました。もちろん、当社のサイトに誘導はするけど余分な商品情報は出さない。その結果、考えていたよりも広告色はなくなりました。PRだということはきちんと分かるようにしつつ、リンク先でのガッカリ感もない」
ネイティブ広告で発生しがちな、ユーザーの裏切られたという感情が想起されない仕組みを実現できたわけだ。「今回の施策で、ユーザーのいる場に入り込むことがネイティブ広告だと理解しました。しかし商品発売時など、機能や製品情報をきちんと伝えることが必要な場合もあります。上手に使い分けていきたいですね」
「発想と工夫」で伸びる仕掛けを考えたい
最後に、今後目指すところを尋ねた。「サイトについては、話題の山を作ってなだらかに収束しつつ、次の話題の山を上手に作って、と段階的に着実に成長させたいです。ただこの場合、情報をどう届けるか考えたときに、広告費用をたくさん投入して認知率を上げるのは違うと思うんです。ちょっとした気づきや、ちょっとしたプッシュによって、大きく伸びる仕掛けを考えていきたいですね。当社はコンテンツマーケティングという言葉が広がる前から、オウンドメディア戦略に力を入れてきました。ですから、コンテンツ作りは社員全員ができます。それをいかに上手に話題化してゆくかを意識したい。実現のために、今回以上に情報の出し分けを細かく設計して施策を進めたいです」
実は取材の前に北見氏から、パンツ小説というネタみたいな企画ですがマジメに実施しました、という言葉をもらっていた。話を聞くと、なるほど頷けるものだった。2月12日にはブラの日が控えている。その時にもワコールは何か施策をするのか。今後の動向も気になるところだ。

