「愛」と「戦略」と「信頼」で乗り切ろう!
あとは、運営体制をどう組むか、である。實川氏からは、ナイルがオウンドメディア運営を通じて得た知見に、コンテンツマーケティングを運営する企業、支援会社、成果を上げるオウンドメディア編集長などからの話を通じて導き出されたという、3点のキーポイントをあげた。
- “愛と戦略”を持つ担当者だけが成功をつかる
- 上長に必要なのは、“任せる勇気”
- “ポジティブな評価の発掘”が、取り組みを長持ちさせる

「ユーザー数を確保しながら、心を動かすコンテンツを作り続けるのは難しい芸当です。やれる人を発掘したら、その人に任せるべきです。運用担当者となる資質は、たとえば顧客や製品理解が深く、自社コンテンツへの矜持があることです。また、自身のサービスへの理解が浅いと判断した際は、営業や開発担当者などに話を聞いたり相談したり、深く理解する姿勢を持てる、社内営業力がある人です。運用者としてSNSへの感度が高く、マーケティング戦略に長けていることも求められます」(實川氏)
コンテンツマーケティングの担当者にはハイブリッドな素質が求められるが、複数人で担当したり、押さえるべき点を握った上でならパートナーとの連携も考えていいだろう。

ポイント2は、實川氏がパートナーとして相談される際に、特に多い内容の一つだと言う。
「もっとPRしてほしい、競合がやり出しているからウチでも、などと上司の斜め上からの指摘は、運用者あるある(笑)ですね。こうした介入が、意志決定のスピードを落とし、更新のハードルを上げて、コンテンツの尖りをなくします。つまらなくなり、ユーザーの心は動かされず、運用者の意欲も減退します。自らに権限がない状態で、大変なことをするほどつらいことはありません。“あの人ならできる”と決めた人がいれば、守ってほしい部分を決めておき、後は思い切って上長は任せましょう!」(實川氏)
ポイント3については、継続性への理解である。コンテンツマーケティングの特性上、短期的に一気の成果は出ないからだ。
「“作っていけるんじゃないか!”という感覚をつかみながら、長く続けていけることが重要です。先ほど上長は運用者に任せて、と言いましたが、運用者は役員クラスや決定権のある上司に味方になってもらう、味方につけることも大切です」(實川氏)

発信することが広報にもなるため、継続が副次的な効果を呼ぶこともある。
「“こういうコンテンツを発信する会社、いいよね”と採用の応募者数が増えたり、自社の取り組みをまとめたコンテンツが営業ツールとなったり、コンテンツ制作を通じて事業同士の横断的なやり取りが新たに生まれることもあるでしょう。ある企業では、実際の売り上げの見通しが立ったのが約3年後だったかわりに、運営後に採用の応募者数がかなり増えた、とも聞いています」(實川氏)

最後に、コンテンツマーケティングに必要な三つの言葉を提示して、セッションは締められた。必要な三つとは、「愛」「戦略」「信頼」である。
「改めて難しい取り組みだと思われた方が多いかもしれませんが、社内には“やりたい”と思う方は必ずいるはずです。簡単にできないからこそ、他社との差別化になります。ぜひ長期運用のための体制を構築してほしいと思います」(實川氏)