デジタルとアナログ、それぞれの特徴を掴み活用するべき
DMの効果については、日本郵便に入社する以前はデジタルマーケティングに携わっていた鈴木氏自身も驚いたという。日本DM協会が毎年発表している『DM利用実態調査』によると、DMの開封率は81%、受取意向率は77%、行動喚起率は24%、保存率は52%にも上る。
鈴木氏は「メールやデジタルをやっていた人間からすると、驚くべき数値。ただ、自分宛に送られてきた封筒を開かずに捨てるかというと、捨てない。Sansanの石野さんも言うように、DMの特徴の一つは保存率。半年後でも効果があるというのは、デジタルではありえない。デジタルはモーメントの積み重ねで、瞬間瞬間を捉えることに長けているが、DMはずっとストックされる」と語り、メールとDMという、デジタルとアナログの特徴の違いを解説した。
また鈴木氏は、上記の数値は全世代の男女の平均であり、この中で最も数値がいいクラスタは20代男性であると明らかにした。その開封率は、9割を超えるという。次いで数値が良いのは、20代の女性。同氏は、デジタルネイティブである若者にとって、手紙をもらうということがむしろ新鮮であるからではないかと、仮説を立てていた。
たとえば、MAツールでターゲティングを行い、デジタルネイティブの若者にDMを送付。リアルでのイベントに送客し、終了後はサンクスメールで商品を訴求する……。デジタルとアナログを組み合わせ、その時々で最も適したチャネルでコミュニケーションを図る。これまでの各社の意見を見ていると当然のことのように思えるが、実現できている企業は多くはないだろう。Sansanの石野氏も、今回の実験を通じてそのことを実感したという。
石野氏は、「当社もそうだが、IT企業の多くではCPAだCPCだと、常日頃から言われていることだろう。しかし今回の実証実験を通じて、効率を求めているだけではトップラインは上がっていかないんだなと、改めて感じた。きちんとユーザーを見て、デジタルとアナログを是々非々で組み合わせていけばよいのではないか」と語った。
最後に鈴木氏はデジタルとアナログについて、「デジタルに長けている人にアナログの知見がないケースが多々ある。逆もまた然りで、それぞれが分断されている。そこをなんとかしたいと思っている。デジタルは、コストの安さと拡散力が魅力。弱点は、瞬間で消えていってしまうことだ。アナログの中だと、DMはコストの高さが弱点だが、情報のストックという強みがある。それぞれの特徴をうまく摑み、活用してほしい」と語り、イベントを締めくくった。