健全なメディアの読者だけが「自社の顧客」ですか?
――質の高い健全なメディアの成長は、広告主のブランドセーフティにも大きく関わってきますね。
本間:良質なメディアが増え、悪質なメディアが減っていけば、ブランドセーフティは自然に解決します。あわせて広告主が考えるべきことは「自社のブランドセーフティとはなにか」ということです。
たとえば、自社のバナーがゴシップ情報をまとめたサイトに掲載されているとしたら、バナーの掲載は止めたほうがいいと考えますか? では止めた場合、そのサイトを閲覧している人は本当にお客様ではないのでしょうか?
人間には、多様性があります。自社にとってお客様は、製品やサービスを使っている時だけなのか、それ以外の時間も含めてお客様と捉えるのか。そういった視点にまで掘り下げて、ブランドセーフティを議論することも必要でしょう。メディアの成長は、広告主にとって広告を出すために重要なのですから。
――これまでのお話にあったような考え方は、マーケターの中で出てきているのでしょうか?
本間:少しずつではありますが、広告の本質を捉え直す広告主も出てきました。アウトブレインでも「プレミアムなパブリッシャーのネットワークで、自社の情報を届けたい」というご相談が増えています。アウトブレインのエンジンは、情報を届けたいという広告主と、マネタイズをして良質なコンテンツを作りたいというメディアをつなぐエコシステムを創造することができると考えています。
大量生産型マーケティング時代は終了へ
――今後も、企業やメディアを取り巻く外部環境は変化し続けていきます。マーケティングには、これからどのような視点が必要になると考えていますか?
本間:Web広告が登場して約20年が経ち、マスを含め、様々なチャネルの広告と同じ立ち位置になりました。マーケターは、お客様がどこでどんな情報に接したいのか、何を知りたがっているのかにフォーカスして、Web広告・オフライン広告を統合し、最適なコミュニケーションを設計しなければなりません。
昨今の状況を見ていると、明らかに、広告を安くたくさん見せる大量生産型のマーケティングではなくなってきています。お届けすべきお客様に、お客様が望む形で広告を届けることが求められている。品質も加味した広告の届け方が必要になるため、CPAのようなコスト軸ではない指標が出てくるでしょうね。
――効果指標が変わるということは、運用を担当する代理店とのコミュニケーションにも変化が生まれる。
本間:代理店とパートナーシップを組むということは、代理店のミステイクを許す覚悟をするということ。たとえば、アウトブレインの運用には、配信マネジメントを理解するための学習時間が必要です。初期段階で、代理店に明確な成果を求めるのは酷なことです。
代理店へ運用を依頼しているからこそ、自分達は違うことに集中できるということを再認識してほしい。あわせて、代理店へ作業だけを依頼するのではなく、最終的なゴールを共有することも大切です。フラットなテーブルで関係者が話せる環境を作れるかが、広告主と代理店が良い関係を築くポイントだと思います。