1,000万登録ユーザーを突破し、家族を中心に支持を集める「TimeTree」
――まずは、お二人の役職と現在担当している業務内容を聞かせてください。
小川:プロダクトマーケティングと広告運用を担当しています。認知後のユーザー獲得を目的としたオンライン広告施策の展開や、運用データの分析に取り組んでいます。
吉本:マーケティングに加えて、広告プロダクト「TimeTree Ads」の開発ディレクションを担当しています。マーケティングでは、主にテレビCMや車両広告などのオフライン施策を中心とした認知目的のプロモーション施策を担っています。
――「TimeTree」は、どのようなサービスなのでしょうか。
吉本:私たちは、TimeTreeを「家庭のリビングにある壁掛けカレンダーのスマホ版」と考えています。通常、カレンダーに入れる予定は、家族旅行や友達とのランチなど、「誰かと一緒に行動すること」が多いです。しかし、それらの予定は、お互いが異なるところで管理していることがほとんどです。そこに着想を得て、自分だけでなく、相手と共有して使うことを前提としたカレンダーアプリとして、TimeTreeを開発しました。
小川:2018年7月に1,000万登録ユーザーを超えましたが、直近ではさらに伸びが加速しています。どんな方でも使っていただけるアプリですが、主なアクティブユーザーは女性で、全体の6~7割を占めています。年齢では25〜44歳という働き盛りの方たちが多いですね。また、世帯年収が高く、共働きで小さい子どもがいるような家庭で多く使っていただいています。
吉本:家族で利用されるケースを見ると、共働きの家族はお互いに忙しく、「言った言わない」といったすれ違いが多く発生します。とりわけ小さなお子様を持つ家族では、子どもの予定管理も含まれてくるので、「予定の見落とし」といった課題が多くなる傾向にあるようです。
小川:TimeTreeはスマホに最適化されたアプリなので、家族がお互い外出していても、予定を登録するとリアルタイムに通知が届きいつでも予定が確認できるようになっています。予定の見逃しが格段に少なくなりますね。
吉本:ユーザーの方からいただいたレビューの中には、「TimeTreeを使うようになって、すれ違いによるケンカが減った」「お互い何をやっているのかがわかるようになり、コミュニケーションが増えた」というコメントがありました。
――サービス開始から3年で登録ユーザー数1,000万人を突破するなど、勢いのあるサービスだと感じます。ユーザー獲得・リテンションの面で心がけていることはありますか。
吉本:TimeTreeはインストール後のリテンションが高く、特にUXの構築には気を使っています。ユーザーとの接点を頻繁に持つプロダクトの特性上、サービスをダウンロードして終わりにならないよう、認知・ダウンロード・利用・問い合わせなど、ユーザーとの接点それぞれでTimeTreeに対する一貫したイメージを持っていただけるようにしています。
たとえば、アフターサポートでは、レビューの返信を定型文ではなく、その人の雰囲気に合わせた内容で行うなど、一人ひとりに適した丁寧なコミュニケーションを意識しています。そうした積み重ねの結果が、Appleの「App Store Best of 2015」に選んでいただいたり、アプリストアのレビュー点数を高く維持できていることにつながっています。
広告効果を正しく伝えるため、ビューアビリティを意識した設計に
――広告配信プラットフォーム「TimeTree Ads」の開始を発表した際、広告掲載に関するポリシーをあわせてリリースしていたことが印象的でした。広告配信で重視しているのはどんなことでしょうか。
吉本:私自身プロダクトのマーケティングも行っているのですが、広告出稿の際は、ユーザーにとって適切な面に、適切な形で広告が表示されているかどうかを重視しています。実際、そのように考えるマーケターの方は多いはずです。
そこで、自社の広告プロダクトにおいても、その視点を大切にした設計を行いました。また広告もコンテンツのひとつと捉え、「ユーザーに役立つものを提供する」という考えのもと、「TimeTree Ads」を開発しました。ユーザーの生活文脈に沿った広告が出せるよう、ターゲティング設計などを行っています。
小川:「ユーザー視点で嫌悪感を抱くものは排除する」ということに関連しますが、私たちは100%ビューアブルインプレッションのみ課金するようにしています。IAB(Interactive Advertising Bureau)は「表示領域50%を1秒以上」と標準を定めていますが、「TimeTree Ads」ではさらに広告効果を正しく伝えるため、より厳しい独自の基準を設けてビューアブルインプレッションとしています。
吉本:これは、ユーザーが広告の内容をきちんと見た上でコンバージョンしてこそ、広告効果になると考えているためです。外資系の広告主様などでは、ビューアブルであることをかなり意識した先進的な取り組みをされているところが多いです。私たちも、商品をきちんと認知してもらいたいという広告主のニーズに応えるため、まずは自分たちが出稿したいと思えるようなビューアブルインプレッションの設計を行いました。
――TimeTree Adsではどんなメニューを用意していますか。
吉本:TimeTree Adsはインフィード広告です。広告フォーマットは大きく分けて2タイプあり、そのひとつはFacebook広告の素材がそのまま使え、手間がかからず出稿しやすいようにしてあります。
吉本:ターゲティングについては、ユーザー属性に基づく「デモグラターゲティング」と、「育児関連予定」「記念日予定」「旅行予定」など、ユーザーの予定行動に基づく「予定ターゲティング」の2つを用意しているのが特徴です。
ユーザーの将来の行動に基づくターゲティングが可能に
――「予定ターゲティング」は、これまでになかった斬新なマーケティング手法だと感じます。具体的にどのような運用ができるのでしょうか。
吉本:これまでの広告プロダクトは、検索結果やいいね!の情報を始め、基本的に過去の情報を利用し、興味関心に基づいたターゲティングをしていました。
TimeTree内でカレンダーサービスの強みを生かしたターゲティング手法を検討する中で、「『いつ、誰と、どこで、何をする』という予定情報を使えば、既存のターゲティング手法とはまったく異なる切り口の新しいターゲティングができるのではないか」と考えて開発したのが、予定ターゲティングです。従来の興味関心ではなく、将来の必要性に合わせてタイミングよく出す広告は、ユーザーにとって価値がある情報になり得ます。
小川:私たちはTimeTreeユーザーの将来の行動データを預かっているので、予定に必要な情報を届けることができます。ユーザーにまったく関係のない広告ではなく、これから行う行動に合った広告を届けたいという考えです。
――実際に予定ターゲティングを活用して広告を出した企業から、成果につながったなどの報告はありましたか。
吉本:TimeTreeは、小さなお子さんがいる家庭で多く使われています。「育児関連予定」があるユーザーをターゲティングし、家族で利用する「子育てアプリ」の広告を出稿してもらったところ、CTRも高くでましたが、CVRでも高い効果が得られました。また、他社の広告プロダクトと比べ、アプリ内でのアクションにまで至った件数が各段に増加しました。
小川:他の広告プロダクトでは、「旅行」や「記念日」といったセグメントがなかなかできないこともあり、興味関心ではターゲティングが難しい商材の訴求にも効果があると思います。
――ユーザーの予定データでセグメントを抽出できるというのは、新しい可能性を感じますね。他に、消費財メーカーをはじめとしたBtoC企業では、どんな活用方法がありますか。
吉本:たとえば、「旅行好き」というカテゴリでセグメントを作った場合、これまで抽出できるのは「旅行が好きな人」だけでした。単に旅行が好きというだけで、実際にいつ旅行をするのかまでは把握できないという課題がありました。
「TimeTree Ads」で予定に基づいたセグメントを作れば、「旅行」に関する予定が入っているユーザーだけを抽出できます。つまり、旅行するにともなってニーズが発生するスーツケースや日焼け止めクリームの商材などを、他にはない切り口で確実に訴求することができるということです。購入する可能性がある人たちを、予定という行動情報から選び出すことができるのがTimeTree Adsの特徴と言えますね。
小川:予定ターゲティングでは、予定日が近づくと広告が表示されます。旅行以外で言うと、たとえば「記念日」に着目し、記念日に関連する商材の広告を記念日が近づくタイミングで表示すれば、実際の購買行動につながりやすく、効果も出やすくなります。
ワンタップで「広告」を「予定」にできる予定作成型広告
――広告メニューのひとつである「予定作成型広告」は、広告を見て終わりではなく、タップするだけで自分の予定に追加できる点が他の広告と一線を画すところだと感じます。行動を促す広告として、どういった活用方法を考えていますか。
小川:「予定作成型広告」は、カレンダーと連動しているため、イベント訴求やセール訴求などとの相性がいいです。これらは通常の広告の場合、当日を迎える頃には存在が忘れられてしまうことがあります。しかし、「予定作成型広告」では、一度広告から予定化されカレンダーに登録されるとアプリを見る度にその予定化されたものがリマインドされるので、当日前にしっかりと行動を促進することが可能です。
吉本:他にも、テレビ局の新番組の予告キャンペーンにもご活用いただけると思います。たとえば、初回放送を訴求する場合、一般的なネット広告であれば、初回放送日の数日前に合わせて広告を大量投下することになります。この場合、広告から離れるとユーザーは忘れる可能性が高いという問題があります。
一方、「予定作成型広告」で、ユーザーが予定を登録すれば、TimeTreeのカレンダーを見る度にドラマの放送予定を想起させることができます。また、その予定自体にリマインド機能があるので、ユーザーが設定をしておけば、ドラマの見逃しを減らすことができます。
――最後に、今後もTimeTree Adsを提供するにあたっての展望について聞かせていただけますか。
小川:現在TimeTree Adsが販売しているのは純広告のみですが、今後は広告主の方がより柔軟に出稿ができるように運用型広告も視野に入れています。
吉本:純広告はひとつのパッケージになっていて、価格も決まっています。一方、運用型広告は広告主が使いたいタイミングで使いたい分だけ出稿ができるので、より自由な使い方ができ、多くの方にご利用いただけると思っています。そのため、できるだけ早く対応していきたいと考えています。
また、フォーマットで言えば、動画のニーズにも応えたいです。認知を得るためには、いかに印象に残るクリエイティブを出せるかが重要なので、静止画よりも動画の方が訴求力は高いと思います。
吉本:TimeTreeは、家族で利用されるケースが多いサービスです。そのため家庭を想起させる商材との親和性が高いと考えています。特に、生活用品、家具・インテリア、育児、旅行用品などです。今後は、外部公開APIの展開など、サービス面でも大きな計画を準備しています。日々生まれるユーザーの課題を解決できるよう、「予定のプラットフォーム化」を実現していきたいです。