2020年までに、超小型衛星を50機打ち上げ
押久保:AxelGlobeとはどのようなプロジェクトでしょうか。
中村:2022年までに50機の超小型衛星を打ち上げ、毎日世界中を観測する情報インフラです。まず2017年に超小型衛星「GRUS(グルース)」を3機打ち上げ、少しずつサービスを開始していきます。
GRUSは、一般の大型人工衛星に比べてサイズが小さくシンプルなので、開発費用は100分の1で済みます。これだけ小さくても撮影できる画像の地上分解能は2.5メートル、撮影幅約60キロとかなりの高性能であり、画質でみても既存の地球観測衛星に引けを取りません。

ただ、いくら高性能な衛星を開発しても、1機だけでは物理的な制約から高頻度な定点観測ができません。AxelGlobeでは、衛星が50機あることで世界中どこでも毎日観測できることが最大の特徴で、これらの画像をディープラーニングなどの最新の技術を駆使して解析し、ビジネスに役立つ事例を作っていきます。
地球データ×宇宙データで、活用の裾野は無限大
押久保:実際の宇宙データの活用・分析は、電通さんおよび電通デジタルさんが担当するんでしょうか。
中村:電通さんたちのみが担当するというわけではないのですが、がっちり組んでお互いの強みを生かしつつ、新事業を創造していこうと話しています。「宇宙からの衛星写真データ」という未踏の領域と組み合わせ、イノベーション創出を目指したいと意気投合し、今回の協業となったわけです。
押久保:この協業が、この宇宙ビッグデータ事業にどのような付加価値をもたらすのでしょうか。
中村:いま、地上でミクロ的に見るデータは色々ありますが、地球外からマクロ的に見るデータはあまりありません。地上のデータに、宇宙のデータを加えることで、新たな発見や価値を生み出すのではないかと考えています。
電通さん、電通デジタルさんは様々な業種・業界の企業マーケティングを支援されていますし、宇宙ビッグデータ事業という新しいビジネスを創出していけるパートナーと考えました。
衛星画像データの活用については、先ほどもお話ししたように、米国を中心に農業・林業分野や経済予測で活用されています。AxelGlobeでは定点観測できるという利点を生かせば、より精度の高い環境、防災対策にも適用できるでしょう。また、交通網の流れを上から見ることで、流通・小売業界の海外市場における出店計画を効率化するソリューションも考えられます。