AIによる広告運用とは違うクリエイティブの機能
――クライアントのニーズを掴むために重視していることはなんでしょうか?
例えば、クライアントさんが「デジタルで商品を話題化したい」と言っても、話題化が最終ゴールであるはずはないので、最終的にどうしたいのか、どうなりたいのかというゴールをまず把握するように努めます。同時に、デジタルプロモーションの良い点と悪い点を、事例を紹介しながら理解を深めていただき、手法を決めるようにしています。
今、コミュニケーションの手法はすごく多様化しています。デジタルがこれだけ一般化したからこそ、むしろテレビCMやマス広告に絞る選択肢もありますし、運用型広告のみという打ち手もあります。紐解くと、実は広告ではなく売る仕組みから変えたほうがいい場合もあるかもしれない。それは商品やブランドの特性によって、ターゲットが異なるので、アイデアを出したり絞り込んだりする前に、話し合いを重ね、マーケティングや仮説や戦略を作ることが大事だと考えています。
――最後に、今後の展望をうかがえますか?

SNSなどデジタルプラットフォームが消費者にとって大きな影響力を持つ今、テレビCMや新聞広告などのマス広告も、単体ではなくその先にあるオンラインでの受け取られ方まで設計しないといけないという状況が生まれています。その一方で、認知を取るだけなら、バナー広告などの運用型広告のほうが適当かもしれない。そのターゲティング精度は、AIによって今後もっと進化していくはずです。
そうすると、究極的には「デジタルクリエイティブは必要なのか?」という議論にもなりかねません。そこを戦い抜くためには、デジタルクリエイティブの費用対効果を上げなければいけない。少し前の、単純な話題のためにデジタル予算が割かれていた時代と違って、今ではどの施策にも売上に紐付く直接的なインパクトが求められることが多くなっているので、今まで以上に緻密な設計が必要だと思います。優れたクリエイティブは、費用対効果が高く、それでしか達成できないゴールがあります。それをコンスタントに生み出せるように、世の中の変化という激流に身をまかせながら、挑戦し続けたいと考えています。
