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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

テレビのビッグデータを知る(後編)

視聴ログとは?

――回答協力:インテージ Life Log Data 事業本部 クロスメディア情報部マネージャー 山田 護氏

ネット結線テレビから収集する視聴ログ

――御社では、テレビの視聴ログを提供されています。視聴ログという概念について、また調査方法についてうかがえますか?

 デジタルメディアでは、ユーザーの行動ログがマーケティング施策に活かされていますが、昨今ネットに結線されたスマートテレビの普及にともない、テレビ視聴においてもログデータの取得が実現しています。テレビの視聴ログとは、一言で言うとリモコン操作ログで、いつどんな操作が行われたかをネットを通じて収集しています。もちろん、勝手に収集されるわけではなく、テレビメーカーがマーケティング利用の許諾をとって収集しています。

 当社のMedia Gauge TVは、全国のネット結線されたテレビ61万台、録画機58万台(2018年2月時点)から収集され、構造化されたスマートテレビ視聴ログをマーケティングデータとして提供しています。複数のテレビメーカーから集めているため、メーカーの偏りを抑えており、地デジ以外にBS、110度CSの視聴行動も15秒単位で把握できます。全国47都道府県のテレビ視聴傾向やタイムシフト視聴の実態を、市区町村別のレベルまで捉えられます。

――視聴ログは、広告主および放送局のマーケティングにどのように活用されていますか?

 広告主のマーケティングは、デジタル広告の増加にともない、詳細なターゲット設定やリアルタイムでのレスポンスを求められつつあります。それにともなってテレビでも視聴率だけでなく、より生活者に近い生々しいマーケティングデータのニーズが高まっています。視聴ログは、そのニーズに合致したデータのひとつです。

 活用法として、たとえばプランニング時なら、都道府県別・CS・BSなどの細かい単位の視聴傾向を把握することで、今まで価値がわからず出稿してこなかったチャンネルの媒体ポテンシャルがわかりますし、過小・過大評価の適正化にもつながります。

 事後の検証としては、たとえばダイレクト系の自社で売上を細かく把握できる会社では、放送後の売上を放送エリアごとに分析し、各エリアのテレビCM枠の力や商品力・コンテンツの鮮度を可視化できます。それ以外の広告主も、小売り売上データや、飲食、アパレルなど店舗の売上データと、実店舗商圏ごとの視聴ログを組み合わせて、商圏売上へのテレビCMの寄与を検証することができます。現在、こういったエリアマーケティングへのニーズが特に高いです。また最近は、広告取引にタイムシフトが加わることになったため、まだ実態を把握しきれていないタイムシフトの特徴把握にも使われています。

 一方で放送局では、視聴者が少なく視聴率が調査しきれないローカル局、CS、BSなどで、視聴率と同じような使われ方をしています。県民性による趣味嗜好の違いや、チャンネル数が少ないため大都市圏とは違うチャンネル争いがあったりするので、編成や番組制作への活用や、自らの媒体価値を説明するデータとして活かす余地は大きいです。

視聴ログとデジタルログ連携により評価の土台に

――視聴ログは、テレビのマーケティングデータとしてどのように機能しますか? また、テレビとデジタルの施策をつなげる指標として、どう役立つのでしょうか?

 視聴ログの特長は、とにかく台数が多く、デジタルとの連携が容易である、そして将来の期待を含めてですが、双方向であることだと考えています。現状は細かいエリアでのデータ活用に留まりますが、それでもエリア別での売上との関係性を明らかにすることなどで、その価値を発揮しつつあります。

 今後のマーケティング活動は、エリアを含めた生活者の細かいターゲットごとに、リアルタイムでコミュニケーションを図っていく時代になります。テレビはその中のいちメディアとして、デジタル媒体と競いながら、自らの媒体価値を説明していく必要があります。他メディアと連携しやすい視聴ログは、その価値証明に必須のインフラだと考えています。

 また、テレビでも今後発展が期待される、番組レコメンドやテレビCMの出し分けといった視聴者へのコンテンツ最適化にも、視聴ログは機能します。

 テレビとデジタルをつなぐ上では、前述のようにデジタルとの連携がしやすいため、広告配信の点ではテレビCMでリーチできない人へのデジタル広告の配信コントロールに役立ちます。マーケティングデータとしては、効果測定に寄与します。デジタル広告では、ターゲティングのために絶対リーチ数が少なく効果測定が機能しないという課題がありますが、視聴ログを使うと圧倒的なサンプル数を集められるため、ターゲティング施策での効果測定も可能になります。視聴ログとデジタルログの連携は、クロスメディアでのコンテンツ評価の土台になると考えています。

――テレビの施策にデータドリブンの概念を持ち込むことの、メリットや注意点をうかがえますか?

 データドリブンのメリットは、今の生活者の実態が把握でき、それに合わせられること。デメリットは未来の顧客を作り出せないことだと考えています。

 コンテンツと広告の両面で、今後テレビがデジタルメディアと合流することは明らかなので、データを無視することはできません。まず、広告ではデータドリブンが必須でしょう。編成も含めたコンテンツはクリエイティビティが求められるので、データですべてを説明・解決はできませんが、丹念に今の生活者のニーズを拾って番組作りをし、視聴ログで細かな仮説検証を繰り返せば、施策成功率を高められると思います。

 しかし、データからは「こんな番組あったのか」というクリエイティブジャンプは生まれません。データドリブンと感覚のバランスが必要でしょうし、それがテレビ局ごとの特徴になると思います。

百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合がある。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:34 https://markezine.jp/article/detail/28416

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