金魚以下のアテンション持続時間、どう振り向かせる?
では、こうしたアプリ上で動画マーケティングを行っていく場合、何が重要なのだろうか。菅野氏は「テキストや画像と異なり、そもそも動画は一定時間を独占しないと意味が伝達しないため、忙しいユーザーからよりシビアに判断されるフォーマットであると認識することが重要」と語る。というのも、スマホの登場で情報流通量が増加し、人間が一つのことに注意を向けられる時間は年々短くなっているからだ。
マイクロソフトがカナダで行った調査によると、2000年時点で人間の注意力保持時間は12秒だった。ところが2013年に同様の調査を行ったところ、8秒まで落ちていたという。これに対し、菅野氏は「ちなみに金魚が1つのものを見ていることができる時間は9秒ということなので、人間の注意持続時間は金魚に負けているわけです」と衝撃的な事実を告げる。
ただ、これは人間の集中力そのものが低下しているというより、「世の中に面白いコンテンツがあふれて、そのスイッチングコストが限りなく下がっているから」だという。指先ひとつで様々なコンテンツに自分の好きなペースでアクセスできる環境の中で、希少なアテンションを振り分けて動画に目を留めてもらうのにはどうすれば良いか。菅野氏は「ユーザーに奉仕するテクノロジー」「打率を上げるためのクリエイティブ」「低コストリアルタイムのメジャメント(効果測定)」の3つの重要性を挙げる。
ユーザーに奉仕するテクノロジーが重要に
まず前提として、無理やり動画を見せつけることは難しい時代。動画を届ける際のストレスを極小化する「ユーザーへ奉仕するテクノロジー」という概念が重要だという。FIVEでは、「動画読み込み時間ゼロを保証」「ユーザー主権のインターフェイス(ユーザーが視聴するかをコントロールできる)」「動画データの再利用による通信量の軽減」の3つをテクノロジーの力で実現し、ユーザーにストレスを感じさせることなく動画配信を行っている。
ただでさえシビアなアテンションをめぐる環境なので、たとえ3Gや128kbsの通信環境でも一瞬も待たせず、関心がなければ指先で飛ばせるコントロールを提供し、通信量も可能な限り抑えることに技術的にコミットしているそうだ。
次に重要なのが「クリエイティブ」だ。菅野氏によると、目に留まる動画には「4つの要素」が必要だという。その4要素については後ほど説明する。
そして成功する動画マーケティングに欠かせない最後のポイントは「低コスト・リアルタイムな効果測定」だ。動画広告に期待を寄せながらも、実施後の効果測定がなかなか進まないというケースは非常に多い。
その理由について菅野氏は、「媒体費のわりに調査コストがかかる、調査設計と分析に時間がかかるという要因があり、当たり前にブランドリフトを計測する環境になっていなかった」と語る。
「こうした課題を受け、*Moments by FIVEでは、リアルタイムに広告接触者と非接触者で動画接触によるブランドリフトの差分を比較分析する『態度変容調査機能』を自社開発し、動画広告配信時に提供しています。これが好評で、出稿する多くのクライアントが利用する機能となり、広告効果とユーザー反応の可視化が非常に気軽に実現するようになりました」(菅野氏)
同機能で過去に計測したキャンペーン全体では、これまで広告認知は30%から60%の範囲でコンスタントに上昇しているという。ブランド課題ごとに設定する好意度や購買行動の数値もリフトする事例は多く、フリークエンシーやクリエイティブとの組み合わせで集計した結果を提供している。毎回500から1,000サンプル程度が集まり、ターゲットユーザーの生の声を拾えるという点で、有効に活用できそうだ。