電通の海外子会社でメディア・コミュニケーション・エージェンシーであるCarat(カラ)は、昨年9月に予測した「2014年の広告費成長率」の実績の確定、「2015年の広告費成長率予測」の改定、および「2016年の広告費成長率」の新規予測を行った。主なトピックとして、下記が挙げられている。
- 2014年の世界の広告市場は前年比4.6%増。2015年は4.6%増、2016年は5.0%増と予測
- 2015年の世界の広告市場は前年比4.6%増の5,400億ドル(前年差+238億ドル)へ
- デジタルシフトが進み、2016年には世界の広告市場に占めるデジタル広告費の比率は25.9%へ
- 日本の広告市場は2015年が0.9%増、2016年は1.2%増へ
2014年は全エリアでプラス成長も、予測と比較すると微減
2014年は、5つの地域(北米、西ヨーロッパ、中央および東ヨーロッパ、アジアパシフィック、ラテンアメリカ)すべてがプラス成長になった。冬季オリンピック・パラリンピック、FIFAワールドカップなど大型イベントの寄与があると考えられる。
しかし、予測の観点では、昨年9月時予測の5.0%増から微減し、4.6%増となった。これは、プリント媒体の減少が想定以上だった米国(昨年9月時予測の前年比4.9%増に対し、実績は4.5%増)、クリスマス商戦のテレビ広告費が英国で想定を下回った西ヨーロッパ(同2.7%増に対し、実績は2.3%増)、地政学的な不安要因を抱える中央および東ヨーロッパ(同3.5%増に対し、実績は2.5%増)などで実績が昨年9月時の予測を下回ったため。なお、ドイツ、スペイン、日本などでは実績が昨年9月時の予測を上回っている。
2015年広告市場は前年比4.6%増の5,400億ドル
2015年の全世界の広告市場は前年比4.6%増の5,400億ドル、前年に対して238億ドルの増加が見込まれる。2015年のデジタル広告費は15.7%増の171億ドル増になると予測される。
地域別にみると、北米は引き続き安定した成長が見込まれ、2015年の広告費成長率は昨年9月時予測の前年比4.5%増が据え置かれた。米国ではデジタル広告が16%程度伸長し、プリント媒体の不調を補うものと見られれている。2012年、13年とマイナス成長が続いた西ヨーロッパでも、2014年は前年比2.3%増となり、2015年も2.8%増とプラス成長が続く見通し。成長をリードする英国では、デジタル広告費が全広告費の48.2%を占めるようになり、2016年にはその比率が51.1%に達すると見られている。
ロシアを含む中央および東ヨーロッパは、地政学的な不安定さから、2015年は前年比2.2%減になると予測される。中でもロシアは、経済の低迷が見込まれることから、2015年は7.1%減と、昨年9月時予測の5.0%増から大幅に下方修正された。一方で、デジタル広告費については15.9%増と高い成長が見込まれれている。
アジアパシフィックについて、日本は、昨年9月時予測の1.7%増から0.9%増へと下方修正された。これは、2014年の予測が2.0%増であったものが実績で2.9%増になったこと、および8%から10%への消費税増税が2017年4月に延期されたことに伴い、2015年内の「駆け込み需要」が見込めなくなったことによるもの。なお、日本の広告費は4年連続で前年を上回り、2016年にかけてもプラス成長が続くと予測される。
ラテンアメリカについては、ブラジルがやや減速する中、他の国々では安定した成長が見込まれる。また、アルゼンチンではインフレの影響が広告費にも及ぶと予想されることから、地域全体では11.1%増と2桁の成長が見込まれている。
Carat(カラ)は同社の世界ネットワークを通して収集した情報に基づき、59地域の広告費の成長率を独自に分析・推計している。なお、対象媒体には、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、映画館広告(シネアド)、屋外/交通広告、デジタルが含まれる。
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