音楽PV視聴はTVからYouTubeに
毎回、コンテンツがシェアされる理由を分析してきた本連載も3回目を迎えました。前回は、選挙期間中の政治コンテンツをシェア拡散視点で紐解きました(前回記事はこちら)が、今回はYouTubeの鉄板コンテンツ、音楽プロモーションビデオ(以下、音楽PV)について解説していきます。
音楽PVの歴史を振り返ると、1960年代頃、ビートルズがTVへの出演オファーをビデオで代替するために音楽PVを積極的に制作したことが始まりといわれています。
その後、米国MTVの興隆によって音楽とPVは切り離せない関係に発展しました。1990年代に入るとSpike Jonze、Chris Cunningham、Michel Gondryなどの新進気鋭の若手映像監督が、斬新なPVを次々と世に放ちしのぎを削るMTV全盛期を迎えます。広告やマーケティング業界に携わる方々の中で、音楽PVのクリエイティビティに感銘を受けてその道を志望した方も少なくないのではないでしょうか。ちなみに、僕自身もその口です(笑)。
この当時、日本においても民放のゴールデンタイムには、いくつもの人気音楽番組が存在しました。そうした音楽番組の中では、様々な人気アーティストの音楽PVが流され、それがそのままお茶の間に流通するなど、まさに音楽PVはTV主体のコンテンツでした。
しかし、時代の流れとともに、生活者が“新しい音楽を発見する”場所は、TVの音楽番組からWebへと移り変わり、音楽PVもその主戦場を徐々にYouTubeへと移していきました。今やWeb上で最もシェア拡散されるコンテンツカテゴリの1つが、音楽PVとなっています。
エンゲージメント数が高い謎の音楽PV
では、Web上でシェア拡散されている音楽PVとは一体どんな動画なのでしょうか。2016年8月14日から過去1年間にYouTubeにアップされた音楽PVの中で、エンゲージメント数※が高い上位TOP10を見てみましょう。
※エンゲージメント数:いいねやシェア、コメント、リツイートなどFacebook、Twitter、Google+での総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事やソーシャルメディア上における口コミなどの総数。
こうしてランキングを見てみると、Adele、ColdplayやJustin Bieberといった、日本でもお馴染みのミュージシャンたちが並ぶ中、「คนไม่จำเป็น」「ขอเวลาลืม」「แพ้ทาง」といった聞きなれない(というよりも、読めない)曲名やアーティストがランクインしているのが分かります。
なんと、YouTube上にアップされている音楽PVの中で、世界で最もソーシャルエンゲージメントしているコンテンツの年間TOP10にタイの音楽PVが3つも含まれているのです。