デジタル出身のブランドマネージャーの台頭

――広告主側で視聴率以外のデータを取得して、いざメディアのプランニングに活かそうとすると、なかなか代理店の理解が得られずに事が進まないと伺ったことがあるのですが、それは日本だけではなく海外でも同様のことがあるのでしょうか。
劉:代理店にほぼメディアプランニングを丸投げしている場合は、なかなか一筋縄ではいかないこともあるでしょうね。
我々としては、視聴質のデータの価値を伝え、そのデータの活用が広告主だけでなく彼らにとってもメリットになることを伝えていくことが重要だと認識しています。今でも啓蒙活動を行うと同時に、実際のトライアルの中で効果検証を行い、色々なカンファレンスで我々の研究成果を発表したりしています。
――臭い物に蓋をするというか、不都合な真実が明らかになるのでデータを見たくないというような方も、いらっしゃるのでしょうか。
劉:そうですね。これは国の問題というよりは、世代の問題でしょうね。今まで伝統的なメディアにしか触れてこなかった方は、データにあまり触りたくない、できるだけデータ抜きでプランニングをしていきたいという方も確かにいらっしゃいます。
しかし最近のトレンドとしては、デジタル出身の方がブランドマネージャーになってCMOになるという流れがあります。そういう方は、データドリブン、ファクトドリブンでのプランニングをしていきたいとなり、視聴率以外のテレビのデータに注目する事例が多くなっています。
広告主側だけではなく、代理店や放送局の中でもこのような動きは起きています。世代交代が進めば、デジタル側の常識をテレビにも持っていこうとします。デジタル施策では重要視されていたビューアビリティの概念が、なぜテレビにはないのか、必要だよね、と。
日本においても時間の問題だと思います。ネット広告費の市場規模は、4、5年後にはおそらくテレビと同じになるでしょう。そうしたらデジタル世代の人間がテレビの良さに改めて着目し、デジタル的な手法でテレビも運用する時代に入っていくのではないでしょうか。

劉:テレビの一番の良さは、やはりリーチが取れることです。デジタルではOne to Oneコミュニケーションのトレンドがありました。それをそのままテレビに持ってくると、テレビの良さが失われてしまう。とはいっても、年齢・性別だけのセグメントでは粗いんじゃないかと……。
そういった議論の中で、我々のデータとGRPのデータを掛け合わせて、新しい指標を算出し、番組の一覧を並び替えるといった新しいプランニングの取り組みも始まっています。ターゲティングの精度を増しつつ、リーチも担保するのです。
――最後に日本の広告主、メディア、代理店に向けて、テレビの施策にもデータドリブンに進めていくアドバイスをいただけますか。
劉:テレビのデータの活用が広まると、テレビのポテンシャルが改めて明確になります。具体的には、共視聴(複数人で画面をみること)、大画面で100%表示されることなどですね。今まではテクノロジーやデータの整備が遅れていたため、テレビ本来の良さが伝わりきれていませんでした。我々のデータを活用いただくことで、本当に質の良い番組や広告が正しく評価され、取引される世界を共に作っていければと思います。
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