既存顧客を大事にし、その声を新規獲得へつなげる

この数年、商品の安全性や環境への負荷などを自分で調べ、購買の参考にする生活者が増えている。その風潮を受け、シャボン玉石けんの製品は支持を伸ばしており、同社としても広告で石けんの良さを伝えるなど訴求を工夫した結果、国内の小売店の販路は拡大した。一方、通販はというと、前述の流通系ECとの拮抗もあり、小売ほどの伸長は見られないのが現状だ。
そこで松永氏が導き出したのが、自社サイトでは「ご贔屓」の顧客を大事にすることだった。「この言葉には、かつてお金として流通していた貝の文字が4つも含まれています。私たちに利益をもたらしてくださるのは誰なのか、そう考えると、やはり自社サイトでは既存顧客を最も優先すべきだと思いました」(松永氏)
そもそも同社の通販はリピーターが多い。使ってみて良さを実感するという商品特性もあり、新規顧客も既存顧客のクチコミから広げることを意識している。例えばFacebookを通してファンとの関係を強めたり、ファンのクチコミを体系的に伝えていく「シャボン玉石けんアンバサダープログラム」や現在5万人近いファンがいるFacebookページなどで、既存の顧客とのコミュニケーションに力を注ぐ。
「実際に使っていただいている方の声は、とても重要です。オンライン以外でも、例えば当社の歯磨き粉が『@cosme』のカテゴリランキングで1位になったときには、それを店頭POPにしたりしました。今後もファンのコメントを活かしていきたいですね」と(松永氏)
「自社の顧客は誰なのか」を見極めつつ、視野を広げる

一方、コスメ・コムでは、まだ「@cosme」ほどは認知が進んでいないECサイトを伸ばしていくことを目標に、今後さらにユーザーの拡大と商品数の充実に努めていく。具体的に朝倉氏が挙げたのは、海外展開だ。アジア諸国では、可処分所得の額こそ日本に比べて少ないものの、品質の良い日本メーカーの化粧品に対する購買意欲は「非常に高いと実感している」と朝倉氏。
そこで、特に中小規模のメーカーで良い商品を生み出している企業の支援として、同社のEC事業を通して海外への販路拡大を支援していく意向だ。
国内向けでも、この9月にもサイトリニューアルを予定している。「@cosme」との連携強化に加えて、各メーカーがECに取り組みやすくする仕組みづくりにも注力するという。日本の化粧品メーカーの中には、まだECに積極的でない企業もいる。そのような企業の参入ハードルを下げることは同サイトの取り扱い点数増加にもつながることもあり、メーカーとユーザー双方のEC活用を充実させていく。
シャボン玉石けんでも、現在中国や韓国などにも販路を広げており、これからの伸長も期待できるところだ。継続的な成長のために視野を広く持つ一方、「自社サイトの顧客」を見極めた上での関係強化が、成功するECのひとつのカギと言えるだろう。