テレビCMも営業支援ツール

――なるほど。そうして、SFAも他のシステムも内製が可能になったと。
SFAはCRMと紐付けたシステムとして、半年ほどでリリースしました。お客様の契約に至るまでのカスタマージャーニーのデータ、土地の仕入れから住宅の販売、アフターケアまでの全工程にわたるバリューチェーンデータをすべて紐付けて把握できるシステムが構築できました。今から振り返ると、不動産業界におけるSPAビジネスモデルはユニークなものなので、既存パッケージをいくらカスタマイズしても当社が必要とするシステムは実現しなかったでしょう。
内製体制のチームビルディングには1年半ほど要しました。開発スピードも、現場との連携も、改善を重ねてきました。現在、社内で使用するシステムやアプリに関しては、6〜7割くらいできたらリリースする方針をとっています。現場で使ってもらい、フィードバックを受けながら進化させています。使われないものが出来上がったとしても、ほとんどの場合、なぜ使われないのかを社内でクイックレビューして最適化してしまいます。
並行してデジタルマーケティング室でも人材を育成していましたが、今は一段落して組織を解体し、各事業部や拠点に戻しました。戸建事業部とマンション事業部に関しては専属のデジタルマーケティンググループを改めて設置し、日々成長させていますし、拠点ではそれぞれの規模によって、マーケティング部や営業部の中にデジタル広告のメンバーやグループを置いています。
――コンバージョンに至るまでのデータをすべて把握可能になったとのことですが、織田裕二さんの犬の着ぐるみや「オペン・ホウセ」が印象的なテレビCMの効果は、どう捉えているのですか?
当時のマス広告の目的は企業認知でした。その点では、調査でも肌感覚的にも一定の手応えを得ています。ただ、認知といっても広くあまねくではなく、我々の潜在顧客になり得る「東京で家を持ちたい人」に響くクリエイティブと枠を吟味しています。具体的には、ローンが30年ほどかかることを考えると、20代後半から30代あたりがコアになりますね。
先ほどお話ししたとおり、テレビCMもビジネスの一つのツールです。当社では、営業支援の手段です。「オープンハウス」という言葉は、住宅を見学用に開放するという一般用語でもあるので、社名をただ推すだけでは現場であまり機能しなかった。そこで「オペン・ホウセ」を出しました。営業担当者がお客様と実際にお会いする現場で「あの“オペン・ホウセ”の」といって伝わるなら、それで十分ですから。
――創業20周年を機に、2017年4月に放送を開始した大谷翔平選手が登場するテレビCMも話題になりました。メジャーへの挑戦や二刀流という点から、“常識を覆す”という意味で御社の姿勢と重なります。
はい。表現方法は異なりますが、先の「オペン・ホウセ」のテレビCMと同じく、常識を覆すという一貫したメッセージがあります。ちょうど米国の物件を日本の顧客に販売する新規事業も発表したタイミングでもあったので、その意気込みも含まれています。
上流から下流まで効率化と成果の拡大を徹底
――そういうロジカルな背景があったのですね。
ええ。顧客をすべてデータで追えるシステムが整ったこともあり、テレビCMに関しても検索誘導のキーワードを検証し始めています。最初からいろいろ盛り込むと、効果の有無を厳密に判断できません。どのLPにつなげるのが最適か、仮説の検証もようやく意味がある段階になったのが今なので、非常に楽しみにしています。
――テレビCMだけでなく、すべての活動で営業支援という視点がぶれない点が印象的です。構築し得る最高のシステムで、データを最大限に活用するという姿勢も極めて明確ですね。
今まさに、バリューチェーンの上流から下流までを一気通貫して見られる体制が整いました。いわゆる不動産の営業というと、ホワイトボードでのアナログな進捗管理が浮かびますが、当社ではデジタルトランスフォーメーションにより各段階にブレイクダウンした明確なKPIを見据えています。それを毎週の経営会議で確認し、少し異変があったらすぐその場で仮説と打ち手を考え、1週間でも回してみる。結果をまた数値で判断する。その積み重ねでもっと業務効率化ができますし、浮いたリソースは顧客理解や当社の強みであるデザイン性にも再分配できます。
当社が土地を調達してから顧客に引き渡すまでの期間ずっと、金利がかかっています。この事業期間を1日でも縮めて汎用化すれば、大幅なコストダウンにつながりますし、SPAモデルにおいては、さらなる価格競争力へとつながります。データが利益を作り出す、という屋台骨の考え方がそこにあります。この業態の特性とテクノロジーの力を駆使して、次の飛躍に向けデジタルディスラプションのオープンハウスと認識していただくべく、さらに勢いよくビジネスを推進していきます。
