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「アドではない。サービスやイノベーションのアイデアを」佐藤カズー氏に聞くデジタルクリエイティブの未来


成果や効果は何を指す?「イフェクティブ」の定義

MZ:コードアワードには高い成果を伴った作品に贈られるイフェクティブ部門があります。クリエイティブの成果や効果とは何を指すのでしょうか?

佐藤:審査でも「イフェクティブ」をどう定義するかは難しかったですね。審査員によっても認識は違っていますから。僕自身はプロジェクトベースで効果設定は変わっていくと考えています。何をクリエイティブのゴールに設定するかが重要ではないでしょうか。

 ゴールには売り上げの向上や認知拡大などがあります。一方で「新しい価値を提示して人の行動を変える、態度変容をさせる」というものもあります。今はこれがホットトレンドです。この場合はPR視点に近いので、成果は数値的なものではなくムーブメントを起こせたか、世の中に新しい価値を生んだか否かです。このように捉え方もたくさんあるわけです。

 例えば今年のカンヌライオンズでPR部門のグランプリをとったP&Gの「Always #LikeAGirl」という作品。これは複数の男女に「女の子みたいに○○してください」とお願いして、実際にその動作をしてもらった動画です。男性や大人の女性は体をしならせたり、どこかふざけているような動きになる。しかし、少女に同じことをお願いすると、全力なんです。その対比をみせることで、「女性の強さ、たくましさを思い出させる」というポジティブなパワーを与えました。

 この取り組みでは数値的・量的な価値は生んでいません。もちろん、リーチ数や、ソーシャルでのシェアは提示できます。ですが、最も大きな成果は新しいポジティブな価値をブランドが示したことでしょう。

海外企業との名刺交換を実現させたブラジャー

MZ:コードアワードでは、ランジェリーブランドを展開するベリグリの「TRUE LOVE TESTER」という作品がベスト・イフェクティブを受賞しています。この作品の成果はどこにあるのでしょうか

佐藤氏:海外進出というビジョンと野心をもつ企業が、この作品によって、海外企業との名刺交換を実現させたことでしょう。彼等は海外とのネットワークを構築するために何をすべきかを考えました。そして、自社のプロダクトを話題化させて海外から問い合わせをしてもらう戦略を立てた。そのアイデアを具体化させたプロダクトが今回の作品です。

 結果、90か国以上でニュースになりブランドが知られるようになって、海外からも問い合わせが来るようになった。これは立派な結果であり、イフェクティブなものだと思います。そして、iOSアプリと連動させて心拍数を測定して、一定条件をクリアしたらホックが外れるブラジャーというクリエイティビティも素晴らしかったですね。

 CMやポスターといった、既存のメディアを使って大量にメッセージを発信する必要はないことを示してくれました。クリエイティブのアイデアによって、思い描いた通りにビジネスをゴールさせていることが評価点でした。

MZ:この作品は、社長さんが積極的にプロジェクトに参加されたそうですね。熱意をもって施策に取り組めるか否かも、関係がありそうです。

佐藤:世界中の良いクリエイティブは、トップも議論に参加して展開しているものが多いですね。会社やビジョンを熟知している存在の人が、クリエイティブに関わることは重要かと思います。繰り返しますがクリエイティブは、ブランドの生業に寄っていることが非常に大切ですから。

MZ:一方で、企業には施策を行ううえでのミッションがあるかと思います。そこはどうバランスをとっていく必要があるでしょうか。

佐藤:ミッションの見極めをして、ロジカルに確認していくことが大切ですね。目的とターゲット、達成ゴールを話し合って決定して企画をすれば、多くの場合は軸からずれることはありません。企業の課題を理解して、解決するために僕らはいるわけです。この観点だと審査員の一人であるネットイヤーグループの石黒不二代さんが「ビジネスとして、やる必要があったのか」を熱弁されていたことが印象的です。

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必要なのはアドに限らない、サービスやイノベーションアイデア

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/08/26 18:00 https://markezine.jp/article/detail/22734

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