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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』デジタルクリエイティブの作法

モチベーションをどうデザインするか

人はどうしたら行動したくなる?モチベーションのデザイン

――では、間の中身の部分で重要なのはなんでしょうか?

 どうやったら話題になるコンテンツを作ることができるのか、ということですね。そこが、やはりクリエイターの腕の見せ所だろうと思っています。

 ここには、大きく2つの切り口があると思っています。ひとつは、ターゲットの特性を捉えて、そこに一石を投じるパターン。もうひとつは普遍的な人間の興味や欲求を利用するパターンです。

 私は後者のパターンが好きで、人間が元々持っているインサイトや普遍的なテーマを据えて、やってみたくなったり人に話したくなったりする体験を作りあげることが多いです。人間が普遍的に持っている欲望とブランドや商品が交わる部分を探し、入口から出口までの体験を頭の中で何度も繰り返しながら設計して、最も効果が得られるであろうものを企画にします。

――では“体験を作る”部分で現在実践されているのは、どういったことでしょうか?

 今まさに僕が取り組んでいるのは、モチベーション(欲望)をデザインすることです。デジタルプロモーションに参加してもらうだけでなく、バナーをクリックしてもらうのもSNSで投稿してもらうのもすべて同じだと思いますが、入口から中身、出口の隅々まで、モチベーションが高まらなければ人は行動を起こしてくれません。こういう気持ちになるから見ちゃうよね、とか、人にこう言いたいからシェアしちゃうよね、といったことを逐一見極めていく。シェアに関しても、承認欲求という言葉だけで片付けてしまわず、細かく設計しています。

コンテンツの各所でアクションを促す設計

――そうした考えに基づく最近の事例を、いくつかご紹介いただけますか?

 2017年と今年に実施した、デジタルプロモーションを2つご紹介します。

 ひとつ目は最初にご紹介いただいた、ネスレ「キットカット」の「バレンタインポスト」です。昨年のバレンタイン時に第1弾を実施し、その好評を受けて今年も実施しました。TwitterやFacebookなどのSNSに設置できるユーザーの“ポスト”に、匿名で“チョコレート”を贈ることができる企画で、2月14日になったら誰がくれたのかがわかる仕掛けにしました。2月1日に公開したのですが、バレンタインに向けてどんどん参加者が増えていき、約60万人が500万回以上もチョコを贈り合い、150万回以上もSNSにシェアしてくれました。

 最初にフォーカスしたモチベーションは、誰であってもチョコ欲しいよね、もらったら嬉しいよね、という部分です。これは大人になってバレンタインデーなのに誰からもチョコがもらえない私自身の悲しい思いが根底にあり、これまでの経験上、そういう人は一定数以上いるだろうと。ちょうど時流的に本命チョコだけではなく、友チョコなど周囲の人と贈り合う習慣ができていたので、そういった社会の波も利用しました。

 入口は、「チョコをもらいたいからやりたい」もしくは「誰かがチョコを募集しているから贈りたい」という2つ。出口は、チョコが欲しいからポストを友達に伝える、不特定多数にチョコをシェアしていいことした気分になるといったモチベーションを設計しました。おかげさまで、Twitterトレンドには連日にランクインし、8日間1位を取ることができました。

 2つ目は昨年実施の、WWF(世界自然保護基金)による絶滅危惧種の認知促進キャンペーン「WITHSTAMP」です。最終ゴールは知ってもらうだけではなく、寄付を集めることでした。そこで、ゴールを達成するために、新しい寄付の体験を作りました。自分の名字を入力すると、動物が漢字の一部に組み合わさった印鑑がサイトに表示されて、その印鑑と該当する絶滅危惧種の説明をセットでシェアできます。さらに、印鑑は実際にオンデマンドで購入でき、代金の一部がWWFへの寄付になるという仕組みを作りました。

 ベースの位置付けは診断系コンテンツの体裁を取り、EC部分の印鑑の購入の設計は大手ショッピングサイトのデザインを参考にしています。広告は打ちませんでしたが、様々なメディアに取り上げられ、テレビのニュース番組では特集も組まれたことで、結果的に約60万人が参加してくれました。さらに、印鑑も2万本以上売れ寄付金も1,400万ほど集まり大成功となりました。

 入口は「自分の動物ってなんだろう?」という好奇心。コンテンツは、動物が何だったのかという結果と、オリジナル印鑑を購入できること。自分が入力した名字に紐付いた動物が実は絶滅危惧種であり、印鑑を購入すると寄付になることも結果ページでわかるようになっています。寄付だけだとなかなかハードルが高くても、オリジナル印鑑は欲しいからついでに寄付してもいいかなと思う人はいるだろうと思い設計しています。出口は、自分の印鑑と動物のシェアで、いいことしている自分を褒めて欲しいというモチベーション。このデジタルクリエイティブは商品企画から販売まで一貫してやれたので体験のデザインは無理なく設計できた事例です。

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AIによる広告運用とは違うクリエイティブの機能

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/08/24 15:30 https://markezine.jp/article/detail/29054

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