「食」に関わる社会問題の解決を目指して
有機野菜を中心とするネット食品スーパー「Oisix」などを運営するオイシックス・ラ・大地。2000年に設立されたオイシックス株式会社を前身とし、2017年には40年以上にわたって有機野菜の通販業を手がけてきた「大地を守る会」との合併・経営統合を実現。2018年2月には無添加食品や環境に配慮した日用品の宅配業を手がける「らでぃっしゅぼーや」も加え、現在はOisix・大地を守る会・らでぃっしゅぼーやの3つのブランドを主軸に事業を展開している。
同社は、「より多くの人がよい食生活を楽しめるよう、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する」ことを理念として掲げている。一口に「食」とはいっても、ユーザーの課題・ニーズは様々だ。たとえばOisixであれば、日々忙しさを増す現代社会において「栄養豊富なおいしい食材を時短で調理したい」というユーザーが多く、大地を守る会では「健康志向」、らでぃっしゅぼーやでは「環境に配慮した、持続可能な社会づくりに貢献したい」というユーザーが多い。
「3ブランドでそれぞれ食に対する社会的課題を定義していますが、基本的なビジネスモデルは同じです。そこで経営統合に際し、共通化できるバックエンドは共通化して効率化を図りながら、それぞれのブランドで価値創造を実現するプラットフォーム構想を描きました。基盤となるのは、製品の流通を管理する『フルフィルメント・プラットフォーム』、そしてお客様との円滑なコミュニケーションを実現する『マーケティング・プラットフォーム』の2つ。今回このマーケティング・プラットフォームのひとつの形として、Salesforce Marketing Cloud(以下、Marketing Cloud)の導入を決め、まずはOisixブランドで運用を開始しました」(普川氏)
シナリオを柔軟に組み替えるため、既存のMAツールからMarketing Cloudへ
実は同社はMarketing Cloud導入前に、他社のマーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)を使っていた。だがカスタマージャーニーに沿ったきめ細かなコミュニケーションを実現するには、「柔軟性の点でやや問題がありました」(普川氏)という。
当時はユーザーとのコミュニケーションチャネルとして、メール、LINE、アプリ、SMSの4つのチャネルを使っていた。一人のユーザーにつき複数のチャネルでつながっていれば、それだけ密なコミュニケーションがしやすく、ユーザー側も重要なお知らせや必要な情報を見逃すリスクが少なくなる。
その一方、複数のチャネルによる課題や弊害も生じていた。コミュニケーションシナリオが多様になったこともその1つだ。「どのチャネルでどんなコミュニケーションを行うのか」「反応がなかった場合に、どのチャネルでどんなメッセージを送るのか」など、考えるべきシナリオは無数にあり、ユーザーニーズや状況によってシナリオを柔軟に組み替えなくてはならない。以前のMAツールでは、こうした柔軟な対応がしにくかったという。