SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

新着記事一覧を見る

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

“アクティブサラリーマン”に狙いを定め観客動員が過去最高、横浜DeNAベイスターズの躍進

チームの強さに依存しない接点を作りたかった

――動物園などは、野球とはまったく関係ないと思うのですが、野球ど真ん中ではない企画も志向されたのは、なぜですか?

 チームの強さに依存せず、様々な形で来場者との接点を作りたいと思っていたからです。確かに試合の動員はチームの状態に影響される部分があります。でもそうするとチームが強いときは良くても、苦戦が続くと観客が減り、負のスパイラルに陥ります。もちろん、チームは日々勝利を求めて努力していますが、勝負事ですので、私たちはそれをコントロールすることはできません。事業側でコントロールできることとして、野球関連ではないコンテンツの充実や、野球のコンテンツでも順位に左右されないことを考えていきました。

 話題化して少しでも興味を持ってもらい足を運んでもらう。さらに、リピートを促すというサイクルを作りつつ、試行錯誤しながらデータ整備と分析に着手していきました。それ以降は現在まで、随時データ分析をしながら施策に活かしています。

 具体的には、まず来場者特性の分析から進めました。当然、基盤は我々のオフィシャルチケット購入サイト「ベイチケ」で得られるデータになりますが、他にグッズの購入傾向やその他の顧客動向のデータがばらばらで管理されていたので、それをまず同じIDで管理するようにしました。加えて、ファンクラブ会員を中心にどういうイベントが楽しかったかなどのアンケートを得て、企画に反映していきました。

図表1 来場者数の推移
図表1 来場者数の推移

アクティブサラリーマンをメインターゲットに

――当時の来場者データの分析から、導き出されたことは?

 2012年から2013年にかけてどのような層のお客様が中心なのか、増えているのかを分析したところ、20代後半から30代の男性がその時点での来場も多く、増加も多いようであるとわかったんです。球場の雰囲気を見ても、そういった印象がありました。このくらいの年代の男性は働き盛りですが、仕事が終わってからは飲みに行ったり、土日もスポーツなど野外で過ごしたりと、アクティブな層が一定数います。我々はこの層を“アクティブサラリーマン”と命名して、特に増やしたいターゲットとすることにしました。

 並行して、来場者にアンケートをとり、来場目的や生活スタイルなどを聞きました。そこでわかったのは、野球を観戦に来てはいるものの、試合内容やチーム情報だけでなく、野外で盛り上がる雰囲気を友人などと一緒に楽しんでいるという方々がいることでした。また、たまたま友達に誘われて、ビールを楽しむ居酒屋感覚で来たという人もいました。

 ネット裏でプレーをじっくり観る人や、応援団並みに熱狂的な応援をするような人はもちろん大切です。ただ、音楽フェスやバーベキューなどの野外レジャーのひとつとして捉えてもらえれば、ぐっと裾野は広がります。同時に我々としても、レジャーや居酒屋感覚で気軽に来てもらえるような場所にしたいという考えが大きくなっていったので、当時の社長主導のもと「アクティブサラリーマンをメインターゲットにしよう」と大号令をかけて、施策に反映していきました。

――なるほど。当然、彼らは熱狂的な野球ファンよりは来場頻度は少ないかもしれませんが、それでも数が多ければインパクトが出ますね。

 ええ。実際、その方々の来場は平均して年2、3回でしたが、根が「忙しくても楽しみたい」という積極的な人なので、友人や家族を誘ったり、また友達の誘いに気軽に応じたりと、輪が広がりやすい。そういった期待もあります。もちろん熱狂的なファンは大事ですが、そもそも全体で見るとそういった方の多い外野エリアのキャパシティは2割程度なので、残り8割の人がなんとなく楽しめる空気感や雰囲気が大事になってくることも実感してきました。そこで、そんな方向性で球場内の演出をしたり、イベントを企画したりするようになりました。

30代男性から波及して女性層、20代男女も増加

――来場者分析にはベイチケのデータを活用しているとのことでしたが、他にはどういったデータを取得しているのですか?

 ベイチケに加えて、ファンクラブの会員情報やアンケートなども活用していますが、これらは一度我々に接点ができた方々で、意見がコア寄りになることもあります。なので、神奈川県内で定期的に、ある程度の有意なサンプル数でネット調査をしています。

 ちなみに、チケットも以前は一般のプレイガイドの取り扱いのほうが多かったのですが、現在はオフィシャルに先行販売があり、いい席も確保しているので、ベイチケ利用が大半になっていますね。ファンクラブも割引があるので動員数に比例して会員が増えており、現在9万人弱で2011年に比べると13.6倍の規模になりました。このように、そもそも活用できるデータ基盤が拡大しているのは、データを活かしたマーケティングに大いにプラスになっています。

――なるほど。では、現在の来場者の特徴や傾向と、その把握のためにどういった調査や分析をしているのか、うかがえますか?

 現在はここ数年の取り組みの成果もあって、30代男性のアクティブサラリーマンがボリュームゾーンになっています。おそらくそこからの波及で30代女性、また20代男女も増えてきています。調査は引き続き、来場者アンケートやベイチケ、ファンクラブ、また県内広域の調査などを実施しています。その中で、来場者の居住エリアの分析も進めているのですが、平日は横浜の南側から来る人が多く、土日は県外を含めて北側から来る人が多いですね。また、スタジアムから同じ距離でも、北側よりも南側から来る人のほうが多いです。生活動線によるのでしょうが、広告掲出には既にこの要素を活かしており、イベント設計などにもこの差を考慮することを検討中です。

次のページ
広告で街をベイスターズ色に

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
定期誌『MarkeZine』特集連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/06/25 13:30 https://markezine.jp/article/detail/28644

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング