お客様の声に寄り添い改善
MZ:チャットで商品を買うという体験はほとんど前例がないと思いますが、どのようにリリースまで進めたのでしょうか。
松山:まず、2017年の9月にユニクロのアプリ会員のiPhone・Androidスマートフォンユーザーそれぞれ1,000名にサービスを先行公開しました。その時の利用データの分析やユーザー座談会などでのリサーチを繰り返し行い、お客様の声に寄り添う形で改善を続けました。
MZ:先行公開したユーザーからは、どのような意見がありましたか。
たとえば、私たちはチャットの中で全部完結するのが良いだろうと、商品の色・サイズまでを選べるようにしていました。すると、あるお客様に「オンラインストアのほうが購入しやすいから、そっちに飛ばしてくれ」と言われたんです。
確かに、そのほうが慣れたUIで使いやすいんですよね。チャットだと縦に会話が流れていくので、会話をさかのぼるのも一苦労。そのため、色・サイズを選ぶ時には、商品の詳細ページに遷移する仕様にしました。

MZ:お客様の声を拾い上げながら、新しい購買体験を作っているんですね。大体のことはチャットボットで回答できるのですか。
松山:AI技術が発達しているとはいえ、できることは限られています。現状では、人が情報を登録して、それをAIに覚えさせています。
そのため最初は、クイックリプライと呼ばれるボタン表示(下画像赤枠内)から、人気ランキングやおすすめコーディネートを探すという設計を中心にしていました。しかし、思った以上にお客様がフリーワードを入力して検索することがわかり、リリース初期は質問の50%程度しか答えられていませんでした。

そこから毎日、答えられなかった質問とそれに対する回答を登録し続け、今では95%ほどの回答率となりました。限りなく100%に近づけるよう、現在も繰り返し登録し続けているという形です。
顧客レビューもフル活用
MZ:FAQ機能とショッピング機能を兼ね備えている以外に特徴的なところはありますか。
松山:先ほどの回答率の話にもつながるところですが、フリーワードに対する回答の仕方も工夫しています。「UNIQLO IQ」で「冷房」と入れてみてもらえますか。
MZ:「冷房対策、とお客様コメントいただいている商品はいかがでしょう」と出てきました。

松山:先ほど、フリーワードに対する答えを登録しているという話がありましたが、永遠に我々が登録し続けるのも限界があります。そこで、考えたのがレビューの活用です。
私たちのおすすめより、他のお客様が使った時のレビューのほうが説得力があると思うので、このような形の対応は増えていくでしょうね。
MZ:確かにレビューからのレコメンドは参考になりそうですね。
松山:グローバルデジタルコマース部にはVOC(Voice Of Customer:顧客の声)に関するチームもあり、レビューをテキストマイニングして、分類しています。そして分類したデータは先述の「有明プロジェクト」の目的にもあった、商品改善・開発に活用しています。
弊社のオンラインストアには膨大な数のレビューが集まっています。それを商品改善、お客様のサービスに利用できるのは、ユニクロならではの強みだと思います。