メーカーと“二人三脚”で臨む「cosme.com」
ディスカウントをしない方針は、コスメ・コムにも共通している。同社は、女性にはお馴染みの化粧品クチコミサイト「@cosme」を運営するアイスタイルのグループ企業。同サイトと連携し、商品データに登録されている商品をECで販売している。割引をしないのは「各メーカーとは二人三脚のつもりで、メーカーが想定する価値で買っていただきたいという気持ちがある」と朝倉氏。

コンサルティング会社やオンラインドラッグストア企業などで、10年以上EC事業に携わってきた朝倉氏は「当社グループは化粧品の印象が強いと思いますが、元々はユーザーと企業をつなぐユーザー基点のマーケティング活動を促進することをコンセプトにしています」と語る。実際、約1200ブランド、1万5000点もの商品を扱う「cosme.com」は、「@cosme」の商品情報やクチコミ情報を参考に「買いたい」と思ったユーザーがワンストップで購入できる場になっている。
売上・ユーザー数とも成長著しく、現在のユニークユーザー数は100万に上る。「@cosme」経由の顧客による売上は月間の約半分を占めるが、もう半分は独自で顧客を捉えている状況だ。この伸長の背景について、朝倉氏は「ひとつの施策でホームランを打つのではなく、顧客が求めるものをしっかり少しずつそろえて、総合的な顧客満足の向上に力を入れていることが効いているのでは」と話す。
ディスカウントせずに、“お求めやすさ”を工夫するには
コスメ・コムの顧客満足向上を支える二本の柱は、品ぞろえの増強と、流通の品質だ。まず、現在1万5000点の商品数を、今期さらに倍増させ、顧客ニーズに対応する。そして、注文からお届けまでを短くすること。現在すでに注文の50%以上で当日出荷を実現しており、2日以内出荷を加えると注文数全体の9割近いものが該当するという。
さらに、より一層の“お求めやすさ”にも注力している。「ディスカウントはしませんが、例えばキャンペーンによって一定期間送料無料の条件を1500円以上の購入という比較的安価なレベルに抑えたり、サイト独自のセット商品を企画したりといった工夫をしています」と朝倉氏。
加えて、強力なプラットフォームである「@cosme」からのユーザーの誘導強化や、同サイトでのランキング上昇に合わせた商品展開など、ユーザーの購入モチベーションを維持し引き上げるための施策を行っている。
一方、シャボン玉石けんでも、顧客満足に注目している点は同様だ。直販ECも行うメーカーとしては、自社商品を含めさまざまなメーカーの商品を扱う流通ECサイトの躍進は、販路拡大の一方で直販ECの競合にもなるというジレンマがある。その状況下で、自社サイトではどういった顧客をターゲットとするのか。「顧客満足」といっても、その顧客が指し示すものはさまざま。同社では「“ご贔屓”のお客様こそ大事にしようと考えた」という。