オムニチャネルのちょっと先の未来を予測する
2014年のマーケティング業界におけるキーワードの一つ“オムニチャネル”。「このセッションでは、オムニチャネルの今、というよりはちょっと先の未来について、オムニチャネル戦略の最先端を行く東急ハンズとパルコのお二方と一緒に予測していきたい」とモデレータの博報堂 関西買物研究所 所長の西村直久氏は口火を切った。
近年のスマートフォンの急速な普及とSNSの浸透により、コミュニケーションの主導権は企業から生活者へ移行し、いわば生活者主導の時代が到来している。それに伴い、企業はテクノロジーを活用し、変化する生活者の行動に合ったサービスを提供していくことが求めらている。では、オムニチャネル化が進むことで、生活者の購買行動はどう変わっていくのだろうか。そして企業は具体的にはその変化にどう対応していくべきなのか。まずはパルコのオムニチャネル戦略に学ぼう。
“接客のオムニチャネル化”を目指すパルコが描くプラットフォーム
オムニチャネル戦略に積極的に取り組む企業として知られているパルコ。同社は「24時間パルコ」というコンセプトを掲げ、様々な施策に取り組んでいる。
「オムニチャネル時代においては、お客様の多様化するニーズに店舗だけでは十分に対応できません。パルコの商売は小売業ではなく、テナント業。出展していただくテナントが商売をしやすい環境を整えるのが弊社の役割です」とパルコ WEBコミュニケーション部 部長の林直孝氏は語る。店舗とWEBをシームレスに連携することで、顧客とのコミュニケーションと購買体験を24時間提供する。そのプラットフォームを作るために、同社は様々な施策を展開している。
日常的にWEB接客が行えるプラットフォーム「パルコショップブログ」
“いつでもどこでも買い物ができる”環境をつくるためには、リアルな店舗に加えて、WEB上にもプラットフォームが必要である。その最初の取り組みとして、2013年よりテナント向けに「パルコショップブログ」を開設。パルコのショップスタッフが発信する情報プラットフォームとして全国19店舗の約3,000ショップがブログのアカウントを開設・運用している。(関連ニュースはこちら)
ECサイトとの情報連携によるオムニチャネル化
その次のステップとして、ECポータルサイト「PARCO SHOW WINDOW」をオープンした。テナントの自社ECサイトから商品情報をクロールして集めている。また、前述の「ショップブログページ」の中に商品情報の一部を表示し、詳しい情報を知りたい場合はテナントのECサイトに飛べるように導線を貼っている。そして購入まで至った場合には、パルコにアフィリエイト収入が入る仕組みになっているという。
そして、これらのWEBサイト上の商品情報を店頭にも使えないか、ということから、渋谷パルコにインタラクティブサイネージ「P-WALL」を設置。渋谷パルコ出店テナントショップの商品情報が一覧化して表示され、気になった商品をタッチすると、その商品が拡大表示されたり、同じカテゴリ・同じ色の商品が瞬時に集約されるような仕組みも備えている。
リアル店舗の売上に貢献する「カエルパルコ」
さらに「店舗への直接の売上貢献」を目的に、Web取置き予約&通販注文サービス「カエルパルコ」を展開。パルコ各店のWebサイトにある各ショップのブログページで紹介される商品を、パソコンやスマートフォンを通じて、店頭への取置き予約や通販の注文ができる。2014年5月より一部ショップで先行導入していたが、現在では都心店グループ8店舗に拡大している。今後は全国に広げていく予定だという。(関連ニュースはこちら)
「ポイントは商品が店舗の在庫から出ることで、リアル店舗の売上アップにつながる点です。これによって、ブログを更新するスタッフのモチベーションも上がり、いい循環が生まれています」(林氏)
一人ひとりにパーソナライズしたWEB接客を実現するアプリ「POCKET PARCO」
2014年10月末に、公式スマートフォンアプリ「POCKET PARCO(ポケットパルコ)」をリリースした。コンセプトは「あなたなのポケットの中にパルコ」。前述の「ショップブログページ」「カエルパルコ」と連携しており、ショップ検索や商品取り置き、通販注文機能、チェックイン、Wi-Fi接続機能などを備えている。(関連ニュースはこちら)
「これによって、購入履歴や登録情報などに基づき、お客様一人ひとりにパーソナライズしたサービスやWEB接客を提供することができるようになります。我々が定義するオムニチャネルとは、商品そのものや在庫といったことではありません。“接客をオムニチャネル化する”、そのコンセプトのもと、様々な施策をこれからも進めてきています」(林氏)