MAツール「Pardot」が待望の日本語化。その背景と狙いは?
セールスフォース・ドットコムの「Pardot」の日本語化が9月26日に発表された。「Pardot」は2015年から日本で提供が開始されたSalesforceのB2B向けマーケティングオートメーション(以下、MA)ツール。すでに国内でも多くのSalesforceユーザーへも導入が進んでおり、セールスフォース・ドットコムのプロダクトマーケティング ディレクターの田崎純一郎氏は、導入の進んだ要因として同社がこれまで提供してきたSFAとの相性の良さを挙げる。
「マーケティングオートメーションはSFAと連携させることで、その本来の価値を引き出すことが可能となります。このため、弊社のSFAであるSales Cloudをご導入いただいているお客様の多くに、シームレスに連携できるマーケティングオートメーションツールであるPardotをご採用いただいてきました」(田崎氏)
今回の日本語化に対し、同部署マネージャーの秋津望歩氏は、「Pardotの活用の幅を広げるための対応」と日本語化の背景を語った。
「Pardotはシンプルでわかりやすい操作性の高さから英語版のみでも導入が進んでいましたが、今回の日本語化にともない、さらに活用の幅を広げていただけるようになりました。マーケティング用語にあまり馴染みのない営業部門の方においても日本語化を機にまだまだ導入が進むと考えています」(秋津氏)
特に日本においてPardotは、世界と比較しても導入社数のスピードが最も早いこともあり、「全世界で15万社を超えるお客様に採用されている弊社が、今回、日本のためだけに日本語化を行いました。Pardotはすでに、それだけ多くの日本のお客様がいる、と捉えていただいていいと思います」と秋津氏。
今回のPardot日本語化にあたり、セールスフォースでは一部の既存顧客への先行導入を実施した。その内の1社で長年Sales Cloudを活用され、Pardotとも連携し活用しているのが今回取材を行ったコネクシオだ。同社は法人とコンシューマー向けに携帯電話やITソリューションの販売代理店事業を展開している企業。そんな同社にPardotの活用方法、また日本語版 Pardotの使い心地と今後の期待について話を聞いた。
商談化しなかった案件をどうするか?の課題を、Pardotで解決
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、自己紹介とコネクシオのビジネスについて教えてください。
菅谷:法人営業戦略部 マーケティング開発課の菅谷沙由里です。コネクシオでは、法人のお客様へビジネスで必要なITソリューションのご提案をしています。そこで、顧客管理としてセールスフォースのSales CloudとPardotを導入しています。
高久:同じく、マーケティング開発課の高久聖未です。菅谷と私は、お客様へSalesforceの各プロダクトをご提案する専門部署におります。リードの獲得からナーチャリング、ホットなリードを営業へ共有するという一連のフローをPardotで管理しています。
MZ:Pardotを導入する前は、どのように案件管理をされていたのですか?
菅谷:ExcelとSales Cloudで管理していました。展示会での名刺交換やお問い合わせで得られたリードに対し、電話やメールでフォローを入れています。その内容をExcelにまとめ、商談化に至った場合はSales Cloudへ登録するというフローでした。
しかし、商談化しなかった案件はそのままという状態が続いていたのです。せっかく興味を持ってお問い合わせをいただいたのに、その後のアクションが起こせないのは機会ロスであるという声が社内にありました。そこへPardotのご提案をいただきまして、課題が解決できると考え導入しました。
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Sales Cloudとの連携がPardot導入の決め手に
MZ:他社のMAツールと比較はしましたか。
菅谷:もちろん、比較検討はしました。ただ、Sales Cloudで営業・顧客管理をしておりましたので、シームレスにつなげることを重視してPardotに決めました。
高久:また弊社はお客様へ適切なソリューションをご提案するべく、幅広い商材を取り扱っています。たとえば法人向けのスマートフォンひとつとっても、お客様のビジネスに適した通信キャリア・機種・OSをご提案しています。
Pardotでは、お客様がどの商材に興味を持っているかについても、把握することができるのです。それがわかれば、私たちとしても注力していく方向性がわかります。またお客様から見た時に、興味のある商材や検討しているモノを提案してくれる企業として弊社を認識いただけるので、企業価値を高めることにもつながります。効率的にお客様へソリューションを提案できるというのも、Pardotを選んだ理由のひとつです。
Pardotの導入で、テレアポまでのナーチャリングが可能に
MZ:Pardotを導入し、どのような変化がありましたか?
菅谷:まず、展示会後のアクションが変わりました。これまでは展示会後にサンクスメールを送り、お客様の反応の有無に関わらず、追って電話をかけるというアプローチをしていたのです。
しかし、やみくもに電話をかけることは、時に商談化まで遠回りとなることもあります。そこでPardot導入後は、展示会後にどのようなステップでコンテンツをご案内するかを考え、メールを送るようにしました。
高久:具体的には、1度メールを送ったあと次のメールをいつ送るかという期間の調整をしています。コンテンツも複数用意しました。出展した展示会のテーマに関連するホワイトペーパーや、調査資料、商材の価格表・関連するセキュリティの情報など、ナーチャリングのステップに合わせて考えています。
MZ:ナーチャリングされ、顧客の興味を把握した上で、電話でフォローするように変わったということですね。
エンゲージメント機能の活用で、自動的にナーチャリングを実行
MZ:顧客へ送ったメールやコンテンツの反応は、どのように見ていますか?
高久:メール内のテキストやバナーのクリック率、配信後の開封率などを見ています。またPardotの「A/Bテスト」機能を活用しまして、効果の良い文章の内容や長さなどもチェックしています。メールはテンプレート化してPardotから送信ができますので、便利ですね。
菅谷:また、Pardotの大きな特長として、Engagement Studioを使って、お客様とのエンゲージメントを深めるプログラムを組める点が挙げられます。たとえばサンクスメールを送ったあと、5日間という期間を設定します。その間にアクションがあったお客様へはAというメールを送り、そうでないお客様にはBのメールというような分岐点を作ることができるのです。
MZ:前もってエンゲージメントプログラムを組んでおくことで、自動的にメールが送信されるのですね。
高久:お客様の興味に応じて、どのエンゲージメントプログラムでアプローチするかを変えています。対象リストに追加していけば、自動的に該当するプログラムのフローにそってナーチャリングができるようになっています。
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ページの閲覧をもとにスコアリング、顧客の検討状況を可視化
MZ:メール以外で何か特徴的な施策は行っていますか。
菅谷:Webサイトの訪問からも、お客様の興味がわかるような設定を行っています。資料のダウンロードページや価格ページを経由して、お問い合わせフォームまで閲覧されなかった場合などは、運用サイドへ通知が来るようにしているんです。
最終の検討段階に入られているのだなと仮定し、お電話でフォローすることで商談へつなげることができています。
MZ:Webサイトへの訪問履歴をもとに、顧客の検討状況を把握しているのですね。
菅谷:Cookieの情報が取得できているお客様に関しては、アクションごとにスコアが蓄積されるようになっています。ある一定のポイントを越えたら、ホットリードとして定義付けし、こちらからコンタクトを取るようにしています。
MZ:スコアリングの設定は難しそうですね。
高久:はじめはスコア定義を高く設定しすぎて、ホットリードが生まれないという時期もありました。また、商材が多すぎてスコアが分散されてしまうこともありました。今は、改善を重ねて適切なスコアリングができているかなと思います。
というのも、スコアリングカテゴリーという機能を使って、スコアの分散を防いでいるからです。商材をカテゴリーに分類することで、カテゴリー単位でスコアのポイントが加点されていくのです。すると、見ている商材はバラバラでもお客様はこのカテゴリーにご興味があるのだなということもわかるようになります。
MZ:具体的に商談が増えてきたという実感はありますか?
菅谷:はじめにお話をしました通り、私たちの課題は商談化に至らなかった案件をそのままにしてしまっていたことです。Pardotの導入後は、お客様とメールなどで定期的に接点を持つことで、改めてお問い合わせをいただくという実例ができてきました。
より使いやすくなったPardot日本語版、ユーザーの広がりに期待
MZ:今回日本語化されたPardotを使われて、どのような印象を持ちましたか?
高久:使いやすくなりましたね。特にマーケティング用語やPardotの機能用語などは、よりわかりやすくなりました。これまではSales Cloudは日本語で、Pardotは英語で使っており、瞬時に解釈ができないこともあったのですが、Pardotの日本語化によって、Sales Cloudとの連携についてもより深まってくると思います。Pardotの日本語表記は、慣れ親しんだSales Cloudの表記と合っており、その点もスムーズに日本語版を使うことができる理由の1つです。
菅谷:我々自身がSalesforceの製品の提案をお客様にすることもあるのですが、Pardotの場合「英語がわからないから使えないんだよね」というフィードバックをいただくことも多かったのです。日本語化になり、改めてご提案できる機会が増えると思います。特にこれからMAに取り組まれる方にとっても、日本語の画面によって障壁を下げることができるのではないでしょうか。
MZ:今後、Pardotをどのように活用していきたいですか?
菅谷:英語版で少しわかりにくく、また使っていなかった機能を、使いこなしたいですね。そのひとつに、グレードという機能があります。お客様を役職ごとや、業種、規模などの定性的情報をもとに見込み客の重み付けのできるグレードは、Engagement Studioに組み込むことでさらに細かい分岐をさせることができます。やはり決裁権に近い方への適切なアプローチはB2Bマーケティングにおいて重要なので、活用したい機能です。
高久:商材が多いことで作業に時間がかかっていたのですが、Pardotを使って自動化できることが増えてきました。また、日本語版Pardotを使えば、作業時間も更に短くすることができるはずです。そこで生まれた時間を、商談へ結びつくアクションにつなげていきたいと思います。
様々な視点からSalesforce Pardotの魅力に迫る本連載。第1回目となる今回は、既にSales CloudとPardotを連携して活用し、日本語化によりその活用の幅をさらに広げようとしているユーザー事例を紹介した。今後は、AIの活用事例、Pardot製品責任者のインタビュー、そして、有識者から見たPardotの魅力に関するトピックをお届けする。
コネクシオの事例についてより詳しく知りたい方に朗報
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