ユーザーの検索意図を把握したコンテンツ制作が重要
Faber Company(以下、ファベルカンパニー)はコンテンツの重要性にいち早く目をつけ、主に検索エンジン(オーガニック)からの流入を目的としたコンテンツ制作に長く取り組んできた。
現在多くの企業が力を入れているコンテンツマーケティング。ソーシャル上で話題になるようなコンテンツも求められるものの一つだが、「当社が取り組んでいるのは一時的な注目を集めるコンテンツではなく、定常的に存在するユーザーの検索意図(インテント)に合わせたコンテンツを設計・制作するための支援です。」と同社エグゼクティブ・マーケティング・ディレクターの月岡克博氏は語る。
では、ユーザーの「検索意図」とはなんだろうか。月岡氏はまず背景にある検索エンジンの進化、特にGoogleのアルゴリズム“ハミングバード”の存在を挙げた。「Googleは自然言語処理と機械学習で、検索された言葉の背景にある“意味”を理解するようになりました。例えば“東京”という言葉を、ただの文字列ではなく、それが日本の首都である“東京”だと理解しているのです。」(月岡氏)
検索エンジンが賢くなっている、この状況でコンテンツ提供側にとって重要となるのが、ユーザーの検索意図(インテント)を把握することだ。例えば「掃除機 壊れた」というキーワードで検索した場合、「(動かない)掃除機が壊れてしまったかどうかをチェックできるコンテンツ」が上位表示される。つまり検索キーワードに“壊れた”とあるものの、その裏には“壊れたかどうか確認したい”(≒まだ壊れたとは決まっていない)というユーザーの検索意図がある。Googleはそのユーザーの機微を理解しているのだ。
「ユーザーがどのようなシーンで何を知りたいと思っているか、検索キーワードの裏側にある意図を把握することが、コンテンツ企画において重要なのです」(月岡氏)
ガシー・レンカー「ニキペディア」のコンテンツ改善
どのようにユーザーの検索意図を把握し、コンテンツを設計・制作すれば良いのだろうか? ファベルカンパニーでは自社のコンテンツ制作ノウハウを活かし、豊橋技術科学大学と産学共同で開発したコンテンツマーケティング支援ツール「MIERUCA(ミエルカ)」を活用することで実現している。本記事では一例として、ガシー・レンカー・ジャパンが運営するニキビに関する総合情報サイト「ニキペディア」の取り組みを紹介したい。
同サイトは、コンテンツ数200超、月間PV80万以上にのぼるオウンドメディアだ。ファベルカンパニーとコンテンツの見直しを行った際の取り組みの一つが、検索順位が以前よりも下がってしまったコンテンツをリフォーム(書き直し)するというものだ。
「複数本のコンテンツをリフォームしましたが、今回は『ニキビが改善しない方は必見! ニキビができやすくなる4つの食べ物』というコンテンツの具体的な改善内容を紹介します。」(月岡氏)
ニキペディアでは、1コンテンツにつき、1ペルソナ1ターゲットキーワードが必ず設定されており、このコンテンツでは「ニキビ 食べ物」となる。以前は検索結果1ページ目に出ていたが、改善前の時点では2ページ目に下落していた。
「コンテンツ構成にも特段問題が無く、文字量も2000字程度と十分。画像もあって読みやすいという印象でした。けれど、順位が落ちている。ということは、検索ユーザーの意図(インテント)とコンテンツ内容に乖離があるのではないかと考えました」(月岡氏)
そこで、MIERUCAを活用して、「ニキビ 食べ物」と検索するユーザーは何が知りたいのかを調査した。結論としては、「ニキビに“悪い”食べ物だけではなく、“良い”食べ物も知りたい! どうすれば改善するのか、何が悪いのか具体例も欲しい!」というインテントがあると仮説を立て、それに沿ってコンテンツをリフォームした。次のページからは、なぜこの結論に至ったのか、流れを追って説明したい。
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入場料:無料
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検索キーワード「ニキビ 食べ物」で本当は何を知りたい?
ファベルカンパニーのコンテンツ企画・設計は次の3つの手順に大きく分けられる。順にどのようなことを行ったのか見ていこう。
- サジェストキーワードで仮説立案
- 具体的な検索意図の把握・分類
- 詳細なテーマと内容の企画設計
1.サジェストキーワードで仮説立案
Googleの検索窓に文字を打つと表示される候補キーワード “サジェストキーワード”を分析することで、今のユーザーニーズを探ることができる。サジェストキーワードは主にユーザーの検索頻度に応じて表示されると言われているが、キーワードによってはその種類と数は膨大。目視での分析には限界がある。そこでMIERUCAを活用すれば、キーワードの関連度を可視化することが可能だ。
分析の結果、「ニキビ 食べ物」と検索する際に知りたいであろう事柄には「ニキビと食べ物に関係はあるのか」等も含まれると推察。さらに、個々のキーワードの検索ボリュームを調べると、特に“ニキビに良い(効く)食べ物を知りたいのでは?”という仮説も立てられた。
2.具体的な検索意図の把握・分類
「これだけではまだ浅い。次にキーワード間の関連性を見るためにコレスポンデンス分析を行いました」と月岡氏。コレスポンデンス分析とは対応分析とも呼ばれ、多量のデータを視覚的に捉え分類しやすくするものだ。今回のケースでは、「ニキビ 食べ物」の各種サジェストキーワードで検索したときに、上位に表示されたページのタイトル文を分析した。
その結果、“ニキビに良い、悪いなど食べ物との関係性の有無を知りたい”、“みかんやビタミン、レシピなど、良いものを知りたい”、“肌荒れするお菓子やコンビニなど悪いものを知りたい”など主要な検索意図(インテント)を読み取ることができた。
詳細なテーマと内容の企画設計
「ここまでで、現在のコンテンツに不足しているテーマを追加することが改善になりそうだとわかりました。では、具体的にどのような内容をコンテンツに落とし込めば良いか。それを考えるのが3番目のステップです」(月岡氏)
「ニキビ 食べ物」で検索したときに、上位表示されるコンテンツで使われている言葉を抽出。それらが出現する回数を調べるとともに、そのテーマにおける言葉の重要度の判断をMIERUCAで行った。ここでいう重要度とは、「ニキビ 食べ物」というテーマ・トピックにおいて、その言葉がどれくらい特徴的かということだ。
例えば、下図の「原因」と「ビタミンB」という言葉を見てみよう。リストは上から順に重要度の高いものが並んでいる。言葉の出現回数は「原因」の方が124回と多いが、出現回数50回のビタミンBの方がリストで上位になっている。「ビタミンB」という言葉が「ニキビ 食べ物」というテーマにおいて「原因」という言葉よりも特徴的であるとMIERUCAが判断しているからだ。
この分析の結果、「ビタミン」や「食物繊維」などの栄養素のテーマ・トピックが多く出現したため、“ニキビに良い食べ物を紹介する際には、食材だけでなく栄養素の話まですると良さそうだ”ということがわかった。
改善した瞬間、順位が急上昇! アクセス数は10倍に!
これらの分析結果を踏まえて、下図のように既存のコンテンツは残しつつ、新たなテーマを追加するなどして再構成した。
改善したコンテンツを公開すると、「ニキビ 食べ物」による検索順位が5位まで急上昇。さらに3か月後には4位となった。セッションを比較すると、リフォーム直前の3か月間とリフォーム後3か月間で約10倍のアクセス増に。それからさらに順位は上がり、現在は1位に表示されている(2016年7月16日現在)。
また、ファベルカンパニーはコンテンツへの流入キーワード数(種類)も重要だと考える。「検索キーワードはユーザーニーズの現れです。その獲得種類が多いほど多くのニーズに応えていることになり、コンテンツの価値の一つになると考えています」と月岡氏。その数値を見てみると、リフォーム前と比べるとリフォーム後は約3倍の流入キーワードを獲得し、より多くのユーザーニーズに応えられるようになったといえる。
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『ニキペディア』編集長に聞く、コンテンツマーケティング成功のコツ
日時:2016年9月9日(金) 15:55~16:35
場所:ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区神田駿河台4-6)
入場料:無料
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オーガニックでアクセスを稼ぎ続ければ、費用対効果は大!
「きちんと企画設計されたコンテンツに投資をするほうが、広告出稿よりも費用対効果が良くなるケースもあります」と月岡氏は語る。例えば、今回リフォームしたコンテンツのターゲットキーワードに「ニキビ 薬」がある。リフォームの結果、ニキペディアは検索結果上1位に表示されている。
「ニキビ 薬」の検索ボリュームは月間22,000回であり、リスティング広告を出稿すると推奨クリック単価は約200円以上(Googleキーワードプランナーより)のキーワードである。このキーワードで検索1位である時の流入数と同じ流入数をリスティング広告と獲得しようとすると、毎月数十万円~数百万円のコストがかかるだろう。しかしコンテンツが検索上位をキープすれば、そのコストは発生しないのだ。
さらに、広告とコンテンツで狙うべきキーワードは違うケースも多いが、と前置きした上で「リスティング広告は出稿を止めてしまえば露出も流入も0になりますが、優れたコンテンツは人を呼び続ける。サイトやメディアにとって“資産”となるので、コンテンツは投資だと言えます。」(月岡氏)
コンサル、ハンズオン、完全受託、クライアントに合わせたノウハウ提供
このように、集客力を高めるためにはユーザーの検索意図(インテント)を理解したコンテンツ企画が重要だ。そのプロセスを強力に支援するのが、自然言語処理技術を活用したコンテンツ分析ができるMIERUCAである。
同社では、ツールの提供だけでなく、クライアントの社内でもMIERUCAをベースにコンテンツの企画設計ができる人材を育て、体制構築を支援するプロジェクトも行っている。もちろん、コンテンツの企画設計から制作、運用まで完全に受託することも可能だ。
「コンテンツはやっているもののコンバージョンから遠くてどう評価すれば…というお悩みも多く聞きます。“コンテンツの価値は何なのか?”という問いにもきちんと応えていきたいですね。」と月岡氏。「コンテンツの価値は、単にコンバージョンだけではないはずです。どのような指標を、どう評価していくのか。きちんとKPIを定め、そこを一緒に目指すパートナーとして当社を選んでいただけたら。」(月岡氏)
例えば、同社ではコンテンツの評価ポイントの一つに“再訪”があると考えているが、通常アクセス解析ツールでは分析が煩雑。そこでMIERUCAで簡単に閲覧できるよう機能実装した。「初回接触がコンテンツで、数日後に別のコンテンツに訪れている、というユーザー行動が生まれていれば、コンテンツの一つの価値となるでしょう。」(月岡氏)
こうした定期的な機能拡張もあってMIERUCAの導入企業は着実に増加している。「これまで漠然としていた“コンテンツの質”という基準に、一定の指針を提示できているのがご評価頂けているポイントの1つではないかと思います。」(月岡氏)
さらには、「MIERUCAの英語バージョン」の開発にも取り組んでおり、2016年秋にはアメリカのカンファレンスへの出展も決まっている。ファベルカンパニーの推奨する「ユーザーに評価される、価値あるコンテンツづくり」はこれから世界も視野に入れ、広がりを見せそうだ。
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日時:2016年9月9日(金) 15:55~16:35
場所:ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区神田駿河台4-6)
入場料:無料
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