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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』特集

CA×PARTYが目指す、新たなクリエイティブの形

AIはクリエイターの限界を解放する

 ――技術とクリエイティブのそれぞれの強みを持ち寄り、クリエイティブに関わるAIの研究開発から進める意図ということですね。サイバーエージェントでは、2016年1月から社内の研究開発組織として「AI Lab」を運営されていますよね?

中橋:そうですね。2013年、アドテク分野におけるサービス開発を行うエンジニアの横断組織である「アドテクスタジオ」を開設し、そこにAI Labが所属する形です。

 CYPARでは、サイトのトップで「AIは、クリエイターを駆逐しない。AIは、クリエイターの限界を解放する。」と掲げている通り、クリエイターが今まで頭の中でやってきたクリエイティブ開発のプロセスにAIを活かすという観点を掘り下げていきます。

――なるほど。実際にAIをクリエイティブプロセスに活かせるようになると、広告はどう変化していくとお考えですか?

高宮:中橋さんが言われたように、One to Oneの流れは強まっていますし、ユーザー側も「欲しい情報を欲しいときに出してくれると便利」という感覚があります。同時に、広告を楽しめるコンテンツ化して、受け入れやすくしていくこともますます必要になってくると思います。そうすると、AIが担う配信の部分と、クリエイティブ側の「いかに気持ちに訴えるか」の掛け算を最大化することが、広告効果を高めることにつながるのではないかと考えています。

AIでクリエイティブの“つくり方”を変えていく

――確かに、技術にどのようなクリエイティビティを掛け算するかによって、広告の力が変わってくる。

中橋:実際、その掛け算は日々進化していますよね。広告に触れる環境に応じた届け方と、気持ちが揺さぶられるような体験の両方を広告として扱わないといけないと思います。もう一つ、AI活用による広告の変化という点で期待しているのは、クリエイティブの作り方そのものをアップデートすることです。

――クリエイティブの作り方をアップデートするとは、具体的にどういうことでしょうか?

中橋:前述のように、パーソナライズ化が進むと、とにかく質の高いクリエイティブが大量に必要になります。今は配信の自動最適化が実現していますが、配信時にリアルタイムで最適なクリエイティブを生成する、という可能性も出てくる。1つずつクリエイティブを作ってクライアントの確認をとって、手直しをして……と従来のプロセスだと追いつかなくなります。

――作り方というと、以前いくつか、人力で大量にクリエイティブを生成して活用するキャンペーンがあったと思います。

高宮:海外の事例ですが、数年前にオレオが「Oreo Daily Twist」というキャンペーンを展開し、100日にわたってオレオを使い毎日のニュースを紹介していました。おそらく、クリエイターが朝からニュースを選び、日々の投稿を作っていたのだと思います。そこにAIが加わると、いくつかの軸で最適なニュースやクリエイティブの切り口を提案してくれるかもしれないですよね。

中橋:また、フォルクスワーゲンがFIFAワールドカップのロシア大会の組み合わせ抽選会に合わせて展開したキャンペーン「WORLDCUP DRAW HIJACK」では、グループリーグの組み合わせが発表されると同時に、対戦する2国の選手がワーゲンに乗っている画像をツイートしていました。これも事前に相当数の組み合わせの被写体を集めて撮影していたはずです。

 モーメントを捉えて最適なクリエイティブを配信することで、高い効果が期待できる一方、この仕込みは大変だったと思います。このようなキャンペーンも今ならたとえば黒髪を金髪にするなど、画像解析と画像生成の技術で、すべてのパターンの画像を自動生成することも可能でしょう。

AIとクリエイターで新アイデアを創発する

――表現に関わる工数をかなり削減できるんですね。

高宮:同時にコストも下がると思います。それも含め、AIが介在する作り方が発展するに従って、その周辺要素も変化していくと考えています。そして、具体的にAIがクリエイティブ表現をどう変えるかという話として、AIによるクリエイティブの創発、という点に注目しています。言い替えると、AIとクリエイターが協業することで、人間が頭の中で考えるだけでは思いつかなかったアイデアにたどりつくのではないか、と。

――AIとクリエイターの協業とは、新しい発想です。これはCYPARで掲げている「AIは、クリエイターの限界を解放する。」というメッセージに通じますね。

高宮:そうですね、クリエイティブの効率化の支援もそこに含まれますが、どちらかというと効率化のほうは、AIに任せられるところは任せること。一方で協業とは、AIが関与することで、クリエイターが未知なる領域にたどりつくようなイメージでしょうか。

 たとえば、経験値が高まるほど大局的な視座は働くけれど、未知の選択肢を知らず知らずのうちに排除しているのでは、という話をPARTY内でもしています。この、創作活動における選択肢を広げることにAIが機能するのではないかという仮説を立てて、検証を進めています。

 AIが精度高く選択肢を提案したり、その幅を提示したりすると、クリエイターはもっと精度の高い選択ができ、それを刺激に新しいアイデアをつかめるかもしれない。これも広い意味で“作り方を作る”ことですね。広告にとどまらず、視野を広く“作る”ことを探っていくつもりです。

中橋:そうなると、もはや広告という言葉の定義も変わっていきそうですよね。人には自分向けの情報が嬉しい、役立つという側面の一方で、本能的に皆が注目しているものに乗っかりたいという気持ちもあるので、この両方が混在する未来で何を届ければ、好感を持ってもらえたり、行動してもらえたりするのか。その形もサービスなのかプロダクトなのか、どんどん変わってくると思うので、それに対していろいろな仮説を立てています。

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アナログとされていたプロセスを解明する

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/25 13:45 https://markezine.jp/article/detail/29445

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