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勝てるインサイドセールスは目的設計にかかっている/HDE、カオナビ、VAIOの方法論とは

インサイドセールスで需要を見極める

――次に、佐藤さんにお話をうかがいます。HDEとは違ってスタートアップ、市場も成長期だと思いますが、どのようにインサイドセールスを運用されてこられたのでしょうか。

佐藤:創業した頃はHR Tech自体がまだ知られていませんでした。人材管理クラウド、グローバルではタレントマネジメントシステムと呼ばれますが、これが日本で普及していないときにサービスを立ち上げたので、そもそもサービスの前にシステムの啓蒙をしないといけなかったんです。しかも出資を受けているので、資金の使い方もシビアでした。

 人もお金もないスタートアップにとって、インサイドセールスとマーケティングで訪問なしに受注するのが最も効率がいいのは事実です。ただマーケティングの手法としては、導入事例を公表し、啓蒙活動をすることでリードを獲得するスタイルになります。つまりそのリードは、すぐにサービス購入につながる状態ではないので、営業担当をつけてフォローする必要がありました。結果としてインサイドセールスとマーケティングが、いかに購買欲求が高いリードをフィールドセールスに渡せるかが、効率的な営業組織の在り方になっていました。

 そんな状況でしたので、初期はリードの温度感をスコアリングすることをインサイドセールスの仕事にしていました。その後、受注数が増えてくると温度感が高いリードが足りなくなります。今度はリードをナーチャリングして掘り起こすことが、インサイドセールスのミッションとなります。このように当社のインサイドセールスの重要なミッションは、リード数と受注数のバランスをマネジメントしながら、組織拡大を図ることになります。

 もう一つ、弊社のインサイドセールス部門はユーザーインサイトのヒアリング機能の役割も兼ねていて、マーケティング、営業、さらにはプロダクト開発に対するフィードバックを行っています。インサイドセールスが司令塔になって、顧客にどういった需要があるかを見極めるのが、弊社のサービスを展開するうえで重要ではないかと考えています。

佐藤寛之氏
佐藤寛之氏:カオナビ 取締役副社長

――それでは、松山さんにもうかがいたいと思います。VAIOでは独立して3ヵ月でインサイドセールス部門を立ち上げたそうですね。

松山:事業部が会社になったので、そもそも営業部門がなかったんです。そんな中で、国内法人向けの販売を強化することとなり、法人のお客様のニーズを直接聞きながら、製品開発及び販売をしていきたくて、インサイドセールス部門をすぐに立ち上げました。以来、代理店の方にお力添えいただきながら営業活動を進めてきました。

 インサイドセールス部門は会社の指示に則ってお客さんにファーストコンタクトを取ります。最初に何を話すかというコールスクリプションを決めていて、その後はお客さんに合わせますが、大事なことはオプトアウトの考え方です。電話をしてほしくない方に何度も連絡するのでは意味がありません。集客から管理・育成・選別までを一気通貫で実施できるBtoBマーケティング機能の垂直立ち上げも並行して進め、インサイドセールス部門の効果を最大限発揮できるようにするために苦心しました。

 インサイドセールス部門では、法人のお客様の中でも特に中小企業向けの市場を狙い、ソニー時代はPCの売上の9割がコンシューマー向けだったところから、現在は7割が法人にまでなりました。それは、シンプルに「キーパーソンを見つける」という目的を設定し、取り組んできた結果です。中小企業はキーパーソンを見つけやすいのも大きいんですが、そこからフェーズが進むとインサイドセールスの仕事も変わってくるでしょうね。

松山敏夫氏
松山敏夫氏:VAIO 取締役執行役員常務

インサイドセールスのキャリアパスは?

――ありがとうございます。皆さんのお話からもインサイドセールスの重要性が伝わってきますが、人材面に関してはいかがでしょうか。特に、キャリアパスが気になる方も多いのではと思います。

佐藤:カオナビではインサイドセールスからのキャリアパスは多彩に用意できると考えています。インサイドセールスのマネジメント、あるいはフィールドセールスやマーケティングに進むことも可能です。SaaS企業の特徴として、サービスを導入してもらった企業に対するサポートが必要になります。そこを担当するのがカスタマーサクセス部門ですが、ここにもインサイドセールスで培った能力が活かせますよね。

 SaaS企業においてインサイドセールスはかなり柔軟な人材として機能するのではと思います。実際にそういう趣旨で採用イベントをすると、多くの参加者が来てくださいます。

水谷:HDEではフィールドセールスも重要なため、インサイドセールスからフィールドセールスというキャリアパスを描いてはいます。ただ、特に若い人を中心に、インサイドセールスを極めたいという社員が出てきているんです。デジタルネイティブ世代ほど、データを見ながらお客さんと話をするのが楽しいんでしょうね。お客さんに必要とされる職種でもありますから、認められるという感覚から逃れがたいのかもしれません。

 インサイドセールスはアポを取るという役割と、情報集約という役割があります。ですので、弊社ではインサイドセールス部門を二分して、将来フィールドセールスに行きたい人はテレアポをメインに受注活動をしてもらっています。一方、インサイドセールスを極めたい人はリサーチ部隊に所属してもらい、電話やその他のツールを使って情報収集をしてもらいます。ゆくゆくは全社横断で情報を集める部隊を作れれば、よりよいキャリアパスを提示できるかなと思っています。

――インサイドセールスという仕事が多岐にわたるがゆえに、キャリアパスもいろいろありうるということですね。最後に、松山さんには角度を変えて、これから新しくインサイドセールス部門を作ろうとする企業に対してアドバイスをいただけますか?

松山:20年にわたり数々のインサイドセールス部門を立ち上げ、育ててきましたが、事情はそれぞれ異なりますし、これが正解という方法はないと思います。ただ、会社全体の中で組織としてどう機能させるかという視点を持つことはポイントになると思います。

 VAIOの場合、営業部門がありませんでしたから、まずは組織を作らなければなりませんでした。ですから、そこにマーケティング部門やインサイドセールス部門を併存させるのはさほど難しくありませんでした。ただ、プロダクトを開発している事業部が独立したので、やはりそこの存在は大きい。ものを作っているというこだわりがあるので、マーケティング活動は少し縁遠いところにありました。

 今もコミュニケーションして一体化しようとしていますが、どちらかが優位に立ちすぎるとよくないんですね。これはマーケティングと営業の関係においてもです。ですから、その間を取り持つインサイドセールス、あるいは各部門のリーダーがコミュニケーションを促さないといけません。それぞれ背景や業務が異なりますから、いかに理解し合って組織を運営するかが重要だと思います。

――ありがとうございます。ここでお時間となってしまいました。インサイドセールスの立ち上げ、そして運用について、三者三様の秘訣がうかがえたのではないかと思います。ぜひ読者の皆さんの参考にしていただければ幸いです。

パネルディスカッション

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

翔泳社所属。翔泳社から刊行した本の紹介記事などを執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/26 13:02 https://markezine.jp/article/detail/29741

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