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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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データドリブン経営で躍進するオープンハウスの次の一手

2020年までにシステム基盤を構築

――具体的にどういう構想なのですか?

 テクノロジーを駆使して顧客情報や行動を的確に把握し、よりお客様に寄り添った営業をすることを目指して、それが可能なシステム基盤を2020年までに構築しようとしています。今まさに第一段階の、システムによる業務環境の整備が終わったところです。

 最初はGoogle G SuiteやiPhoneの導入、社内の決裁文書の電子化など、デジタルトランスフォーメーションとモバイルシフトを一気に進めました。経営陣の意思決定から導入まで約70日という速さで。やると決まればスピードあるのみです。次に、当時はアトリビューションマーケティングという言い方をしていましたが、オンラインで接触した潜在顧客の情報をDMPを含めてシステム連携し、営業担当者がアウトバウンドコールする、すなわちCRMとSFAの仕組みの構築に着手しました。これが整えば、ビジネスとしてぐっと力強く戦えるという見通しがありました。

――トップとの間での権限委譲は、難しくはなかったのでしょうか?

 こうした改革を進める際、ご指摘のようにトップとの合意形成は必須であり、大きいと思います。私の場合は、入社時に「活き金と死に金」という話を代表取締役社長にさせてもらいました。「無駄を徹底的に排除する分、売上に直結するマーケティング予算は文句を言わず使わせて欲しい、その代わり説明はすべて行います」と。それを社長が容認したことで、ほぼ私の判断で今まですべてのシステムやマーケティングの仕組み作りを決めてこられたのは、スピードと成果の両面において最大の要因だと思います。

発注寸前のSFAを白紙に社内組織の新設を決断

――その権限委譲の判断をされたトップも、さすがだと思います。

 当社は社長自身がいちばんマーケティング感覚を持っており、私が試用期間中に結果を残せなかったら、任せなかったでしょう。システムやデジタルマーケティングに興味本位で関わりたい経営者も多いですが、いちいち確認を取っていたら意思決定を遅くするだけです。年間で使った予算額が、一部上場企業の広告宣伝費やシステム投資費に照らして妥当なのかが把握できればいいのではないでしょうか。

 ビジネスでは、すべてにおいて結果が重視されます。基本的に売上を上げ、コストを下げることに収斂しますが、これに対してITもマーケティングも所詮ツールでしかありません。ただ、頭を使ってそれらのツールを活用することで、営業担当者が短時間で効率よく結果を出すことができる。昨今の働き方改革にも通じますが、ITを上手に使えれば、時間も場所も含めて常識的な拘束条件を解き放つこともできます。今、当社では営業担当者の社用車までIoT化し、動きの可視化と成果の把握、業務改善、コスト削減にも取り組んでいます。

――目指すゴールと、そこへ最も効果的に到達することをトップと合意しているから、スピード感があります。

 そうですね。その合意は、社内の各部門とも同じです。システム面でいうと、営業やマーケティングがやりたいと思ったことをシステム部門に事細かに説明し、それを外部に伝えて作ってもらうのは、オーバーヘッド(間接的な処理や余計にかかる負荷)でしかない。たとえば私が入社したとき、実はまさに外部にSFAを発注するための要件定義を終えたところでした。ですが、その時点で既に予算を超えそうで、突然私がこの予算内でどうしても実現しなければならない不退転の状態に追い込まれたのです。考え抜いた挙げ句の策は、発注を白紙にして、すべて内製することでした。

システム内製の体制を1年半で整える

――そうだったのですね。でも、どうやって?

社内にエンジニアチームを作るしかないですよね。このあと整備するCRMやその他のシステムを考えても、長期的には内部にチームを持つほうがコストを抑えられるし、前述のオーバーヘッドの問題もクリアできる。スピードもいちばん速いはずです。そうはいっても、当然ですがエンジニアにはかなり高いレベルのスキルセットが必要なので、急遽国内で探したものの、見つかりませんでした。そこで、東南アジアで採用することにしました。社長に「明日から行ってきます」と言い放って。とてもピンポイントな求人なので広告を出すという選択肢は最初からなく、普通なら人材エージェンシーを使うのでしょうが、それもやっぱり間を挟むので見極めが十分にできないし、コストもかかるので、使いませんでした。可能な限り直接交渉、直接取引が当グループの風土であり強さの源です。

 社内にエンジニアチームを作るしかないですよね。このあと整備するCRMやその他のシステムを考えても、長期的には内部にチームを持つほうがコストを抑えられるし、前述のオーバーヘッドの問題もクリアできる。スピードもいちばん速いはずです。

 そうはいっても、当然ですがエンジニアにはかなり高いレベルのスキルセットが必要なので、急遽国内で探したものの、見つかりませんでした。そこで、東南アジアで採用することにしました。社長に「明日から行ってきます」と言い放って。とてもピンポイントな求人なので広告を出すという選択肢は最初からなく、普通なら人材エージェンシーを使うのでしょうが、それもやっぱり間を挟むので見極めが十分にできないし、コストもかかるので、使いませんでした。可能な限り直接交渉、直接取引が当グループの風土であり強さの源です。

――東南アジアで採用候補の人を自力で探した、ということですか? それはちょっと耳を疑う展開です。

 これまでの人脈が頼りでした。縁のあった方々に、こういう人がいないかと聞き込み、紹介してもらいました。これから会社の大事なフェーズを一緒に働くのだから、直接会って話すことが大事という想いで動きました。普通に考えたらどうやっても無理だと思うことをひっくり返すには、気合いしかない。テックカンパニーにあるまじき発言かもしれませんが、ビジネスにはときに普通では対応できないことも起こりますよね。

 日本にいる間に段取りを調え、1週間の滞在で60人ほどと会いました。エンジニアに伝えたのは、まっさらなキャンバスに、ありとあらゆる技術を駆使した不動産のクラウドプラットフォームを作るというビジョンです。

 エンジニアのモチベーションという観点において、自分が作ったものが役立っているのかを知ることができるのはとても重要です。ビジネスの最前線にいる営業担当と話す機会も含めて環境を整える。あなたが作ったプログラムが社内でどのように使われ、売上にどうつながるか、全部フィードバックするからジョインしないかと話しました。

 日本企業で成長したい、次世代のサービスをオープンハウスで作りたいという気概があり、スキルの要件を満たす技術者を5人ほど採用し(現在は15名まで拡大)、今も我々のグループの一員として現地で働いてもらっています。適宜テレビ会議などを使えば、遠隔地のデメリットもそう感じません。

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テレビCMも営業支援ツール

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/27634

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