新たな食シーンと習慣を提案
MZ:食機会と奥行を拡大すべく、行った施策について教えてください。
松長:引き続きエビ中とコラボし、2017年の6月に実施したのが、メッセージサブレです。内袋に全19種類のメッセージが書いてあるもので、よくお菓子にメッセージを添えてコミュニケーションを取るケースがあると思いますが、それを手軽にしようと取り組みました。

若い人たちに使ってもらえるよう、ちょっとクスッとくるようなメッセージをエビ中のメンバーに直筆してもらい、プリントしました。ターゲットである彼女たちの同世代にとっては、これがリアルで可愛いと考えました。経営陣への説得は大変でしたけど(笑)。
これまでは、以前のパッケージだと持ち運びにくいこともあり、家庭の中で消費されるのが中心だったと思います。そこで、オフィスや学校で人にあげるという新たな食シーンを促進することを目指しました。2018年にはオフィスで働く社会人向けのバージョンも用意したところ、TwitterなどのSNSを中心に良い反響が生まれました。
そして、もう一つ習慣化を狙うべく「ココナッツ3:20」というキャンペーンを行いました。3時20分をココナッツサブレの時間にしようというもので、午後3時20分から3時20分59秒までの間のみTwitterで応募できるキャンペーンを1ヵ月半にわたり行いました。
また、午後3時20分に流れるサブレの歌というものを制作し、都心の大型ビジョンで配信するなど、おやつにココナッツサブレを食べることを定着化させるコミュニケーションを試みました。
MZ:結果はいかがでしたか。
松長:期間中の店頭での回転率が上がりましたね。そして、3部作の施策を通して、施策以前に比べて130%ほど売上が伸びました。昨今、売上を維持するだけでも厳しいブランドがある中、ココナッツサブレはここ数年ずっと右肩上がりというのは、特徴的な成果だと思います。
次に目指すは「どこでも買える」
MZ:3部作のプロモーションに共通して、真剣にネタを作っていること、ツッコミどころを作っているところを感じたのですが、これらのキャンペーンの中で、共通して意識していたことはありますか。
松長:3部作のプロモーションをスタートした時に根底にあったものとしては、「お菓子は楽しいもの」であることを伝えたいという想いでした。おいしいのはもちろん、そこにココナッツサブレがあることで「嬉しい」「楽しい」と思ってくれる人が増えてほしかったんです。
機能的な価値と感性的な価値のバランスで考えた時に、ココナッツサブレは後者が強いものであるというブランディングをしていきたかったので、「楽しい、ユニーク、おもしろい」の3つをキーワードに、他社のビスケットブランドではできないことをやろうと決めました。

そして、ツッコミどころを作るというのも意識していました。昨今のコミュニケーションは、消費者との距離が近いものでないと、見向きもされません。そのため、特に若者にはツッコミどころのあるゆるいコミュニケーションが近い距離感を生み出せると思い、そこに全力で取り組みました。
MZ:では、最後に今後の展望について教えてください。
松長:ブランディングにも成功し、お客様からのイメージは良くなっているので、次は「どこでも買える」ということに取り組みたいです。
ココナッツサブレは、スーパーやドラッグストアに行かないと買えないイメージが現状あります。そうではなく、駅の売店や新幹線の車内販売、極端にいえば富士山の山頂の山小屋でも買えるくらい、どこにでもある状況を目指したいです。
プロモーションに関しても、様々な媒体で行い、接触機会を適切に増やしていき、もっとココナッツサブレを身近にしていきたいです。