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「デジタルで人を幸せに」 電通デジタルが進む2018年とその先

電通と両輪での動きをさらに強めていく

――なるほど。その自転車がまさに走り出したところという状況ですね。

山口:そうですね。クライアント企業には提案の仕方以上に、ビジョンの部分で話し合えるようになったことが大きいです。我々としては、単に広告やプロジェクトを都度提案していくのではなく、お互いのビジョンに共感して、長く併走できる関係性を築けるのが理想です。ビジョンから共有できれば、今すぐは実現できないことでも、未来を見据えて話ができる。それは、デジタルプラットフォーマーやデータホルダーといったパートナー各社に対しても同じですね。当然、電通グループのインナーにも大きな効果があると思っています。

――グループ全体に関わるビジョンであるメソドロジー開発のきっかけとなった山口さんが、電通デジタルのトップに就任されたことは、電通グループにおけるデジタル領域の重要性を示していますね。

山口:いろいろと経営陣に訴えていたときには、まさか電通デジタルのCEOになるとは思いもしませんでしたが、重要性というのはご指摘のとおりです。これからますます電通との両輪での動きを強化すべく、電通の営業部隊であるビジネスプロデュース局の2,000人強に、デジタルトランスフォーメーションに向き合うための様々なサポート、たとえば教育の機会を提供していくのも我々の責務です。

業界における課題の議論を日本でも活発に

――では少し、広く業界の課題と対応についてうかがいたいと思います。昨年は日本でもネット広告の透明性と信頼性の問題が大きく取りざたされました。これらにどう取り組まれていますか?

鈴木:以前からの取り組みだと、信頼性の高いプレミアム枠を提供する電通プライベート・マーケットプレイスの提供がありますし、昨年には電通グループとMomentum社、インテグラル・アド・サイエンス社(IAS)とともに、アドベリフィケーション推進協議会を設立しました。両社とは具体的なサービス提供のほか、協議会として調査研究や情報共有に努めていきます。

 これらの問題は何も昨年始まったわけではなく、クライアント企業も早くから気づいていた方々は不確かなネットワークには出稿しないなど対応されていたと思います。良心に欠ける事業者を100%排除するのは難しいですが、可能な限り盤石な体制とサービスを整えているところです。

山口:先ほど鈴木がトップファネルでのアプローチにこそ強みがあるとお話ししましたが、一方でこれまでは我々もCPCやCPAという刈り取りフェーズばかり追求してきた部分があります。もちろん、今後もそれはデジタルが担う重要な機能として注力しますが、今後はファネルの様々なプロセスにおける安全性を追求していきます。

 この問題に限りませんが、自戒を込めていうと、常に欧米発の議論に押されてやっと取り組むといった傾向は日本の残念なところです。今後は日本でも、業界で議論をもっと活発にしていかなければいけないと思っています。以前から問題の本質を理解している人は多いのですから。

情報の受け手も、自社で働く人も幸せに

――他に注視している課題などは?

鈴木:これもEU圏で先行していわれていますが、これだけデータがあふれる時代、データは一体誰のものかという議論が大きくなっています。デジタルプラットフォーマーが購買データをはじめ膨大なユーザーデータを持つようになる一方、広告主企業も顧客の一次情報の蓄積へのニーズを高めています。当然、ユーザーのデータはユーザーにデメリットがあってはいけません。

 むしろ、本当にタイミングよく欲しい情報を届けてくれるなら、ユーザーはみずからデータを提供するようになっていきます。そもそもデジタル自体、インタラクティブであることが大きな特長なのに、一方的に情報を発信して特定の指標を上げることが目標になっているというのは少しおかしな形であるのかもしれません。その点でも、PDMはCookieをベースにしてきたアプローチから一人ひとりの“人”へ有意義な情報を届けることを目指しているので、PDMの推進によって解決していく考えです。

 当然、これまで直接ユーザーデータを積極的に持たなかったクライアント企業による一次データ取得のニーズも高まっているので、その部分もPDMをベースに支援していきます。そのためにも、ユーザー自身が喜んで情報を提供してくれるのはどんな状況なのか、考えていく必要がありますね。

――多岐にわたるお話、ありがとうございました。御社では新たな体制への移行とともに「デジタルで人を幸せに」というメッセージを掲げられています。最後に、これにかける思いをお聞かせいただけますか?

鈴木:人の時間は有限ですよね。誰もが、その時間を有意義に使いたいと思っています。デジタルは本来、そうした効率化が得意ですし、使い方次第で人を深く理解し、ひいてはクライアント企業とその顧客との間によりよい関係を生み出すこともできる。特にこれから人口減少を迎える中、顧客一人ひとりとの関係性の価値はますます大きくなります。それを築くお手伝いを通して、人を幸せにすることを実現していきます。

山口:同感です。付け加えるなら、人の数が限られるというのは当社で働く社員についてもいえることです。やりたいことは山ほどある、できる状況も整っています。クライアント企業が納得する高いパフォーマンスを返しながら、でも絶対に一人ひとりの労働環境を損なうことがあってはいけません。試行錯誤しながらですが、その両立には経営側として諦めずに取り組みます。

 今、当社には、アッパーファネルも含めたソリューション提案にチャレンジしたい、電通デジタルなら他社でできない仕事ができる、とやる気のある人が次々と入ってきてくれています。既存のメンバーを含め、働いている人を幸せにすることも重要視して、この会社だから来たという人を増やしたいと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/28259

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