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インターネット広告の歴史と未来

Googleの核となるサービスの買収劇/検索連動型広告が「バナー広告」に及ぼした影響


個人の情報発信に収益化の機会を与えた功績

佐藤:当時、ブログが流行し、個人が情報発信をする流れが出始めていた時期でした。その前から個人のホームページはあったんですが、HTMLを手打ちで行ったりドメイン登録などをする必要がありました。その点ブログは自分で文字だけ打てば良くて手軽だったのですぐに普及していきましたね。この結果、インターネット上にWebページが爆発的に増えていきました

 アメリカでは既にWordpressとSix ApartのMovableTypeが出てきていました。Googleも2003年にBloggerを買収してこの流れに追随します。Bloggerを開発していたエヴァン・ウィリアムズはその後Twitterを創業することになります。

杉原:僕はNiftyのココログを使っていたのですが、ココログが2003年開始ですね。加えて、2003年にはmixiも始まります。

佐藤:AdSenseが中小企業や個人が運営しているWebサイトやブログなどに収益を与える機会を提供したことは非常に大きな意義があったと思います。今でいうYouTuberのようなもので、旅行が好きで旅行の情報をバンバン発信している高校生がAdSenseで月何十万もの収益をあげるという事例がでてきました。大手のパブリッシャー以外に広告が表示される場所がどんどん広がっていきました。

杓谷:この流れに呼応してGoogleは2004年に有料のアクセス解析ツールだったUrchinを買収してGoogleアナリティクスを無料で提供開始します。個人の収益化を手助けする目的もあったのだと思います。

「バナー広告」市場を強く意識し、GoogleがDoubleClickを買収

杓谷:Googleは2005年6月に「Site Targeting」を提供開始し、GCN上でWebサイトを指定して広告を出稿できるようになりました。課金方法もこれまでのクリック課金と違い、初めてGCN上でインプレッション課金を導入しました。画像広告を配信できるようになったのもこの頃で、バナー広告を強く意識していたことが窺われます。

佐藤:「ロングテール」の部分はAdSenseがとてもうまく機能していたので、いよいよ本格的に「ヘッド」の部分であるバナー広告市場に踏み込もうと考えたのだと思います。

杉原:僕は2006年頃にOvertureからGoogleに移ったのですが、当時は検索連動型広告市場全体が若干踊り場になっていた時期でした。そういった背景もあって、Site Targetingをさらに発展させた「プレースメントターゲティング(Webサイトの広告枠の位置を指定して広告配信できるターゲティング手法)」を盛んに売っていました

 まだ広告代理店側も運用型のディスプレイ広告の買い付け方に慣れていなかったので、結局既存のバナー広告市場を大きく侵食するまでには至りませんでした。

佐藤:それでDoubleClickを買収するという流れになったのだと思います。2007年にGoogleはDoubleClickを31億ドルで買収しました。その前年の2006年のYouTube買収が16.5億ドルだったので、DoubleClickはその約2倍の金額で買収されたことになります。

2003年頃のDoubleClickのWebサイト(Internet Archive)
2003年頃のDoubleClickのWebサイト(Internet Archive

佐藤:2004年のIPOを契機にGoogleはDoubleClick、YouTube、Android、Urchinなどを次々と買収しますが、この頃に買収したサービスはいずれも今のGoogleの核になっていますね。

杉原:米国でのDoubleClickはバナー広告を販売するメディアレップとして大きな存在でした。また、DoubleClickはバナー広告配信用のアドサーバーとして広く使われていて、それが今で言う「Google Ad Manager」、旧「DoubleClick For Publisher」にあたります。日本でも大手のパブリッシャーが軒並み使用していました。DoubleClickを買収することでバナー広告市場を仕組みから押さえようとしたわけですね。

杓谷:このDoubleClickの買収を契機にGoogleはAdWordsの「Google Content Network」を「Google Display Network」に改称し、業界内でも「バナー広告」という呼称が徐々に「ディスプレイ広告」に変わっていきました。AdSenseで培われた運用型ディスプレイ広告と、インターネット広告を黎明期から支えてきたバナー広告を、Googleが統一したと捉えることができるかもしれません。

 検索連動型広告の発展をきっかけに、インターネット広告黎明期を牽引した予約型のバナー広告と運用型のディスプレイ広告がお互いに徐々に近づいていき、GoogleのDoubleClick買収に帰結しました。この流れはその後のDSP・SSP・DMPや、リターゲティング広告の登場を促していくことになります。

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:04 https://markezine.jp/article/detail/29122

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