お客様との繋がり、Customer Engagementの構成概念を理解しよう!
今回紹介するのは米ジョージア州立大学のクマー先生とその他5名の先生方が2010年に執筆された論文で、前回のモバイルペイメントの論文同様7年前のものだ。彼らは顧客とのエンゲージメント価値の構成要素として4つのポイントを挙げている。
- Customer Lifetime Value(CLV):お客様の購買行動から得られる顧客生涯価値。実務家にはLTV=お客様一人あたりから得られる生涯売上として知られている概念。
- Customer Referral Value(CRV):お客様がクチコミをしてくれることによる新規顧客獲得の価値。
- Customer Influencer Value(CIV):見込み顧客や既存顧客に対して購買行動やブランド態度に影響を及ぼすような行為をお客様が行うことによって、購買増加や利用拡大に貢献する価値となる。
- Customer Knowledge Value(CKV):お客様から知識やフィードバックを得ることが、サービス改善や商品開発に貢献する価値。

これら4つの構成要素のうち、企業にとっての金銭的価値が高く、購買行動によって生まれるのはCLVだ。我々は常にここに注力しがちで、今までは荒っぽくいえばCLVがあれば良い、売上市場主義だった。ここしか見えていなかったわけだ。
一方でその他の3つの項目CRV、CIV、CKVは一見売上には直接貢献しないように見える。しかし、この3つの項目こそが、先述したSNS等によるお客様との繋がりを可視化するうえで重要だということは、デジタルマーケティングに携わる人は容易に理解できると思う。
CRVが高いお客様は積極的にクチコミを行うことでたくさんの友人、知り合いを企業にもたらし,新規顧客獲得をサポートしてくれる。つまり間接的な効果として売上に貢献しているわけだ。
次にCIVはお客様自身が見込み客やすでにそのブランドを好きなお客様に対して、そのブランドの良さという「情報」を発信することで売上に間接的に貢献している。インスタグラマーの自社ブランド商品の投稿などはその典型だろう。見込み顧客に対して、自分のお気に入りブランドを自ら紹介するわけだから、かなり強い影響があると言える。
もちろんこの行為は企業側が「お友達紹介キャンペーン」のような施策を用意して行うこともできるし、そのようなことをしなくても、「家具どこで買ったらよい?」と聞かれて「無印で買えば?」なんて会話も、そのコメントを発信する人と受ける人との関係性によっては強い影響があるだろう。
CIVは見込み顧客と既存顧客の両方に情報発信することで、ポジティブな影響を及ぼすことができる。まさに「ブランドが好き(必ずしもたくさん買っているかどうかはわからないが)」というコミュニケーションをSNS上で行うことや、自分の素敵な生活シーンに特定のブランドや、サービスを埋め込むことで、お客様が、ブランド価値向上と宣伝をしてくれているわけだ。
最後にCKVだが、無印良品のくらしの良品研究所が行なっている「お客様とのものづくり」や米国のスターバックスが展開するお客様の声からサービス改善を行うMy Starbuck Ideaのような場所をイメージすると良いだろう。
企業の製品・サービス、改善やイノベーションに積極的に寄与するお客様の存在は企業にとって大切な財産。まさにお客様との価値共創も売上と同様にお客様と育むべき重要なエンゲージメント要素といえるだろう。