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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マスとデジタル、「コンテンツの違い」はどこにあるか

――そこからどのようにデジタルマーケティングのキャリアを積まれたのでしょうか。

鈴木:2012年に広告作成部から事業部へ異動し、ブランドマネージャーを2年ほど経験しました。異動は青天の霹靂でしたが、とにかくブランドマネージャーとして必死に仕事をしました。

 当時、お客様との接点をもう少し改善したくて、ブランドサイトからECへの送客に取り組みたいと考えたのですが、そこでデジタルの知識がほとんどないことに気が付いてしまいまして……。自分でも「このままではいけない」と強く認識しました。

 ブランドマネージャーとして経験を積んだ後、広告作成部に戻るときに、「広告作成部とデジタルマーケティングセンターを兼務したい」とお願いしたんです。これからは広告作成部でコンテンツ制作にもコミュニケーション全体の設計にも「デジタルの知識が不可欠」だからと。

――なぜデジタルの知識が不可欠と考えたのでしょう?

鈴木:コンテンツ制作の面から言えば、従来のマスコミュニケーションのコンテンツがありますよね。それに加えお客様との接点を考えると、「やはりデジタルのコンテンツも企画立案できないと駄目だな」というように、デジタルの存在感が大きくなっていたんです。そこで広告作成部で、コンテンツに関する知識や知見をためると同時に、デジタルマーケティングセンターで、デジタルについての知見を学びたいと考えました。

――たとえばマスコミュニケーションの代表格であるテレビCMと、SNSなどのデジタル施策では、コンテンツ制作においてどのような違いがあるのでしょうか。

鈴木:ひとことで言えば、マスコミュニケーションは「最大公約数」で、デジタルコミュニケーションは「あなたのため/パーソナライズされている」という違いがあると思います。この違いを最も求められるのが、コンテンツ作りです。

 マスでは最大公約数の価値を伝えていったほうがいい。たとえば「ソフィーナ プリマヴィスタ」というブランドでは、「−5才肌」というコピーで最大公約数が共感できる価値を伝えてきましたが、デジタルではその価値を個人に向けて届けることが必要になります。

 「−5才肌」が、その個人にとってどんな価値があるのか。たとえば「若々しく見える」「素肌が健康そうに見える」「徹夜でも肌がイキイキと見える」といったこれらのどの価値が響くのかは、お客様によって変わってきます。最大公約数の価値を、自分ごととして考えられる「あなただけの価値」として届けるのがデジタルだと思います。

デジタルマーケティングが難しいと思われる理由

――お話をうかがっていると、マスマーケティングでコンテンツを制作していたからこそ、デジタルマーケティングの本質をすぐに見抜き、現在のデジタルマーケティング部のトップになられた感がありますね。

鈴木:デジタルの世界に飛び込んで1年数ヵ月経ちましたが、十分に理解できているかどうか……。最初のころは「なぜデジタルマーケティングは、マーケティングの前に『デジタル』が付くのか?」という疑問をずっと抱いていました。「雑誌マーケティング」や「テレビマーケティング」とは言わないのに、なぜデジタルマーケティングだけ、こう表現するのだろう、と。

――確かに、考えてみればおかしな話ですよね。

鈴木:昨年いろいろなセミナーや勉強会に参加させていただいて少しずつ見えてきたことがあります。それは「デジタル」を4つの側面から捉えることです。

デジタルの4つの側面

  1. メディア
  2. デバイス
  3. テクノロジー
  4. データ

 第1にあるのは、メディアとしてのデジタルです。広告媒体もそうだし、ブランドサイトもSNSも、ECもアプリもメディアです。この面だけでデジタルを捉えると、先ほど出たように「雑誌マーケティング」「テレビマーケティング」という用語がないのはおかしい、となるわけです。

 現在はメディアとしてのデジタルの幅は広がっているのではないですか。デジタル放送しているテレビも一種のデジタルメディアですし、電車のサイネージもそうです。将来的には、スマートホームで家自体がメディアになるという見方もできます。

――おもしろいですね。他の3つを教えてください。

鈴木:第2にデバイスがあります。スマートフォンやタブレットはもちろん、昨今のIoTの高まりを受け、センサーやウェアラブルデバイスも注目されていますね。先ほどのスマートホーム自体がデバイスになるという可能性もあるでしょう。

 第3にあるのは、テクノロジーですね。特にデジタルテクノロジーは、新しいデバイスとメディアを次々と登場させるので、結果として「めまぐるしく変化している」と映るわけです。だから余計に難しく感じさせてしまう面もあると思います。

 この3つのメディア、デバイス、テクノロジーを人が使ったり接触したときに、データとして必ず残ります。つまりデータがデジタルの第4の側面です。

 この4つの側面からデジタルを捉えることで、「デジタルはわからない」と思っている方もデジタルマーケティングにおける知識が整理され、理解が進むかと思います。

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重要なのは顧客理解の先にある仮説と提案

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/28412

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