なぜIMJはキャリアアップにつながるのか
こうしたプロジェクトの進め方を通じ、スキルを磨いたIMJのディレクターは、「言われたことをやるだけでなく、本当に成果につながる方法を親身に寄り添って考えてくれる」とクライアント企業からの評価も高い。クライアント自身もまだ気づいていない真の課題を見つけだし提案を繰り返す中で、時にはクライアントとの摩擦が生じそうになることもあるそうだ。
実際、大塚氏は、ディレクターには常々「クライアントの言っていることがすべて正しいと思うな」と発破をかけているという。なおかつ、そうした「摩擦」があったクライアントとは、お互いをよく理解することができるため、5年10年と取引が続くロイヤルクライアントとなるケースが多いそうだ。クライアントとの本気のやり取りは、ディレクターとしてのプロジェクト遂行能力を大きく伸ばすことだろう。
IMJでのディレクター経験がキャリアアップにつながる理由はこれだけではない。それは冒頭に述べたとおり、プロジェクトの「成果」にコミットするという立場でキャリアが積めることだ。
たとえば中小のプロダクションでも、確かに営業や進行管理も含め、いろいろな役割をディレクターに求める傾向がある。裁量が大きいことで面白さややりがいもあるが、案件を回していくことにかかりきりになり、具体的に施策の成果を上げるために効果検証を繰り返して改善していくという時間がないことも多い。
IMJの場合、クライアントのデジタルマーケティングにおけるパートナーとして、戦略立案から実制作、その後のPDCA運用まで関わる立場にある。「改善や成果につながる知見や専門性を高められる」というフィードバックをキャリア採用のディレクターから受けていると大塚氏は語る。
アクセンチュアとのシナジーで、より戦略的な経験も
IMJは2016年7月にアクセンチュア インタラクティブのグループに加わった。これはIMJのビジネスやプロジェクトにどのような化学反応を及ぼしつつあるのだろうか。
大塚氏はこの問いに対し、「アクセンチュアとのチームワークによって、同社が得意とする企業戦略や組織づくりなどの知見を活用し、我々が思い描くデジタルマーケティングを実現するために、クライアントの経営層レベルに参画していただいてプロジェクトを進めることも増えてきました」と答える。
一部には、「アクセンチュアのコンサルティングプロジェクトから、ブレイクダウンする形で、個別のデジタルマーケティング案件が発生するのではないか」という誤解があるが、そういうケースはほとんどなく、お互いの得意分野を活用して、より成果に貢献するという立場でプロジェクトを進めるそうだ。
たとえばあるプロジェクトの場合、別の企業がWeb制作・運用を行っていたが、複数の関連部署から寄せられるさまざまな要求を順次こなすだけで、戦略的な運用ができていなかったケースがあった。
この案件については、社内のさまざまな要求に優先順位を付けて、戦略的に進める専門組織を、クライアント企業の中に持つことが必要だとIMJのメンバーは考えていた。そこで、IMJのアイデアをもとにクライアント企業における組織作りについての提案をアクセンチュアから行うことで、新たにIMJが運用担当を担うことになったという。
こうした例は枚挙にいとまがない。デジタルマーケティングを戦略的に回していくには、「デジタル事業部」などの一部門だけでなく、クライアント企業の営業部門や商品開発部門など、さまざまな関連部門の協力をとりつける必要がある。
デジタルマーケティングを知り抜いたエージェンシーと企業変革に強みをもつ戦略コンサルティングファームがタッグを組むことで、一般的なデジタルエージェンシーでは対応しきれなかった、組織改変まで含めた大きなプロジェクトを動かすことができるのだ。
「デジタルマーケティング」はもはやWeb上のコンタクトポイントの最適化にとどまらず、デジタルによる顧客体験の最大化を目指すものになりつつある。デジタルエージェンシーにも今後はより事業戦略や組織戦略など企業の経営課題にまで食い込んだ提案能力が求められるようになるだろう。つまり「Webディレクター」から“Web”を取った別の呼び方の職種へと進化していくだろう。
事業会社は、「エージェンシー」「制作会社」「戦略コンサルティング」が渾然一体となった新しいソリューションを待望している。IMJはアクセンチュアと組むことで、その新たな市場を開拓しつつある。そこには、既存の枠には収まらない、野心を秘めたディレクターにとって格好の挑戦の場が用意されていることだろう。