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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』特集

日本の西端に九州外から人を呼ぶには? 8年で来場者倍増、ハウステンボスの企画力

桜前線のように地域でCM時期をずらす

――集客の根幹となる企画の考え方が、よくわかりました。では、考えた企画をどう知ってもらうかについてうかがいたいのですが、まず広告に対する考えを教えてください。

 来場者の属性が幅広いので、やはりベースはマス広告になります。そこでしっかりカバーした上で、あとはカップル向け媒体、シニア向け媒体といった個別の年代に焦点を当てた媒体に出稿しています。

 マス広告で一番大きいのは、テレビCMですね。ここでも距離を考慮して内容を変えており、たとえばゴールデンウィークのイベントなら長崎では4月中旬に細かく紹介、一方東京ならそもそもハウステンボスが身近ではないので自己紹介を中心に、旅行を検討できる2月くらいに訴求します。

――すると、福岡や大阪だともう少し細かく刻んでいるのですか?

 そうですね、福岡なら1ヵ月前、大阪なら2ヵ月前。桜前線みたいですね。

 他に交通広告、新聞広告も出稿しています。テーマパークで新聞広告というのは珍しいかもしれませんが、理由のひとつは母体が旅行会社なので、新聞広告のノウハウと経験があること。もうひとつは実際に理にかなっていて、たとえば花関係のイベントは年間を通して開催していますが、それを目当てに閑散期の平日に来られるのは前述のように中高年の主婦同士やシニア層で、新聞が効く。なので、新聞広告でも一定のリターンを得ています。

 一方Webは、SNS広告の配信とSNSの公式アカウントの運用を中心に行っています。TwitterとFacebookの他、場内には写真映えするシーンが多いので、Instagramも活用しています。Webではカップル向けにクリスマスや花火を訴求するなど、ターゲットと内容をガラっと変えています。同じ12月でも、新聞広告には蘭のイベントを出していますからね。

――なるほど、納得です。

 イベント企画の考え方も同じですが、広告も、複数チャネルで複数の属性の方に来てもらわないと、数が絞られてしまって経営が回りません。万人受けは難しいですが、ある程度広い層を見つつ、各年代やターゲットが喜ぶものを並行して考えています。

課題はブランディング独自のイメージを作る

――広告以外に何か告知策を打っていますか?

 テレビのパブリシティは、やはり大きいですね。テレビCMよりもインパクトがあります。ただしなんでも取り上げてもらえるわけではないので、その点で「オンリーワン、ナンバーワン」の企画はPRにも効果を発揮しています。

 また、H.I.S.の傘下であることも、告知を含めた集客に有効です。東京や大阪から来る人は当然、飛行機もホテルも利用するので、そのチャネルがグループ内にあることは大きいですね。我々が企画し、宣伝や販売を連携して一本化できるのは、集客にもデータ取得の点でもプラスになっています。

――通常、こうした多くの人が集まる場所は来場者属性などを取るのが難しいと思っていたのですが、来場者の分析や15分ごとの来場者数の比較など、データをかなり積極的に活用されているのが印象的です。どういったデータを、どんなチャネルで把握・分析しているのですか?

 チャネルとしては、場内アンケート、オフィシャルホテル、公式サイトのアクセスとH.I.S.との連携による推測が中心です。あとは、音楽ライブなどの興行イベントのチケット販売などですね。来場者の分布やイベントへの反応などは、これらの数値を月間とエリアの掛け算で常に把握して、たとえば夏の関東からの予約が前年比で少ないから何か策を考えよう、といった形で活かしています。

 データ活用も、澤田の指揮で動くようになってからの文化です。東京の方には、長崎なんてのんびりしたイメージがあると思います。私も東京出身で転職してきたのでそう思っていたのですが、再建1、2年目は澤田も月の半分ほど現場にいて、熱量がすごく大きかった。彼がずっとやってきた、チャレンジしてPDCAを回すということがハウステンボスでも猛スピードで動いていたので、変わりゆく手応えはありましたね。

――再建の背景に、ぶれない企画の考え方とデータドリブンの姿勢があったのですね。最後に、人を集めるために大事なことと、今後の展望をお聞かせください。

 単純に言うと、我々の仕事は来場者に楽しんでいただくことです。その楽しみは、仮に東京からわざわざ来る人にとってどういうものであるべきか、考えていく。遠方からのお客さんが楽しいイベントは、長崎の人にも楽しんでもらえますから、常に顧客視点で、自己満足にならないことが出発点です。

 短期的な目標は、この考えを地道に実践し、前年の我々を超えて新しいものを発信していくことです。毎年1回くらいは、日本初の企画を実施して、楽しみを大きくしていきたいですね。

 長期的には、いい意味で既成概念を作っていきたい。冒頭で“オランダ”“チューリップ”という指摘がありましたが、設立当初に本物のオランダの町並みを2,200億円かけて作っているのに、そのスペックを活かせていません。とはいえ、集客を考えると「オランダ好き」の人に絞るわけにもいかない。

 また、1990年代後半から2000年代は経営が厳しかったため、ほとんど広告もしておらず、東京や大阪の方々にはイメージがないんです。なので、本当のブランディングはこれからです。今ある資産とバラエティに富んだ企画性を活かしながら、同時にハウステンボスならではのイメージ作りに挑戦したいと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:36 https://markezine.jp/article/detail/28623

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