覚えておこう、2種類のターゲットインサイト
ターゲットインサイトは、大きく次の2タイプに分類できることを理解しておく必要があります。
- 共通インサイト:Aという「事象」で「インサイト」をシゲキすると、ターゲットBもターゲットCもターゲットDもEという行動を起こす
- 特有インサイト:Aという「事象」で「インサイト」をシゲキすると、ターゲットBのみCという行動を起こす
誰しも一度は経験をしているであろう「外出中に突如、局地的大雨(ゲリラ豪雨)に見舞われる」という残念な体験(あります、よね?)を例にして説明します。

上記の問いに対する答えは、1~4のどれを選択しても「正解」です。3でも4でも、もちろん「正解」です(※ 3の行動を起こす人は1と2に比べて圧倒的に少ないと思いますが、世界中探せば必ずどこかにいます)。
ここでいう「突然の大雨」は、インサイトをシゲキする「事象」に該当します。「濡れたくない」や「あまり気にしない」、「もっと濡れたい」という情動が「インサイト」に該当し、「雨宿りをする」や「そのまま外にいる」、「水たまりに飛び込む」という本能行動が「インサイトをシゲキされて起こす行動」に該当します。
1~3の中でも、おそらく多くの人は、1の雨に”濡れたくない”というインサイトに共感するのではないでしょうか。雨に“濡れたくない”ので行く予定のなかったカフェに行ったり、これ以上雨に“濡れたくない”のでコンビニに行き、ビニール傘を購入したり、多くの人は、“濡れたくない”というインサイトを大雨にシゲキされたことで何らかの行動を起こすことに身に覚えがあるはずです。
雨に“濡れたくない”というインサイトは、前述のとおり、生まれてから現在に至るまでに得てきた経験や、生活者を取り巻く社会、環境によって形成されていく“行動を起こすキッカケ”であり、多くの人にとって、過去に「フゥw 大雨に見舞われてチョー最高ww!!!」と感じるポジティヴ体験によってではなく、「ちょ、なんで急に雨降んだよ!! マジ最悪なんだけど!!!」と感じる過去のネガティヴ体験によって形成されたインサイトといえます。
そして人々は、“濡れたくない”というインサイトを昇華するために、過去の経験に基づきカフェに行ったり、傘を買ったり、はたまた濡れないように新たなチャレンジを試みるのです。
つまり、共通インサイトとは、皆が共感できるインサイトであり、上記でいう“濡れたくない”のような当たり前、常識、当然の行動背景として定義することができます。多くのターゲットが共感できる≒多くのターゲットのアクションを必要とするアイディアを考える際、非常に有効なインサイトとなります。
一方、特有インサイトとは、属人的であるがゆえに皆が共感するインサイトになりにくものです。この特有インサイトはさらに2タイプに分類することができます。
2-1.根本的に共感できない特有インサイト
2-2.共感ポイントが認知されていない特有インサイト≒共感ポイントを認知すれば共感できるインサイト
前者は先ほどの回答3“もっと濡れたい”というインサイトが該当し、(日本では少なくとも)シゲキしたところで多数のターゲットから共感が得られません。そのため、プロモーションにはミスマッチのインサイトと言えます。
後者は、回答4“あまり気にしない”というインサイトが該当し、シゲキの仕方次第で共通インサイトよりも多くのターゲットにアクションを起こさせることができます。こちらをシゲキするアイディアは共通インサイトをシゲキしても消費行動を起こしてくれてくれない場合など、アプローチ方法に行き詰ったシーンに有効です。
流行やトレンドを生み出す、いわゆる大ヒットしたアイディアは、共感できない(できなかった)特有インサイトをうまくシゲキすることができたアイディアと言えるでしょう。

もれなくチェック! ターゲットインサイト抽出法
さて、いよいよ本題のターゲットインサイト抽出方法の説明をしましょう。私が普段活用しているターゲットインサイト抽出方法を、図解を織り交ぜながら簡単に説明します。これから説明するターゲットインサイト抽出方法を、勝手に「もれなくチェック! ターゲットインサイト時系列抽出法」と命名します。
「もれなくチェック! ターゲットインサイト時系列抽出法」では、現在メインターゲットが過ごしている日常生活を構成する行動の連鎖を整理し、それぞれの行動を引き起こすインサイトを仮説立てることで、どのインサイトがキーインサイトになり得るかを決定します。“いかにメインターゲットの日常生活を想像力豊かに思い描くことができるか”が重要です。
はじめに、メインターゲットを含む全ての生活者が過ごす日常生活は、習慣行動及びそれに紐づく準習慣行動と、非習慣行動が組み合わさることで形成されていることを理解しておく必要があります。それぞれの行動は例えば、次のようなものがあります。
習慣行動:ex.生きていくため(お金を稼ぐため)に平日は働く
準習慣行動:ex.職場に向かうために電車に乗って通勤する
非習慣行動:ex.アイスコーヒーを購入する
これらの行動を起こす(日常生活を占める)優先順位として、はじめに習慣行動及びそれに紐づく準習慣行動をとり、次に非習慣行動をとります。習慣行動と準習慣行動は“避け難い行動”として、非習慣行動は“習慣行動と準習慣行動に影響されない自由度が高い行動”として位置づけることができるでしょう。
習慣行動に関しては、本能的なインサイト(●●したいから○○する)に反する行動を強いられることが多いです。そのため、プロモーションではシゲキできないことが多々あります。はじめのうちは練習がてら非習慣行動のように自由度が高い行動を重点的に紐解いていくことをオススメします。
