※本記事は、2018年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』26号に掲載したものです。
定額制への転換の背景
「Photoshop」や「Illustrator」をはじめ、アドビ システムズがソフトウェアの定額制サービスを開始して丸5年が経ち、ユーザーの間にはすっかり定着した感がある。当時、その大きな転換はセンセーショナルで、早々にパッケージ販売を取り止めたことにもインパクトがあった。この転換の背景には、主に2つの理由があったという。
ひとつは、スピードだ。以前のパッケージ販売の時代には、顧客に新しいバージョンの製品を届けるのに約2年を要していた。一方、定額制に改めてクラウドを介した配信を行うと、既存製品と新製品の両方で、顧客に自社の最新技術をより頻繁に届けられるようになる。このスピードを最大限に速めたいという思いから、パッケージ販売による永続ライセンスモデルからの脱却を考えたという。
もうひとつは、安定した収益モデルへの転換だ。パッケージ販売の時代から、同社製品への顧客の支持は厚かったが、新製品を発売した際に既存ユーザーが必ず買い替えてくれるかというと、その保証はない。もちろんサブスクリプション型でも解約は可能だが、やはりこうした契約形態のほうが、より定期的で予測可能な収益を見込めるといえる。このビジネスモデルの転換を通して、会社を成長させ、これまで以上に幅広い業界に3つのクラウド製品、「Adobe Creative Cloud」「Adobe Document Cloud」「Adobe Experience Cloud」を届けていきたい意図があった。