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テレビのビッグデータを知る(後編)

 テレビの共通指標である視聴率に加えて、昨今新たなテレビのマーケティングデータが登場している。本稿では視聴率の実態とテレビのビッグデータを紹介し、その活用方法を探りたい。後編ではTVISION INSIGHTS、エム・データ、インテージの識者の協力のもと、「視聴質」「TVメタデータ」「視聴ログ」を解説する。

>>>【前編はこちら】

※本記事は、2018年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』29号に掲載したものです。

目次(テレビのビッグデータを知る・後編)

●視聴質とは?
誰がどのように観ている? 視聴の質の測り方
進むクリエイティブ改善既存指標と併せてデータを深化
●TVメタデータとは?
TVメタデータを他指標と絡めた2つの活用方法
テレビ露出の情報をECや店舗購買に活かす
TVerやradikoで自動入札が実現するか
●視聴ログとは?
ネット結線テレビから収集する視聴ログ
視聴ログとデジタルログ連携により評価の土台に

視聴質とは?

――回答:TVISION INSIGHTS 代表取締役社長 郡谷 康士氏取締役/営業責任者 河村 嘉樹氏

誰がどのように観ている? 視聴の質の測り方

――御社では、テレビの前にいる人の視聴態勢を指標化しています。これは視聴の質とも言えると思いますが、「視聴質」の概念や重視される背景についてうかがえますか?

 ここ数年、ネット広告ではビューアビリティやアドフラウド、ブランドセーフティなどが話題に多く上り、広告価値棄損に関する意識が高まっています。実はこの問題、ネット広告に限ったことではありません。そのテレビCMは見られているのか、つまり「視聴の質」を把握すべきではないかという視点は、テレビにおいても意識する企業が増えつつあります。

 2014年に米MITで設立した当社は、この点に注目し、テレビ起動中にテレビの前にどれぐらい人がいるかを示す指標「VI値(ビューアビリティ・インデックス)」と、その人の中でどれぐらいの人がテレビを注視しているかの指標「AI値(アテンション・インデックス)」という2つの指標を提供しています(図表1)。

図表4 VI値とAI値
図表1 VI値とAI値

 元となるデータは、米国では5都市2,500世帯、日本では関東1都6県800世帯で、お茶の間(リビング)のテレビの上部に取り付けたセンサーを通して取得しています。テレビの前にいる個人を自動で識別し、その視聴態勢を毎秒毎に計測、分析して数値化しています。現在、最大6名まで同時に計測可能で、数種類の表情の変化も識別できます。また、7日間の録画視聴も捕捉しています。

――VI値やAI値の、メディアプランニングへの活用事例を教えてください。

 ある企業では、既存の購入番組(タイム広告)に対してVI値・AI値に基づいた評価を導入し、滞在・注視の低い枠の購入を取りやめ、同時により効率のよい枠を特定して次に購入する番組を選定しました(図表2-1/図表2-2)。

図表5-1 メディアプランニングへの活用事例~現状のタイム枠を評価し、滞在・注視の低い枠を特定する
図表2-1 メディアプランニングへの活用事例~現状のタイム枠を評価し、滞在・注視の低い枠を特定する
図表5-2 メディアプランニングへの活用事例~購入可能なタイム枠をVI値×AI値で評価し、購入枠を選定する
図表2-2 メディアプランニングへの活用事例~購入可能なタイム枠をVI値×AI値で評価し、購入枠を選定する

 その結果、予算・総GRP・パーコストを変更せずに、購入枠の注視度が施策前に比べて7%改善し、社内KPI約20%改善、金額換算で2億円相当の効果を出しました。

 また、番組の視聴率とVI値を掛け合わせて算出した実質リーチ(GRP×VI値)をもとに、出稿する局や番組のアロケーションを行い、PDCAを回してテレビCMの効果を最適化・最大化している企業も既にあります。各時間帯/曜日枠のVI値・AI値をテレビ局ごとに見比べて、自社だけでなく競合の出稿状況/視聴質の獲得状況を調べることなども可能です。

進むクリエイティブ改善既存指標と併せてデータを深化

――視聴質データの活用で、クリエイティブの改善や最適化も可能かと思います。こちらへの取り組みなどをうかがえますか?

 クリエイティブの改善におけるデータ活用も進んでいます。これまでテレビCMのクリエイティブへの反応は、事前や事後にグループインタビューなどで検証していましたが、AI値を追うことで、お茶の間で自然な状態でテレビCMを見た際のシーンごとの注視度や関心の離反の変化がわかります(図表3)。

図表6 クリエイティブ改善へのデータ活用事例
図表3 クリエイティブ改善へのデータ活用事例

 そこから、目を引くクリエイティブ、飽きられないクリエイティブの傾向が見えてきます。これらのデータから、どんな要素が自社ターゲット層に刺さるのか、勝ちクリエイティブの法則を導き出し、次のクリエイティブ作成に活かされています。

――御社の視聴質データは、テレビのマーケティングデータとして、どう機能するとお考えですか? また、併用する際のメリットや注意点をお聞かせください。

 これまで取得できていなかったテレビのデータが得られることで、テレビにもデータを活用した新しいマーケティングのニーズが生まれると考えています。以前は可視化できていなかった企業の潜在ニーズも顕在化され、今までよりもっとテレビというメディアの価値が高まるのではないでしょうか。また、デジタル広告のように、広告が本当に見られたのかどうかを検証し、価値を再認識することで、テレビ番組・テレビCMといったコンテンツの進化もサポートできると思っています。

 テレビとデジタルの施策をつなげる際にも、当社のパネルのデータを「トータルオーディエンス」と呼ばれるメディア接触データとして活用することは、今後可能になると思います。

 併用時についてですが、タイムの事例のとおり、メリットは視聴の量(率)と質を掛け合わせることで、データを深化できる点です。注意点は、視聴率と視聴質はまったく別のデータだということです。「どちらがより正確なのか」といった観点ではなく、これまでひとつの指標だったものが、掛け合わせることでより深く捉えることができるという観点でご活用いただくのがよいかと思います。

――デジタルの常識を持ち込んで、テレビの施策もデータドリブンで進めることは理にかなっているという考えがある一方で、メディア特性の違いからそれを懸念する意見もあります。どのように捉えているか、ご見解をうかがえますか?

 ご指摘のとおり、メディアの特性の違いから、同じような運用や評価をするためには慎重を期します。ただし、デジタルの急成長の根幹にデータ活用があることを踏まえると、テレビには今までなかった「データを活用すること」、すなわちデジタルの常識を持ち込むことで、以前とは違う成長や発展が見込めると考えています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:34 https://markezine.jp/article/detail/28416

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