メッセージをどう帰結させるか
――デジタルクリエイティブを企画する際に重要だと思う点を教えてください。
メッセージをどのように帰結させるかが重要だと考えています。最近では少なくなりましたが、一時期はバズればいいという風潮がありましたよね? しかし、「話題になってもメッセージが伝わっていない」と、クライアントもバズだけではダメだと冷静になってきたのが今だと思っています。打ち合わせでも、「誰に何を伝えたいのか?」という議題に時間をかけることが増えました。
また、海外のマーケターやクリエイターの中では、ブランドのオーセンティシティ(Authenticity:真実性、信憑性)がホットワードとしてよく使われています。「そのブランドらしさ」「ブランドの本気さ」を意識したメッセージ開発がデジタル上でとても重要になっていると思います。
これは企業が実際にメッセージどおりの活動をしているかどうか、消費者が厳しくチェックするようになったという背景があると思います。加えて、デジタルではブランドが言いたいことを言ったらおしまい、というわけではありません。ユーザーがそれに対してリアクションしたところまで、ブランドのメッセージとして見られています。ユーザーからどう見られているのか、気にしてメッセージを作る必要があるので、企画が非常に難しくなっていると思います。
変化する「広さ」と「深さ」
――デジタルを中心としたキャンペーンと、4マスやイベントなどのアナログを中心としたキャンペーンで表現の違いはありますか。
まず、デジタルは反応が良くも悪くも返ってきやすいので、よりメッセージ表現にセンシティブにならなければいけません。表現を誤ると、最初に発信したメッセージと、キャンペーンが終わる頃のメッセージの意味が異なってしまうこともあります。
また、デジタルの特徴の1つとして、ターゲットの広さとメッセージの深さの問題があります。マスメディア全盛の時代では、広く浅くやるのか、狭く深くやるか、どちらかのパターンでした。一方デジタルの場合、ターゲットの広さとメッセージの深さが複雑に変化します。アナログのメディアであれば、広くしたら浅くなるし、狭くしたら深みが出ますが、それが通じない場面があるのがデジタルで表現することの特徴であり、難しさだと思います。
――デジタルクリエイティブで小さいことを、大きく広げていくためにはどのような仕掛けをすれば良いのでしょうか。
いろんな角度から楽しむユーザーがいるので、理想としてはネタにつながるようなポイントを複数作っておくことです。TDKさんとの「Attracting Tomorrow」というブランディング活動の一環として、『Bons-AI』という、自走し、人とコミュニケーションを取る盆栽を制作しました。

搭載された機能だけでなくネーミング自体が1つのネタになっており、Twitterでは様々な反響が得られました。ユーザーにどう突っ込まれるかを想像し、あえて突っ込まれる余地を仕掛けておくことが、デジタルクリエイティブを上手く作る上で大事なことだと思います。